化学兵器禁止機関(OPCW)のシリア常駐代表を務めるバッサーム・サッバーグ氏はOPCWの第24回締結国会議で演説し、2018年4月にダマスカス郊外県東グータ地方のドゥーマー市で発生し、米国・英国・フランスによるミサイル攻撃のきっかけとなった化学兵器使用疑惑事件について、事実調査団(FFM)がシリア軍による塩素ガスの使用を示唆する報告書(2019年3月、http://syriaarabspring.info/?p=57272)を出したことに関して、偏った調査結果、そしてOPCWの権限を逸脱した実行犯特定を拒否すると表明した。
サッバーグ氏は、シリアが化学兵器禁止条約(Chemical Weapons Convention)を批准した2013年以来、同条約を遵守していると強調、化学兵器の使用を改めて非難する一方、中東を非大量破壊兵器化とすることを支持、それにはイスラエルがCWCを批准する必要があると述べた。
一方、ダマスカス郊外県東グータ地方のドゥーマー市で2018年4月に発生し、米国・英国・フランスによるミサイル攻撃のきっかけとなった化学兵器使用疑惑事件については、「軍事的な成果によりテロリストが敗退し、政治プロセスが進むなか、米政府は世論を誤った方向に導き、シリア領への攻撃を行う口実を作り出そうとしてきた」と述べ、米国など西側諸国の関与を疑った。
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これに対して、OPCWのフェルナンド・アリアス事務総長は、ドゥーマー市での化学兵器使用疑惑事件に関するFFMの報告書について「中立的且つ専門的な結果を支持する」としたうえで、「一部のフォーラムなどで、異なった意見が今も広められているが、専門的で独立した結果に従いたいと考えている」と述べた。
ロイター通信(11月26日付)が伝えた。
AFP, November 26, 2019、ANHA, November 26, 2019、AP, November 26, 2019、al-Durar al-Shamiya, November 26, 2019、Reuters, November 26, 2019、SANA, November 26, 2019、SOHR, November 26, 2019、UPI, November 26, 2019などをもとに作成。
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