シャーム解放機構のジャウラーニー指導者「イドリブ県での停戦は反体制派諸派すべての合意による正しい決定だ。我々は戦闘地域から一兵たりとも撤退させない」(2019年8月3日)

シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構(旧シャームの民のヌスラ戦線)のアブー・ムハンマド・ジャウラーニー指導者は、記者会見(場所は不明)を開き、複数の活動家やジャーナリストを前に、シリア軍とシリア軍事革命諸勢力代表団(アスタナ会議に参加する反体制派の代表団)がロシア・トルコの仲介により交わした停戦合意(8月2日0:00発効)に関して「殉教者の血への裏切り」と批判した。

ジャウラーニー指導者の主な発言は以下の通り。

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「イドリブ県での活動を調整し、反体制諸派のすべてと例外なく協力し、地域でしっかりと守りを固めたことで、イドリブ県を制圧するために政権が時間をかけて作成した計画の成功を阻止した…。反体制諸派は、イドリブ県で長期間戦うための計画を立て、準備をしてきた。いまだ終わっていない(政権の)攻撃に対峙する用意をしてきた…合同作戦司令室を通じた諸派の統合、さまざまな作戦と練り上げられた軍事計画を実効することが、ラタキア県クバイナ丘戦線、ハマー県北部の戦線で政権に対峙し、その進軍を阻止するのに重要な役割を果たした」。

「停戦合意(政権が停戦に踏み切ったこと)は殉教者の血への裏切りだ…。イドリブ県での停戦はアスタナ13会議の成果とは無関係だ…。政権は反体制派に3回以上も停戦を求めたが、(反体制派側の)同意は得られなかった…。しかし、我々は(反体制派による)今回の停戦は正しい決定だと見ている。これは反体制派諸派すべてが合意したことだ。

「停戦は脆く…、期限が設けられていない。それゆえ、おそらく戦闘はイード・アル=アドハー(犠牲祭)後には再開するだろう…。政権とロシアが攻撃を再開すれば、さらなる犠牲を強いられるだろう」。

「ロシア軍が全面的な航空支援をしたにもかかわらず、政権軍がいかなる進展も実現できなかったことで政権とロシアの関係は悪化している」。

(シリア政府が2018年9月のソチでのロシア・トルコ首脳会談での合意(非武装地帯設置合意)の履行を条件に停戦を受け入れ、緊張緩和地帯の境界線から20キロ以内の地域からの反体制派の撤退を求めていることに関して)「こうした条件が合意されることはないだろう」。

「軍事的に進軍できない政権に地域を明け渡すことはない…我々は友人も求めに応じてここを拠点としているのではないし、それは敵の求めでもない。ロシアの監視部隊がこの地域に入ることを拒否する…政権が軍事的に、そして力で得られなかったものを、交渉や政治などを通じて平和的に手に入れることはないだろう…。我々は戦闘地域から一兵たりとも撤退させない。なぜなら我々はこの政権がインチキをするのを熟知しているからだ」。

「政権が真の包括的停戦を望むのなら、最近の戦闘で進軍し(制圧し)たすべての村と町から撤退しなければならない…。撤退しないのなら、政権とロシアの手から奪い返すための行動に訴えることになる」。

「アスタナ会議は無駄だ。なぜなら政権は自ら政治的に死ぬことに同意することもないからだ。政権はまた政治的取引によって、刑務所から一人も逮捕者を出獄させることなどないだろう」。

AFP, August 3, 2019、ANHA, August 3, 2019、AP, August 3, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 3, 2019、Reuters, August 3, 2019、SANA, August 3, 2019、SOHR, August 3, 2019Syria TV, August 3, 2019、UPI, August 3, 2019などをもとに作成。

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