大統領選挙をめぐる動き(2014年6月5日)

SANA(6月5日付)、ARA News(6月5日付)などによると、ダマスカス県、アレッポ市、ラタキア市、タルトゥース市、ハマー市、ハサカ市、カーミシュリー市(ハサカ県)、クナイトラ市、ヒムス市、ダルアー市、イドリブ市、スワイダー市などで、アサド大統領の選挙での勝利を祝う集会が開かれ、バアス党支部幹部、人民諸委員会、職業諸組合、イスラーム教・キリスト教関係者、市民らが参加した。

SANA, June 5, 2014

SANA, June 5, 2014

 

クッルナー・シュラカー(6月5日付)は、地元特派員やSNSの情報として、6月4日晩から5日未明にかけて、ダマスカス県、アレッポ県、ラタキア県などでアサド大統領の再選を祝う「シャッビーハ」、「マンヘッバクジー」の祝砲で、26~30人が死亡、75人以上が負傷した(シリア人権監視団によると、祝砲により10人が死亡、200人以上が負傷した、という)、と報じた。

祝砲で死亡した「シャッビーハ」のなかには、カルダーハ・サッカー・クラブのアリー・ナースィル選手(ラタキア市で死亡)も含まれているという。

「マンヘッバクジー」とは、アサド大統領支持者が使用する「マンヘッバク」(私はあなたが好きです」に屋号を表す接尾辞「ジー」をつけた造語で、アサド大統領支持者を指す。

ARA News(6月5日付)もまた、カーミシュリー市などハサカ県各所で、アサド大統領の選挙での勝利を祝う祝砲で、複数が負傷したと報じた。

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SANA, June 5, 2014

SANA, June 5, 2014

SANA, June 5, 2014

SANA, June 5, 2014

アサド大統領は、イラン・シューラー議会(国会)のアラーッディーン・ボルージェルディー国家安全保障外交委員長を団長とする選挙監視団と会談した。

会談でアサド大統領は、投票率の高さを強調、選挙の成功が「シリア国民の勝利」だと述べるとともに、シリア国内での「テロとの戦い」に対するイランの支援に謝意を示した。

会談後、イラン選挙監視団は、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣と会談した。

SANA(6月5日付)が伝えた。

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SANA, June 5, 2014

SANA, June 5, 2014

アサド大統領は、6月3日の大統領選挙投票のため一時帰国した米国在住シリア人の使節団とダマスカスで会談した。

SANA(6月5日付)が伝えた。

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レバノン軍は声明を出し、北部県トリポリ市内で、アサド大統領の選挙での勝利を祝って銃や迫撃砲を撃ったとしてシリア人を含む23人を逮捕したと発表した。

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バアス党民族指導部は声明を出し、大統領選挙でのアサド大統領の当選に関して「アサド博士の勝利は、シオニストとの対決やレバノン、パレスチナでのレジスタンス支援において、シリアがアラブの心臓で有り続け…、シリアをはじめとするアラブ諸国にテロとタクフィール思想を植え付けようとする米国の計略を許さないことを保障する」と評した。

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バアス党シリア地域指導部は声明を出し、アサド大統領の当選に関して「6月3日(投票日)以降はこれまでとは異なり、シリア・アラブ人民は新たな時代への許しを与えた…。この時代は、単一のアラブ民族にふさわしく、その永遠の使命を表している…。この段階において、数百万人がバッシャール・アサド博士を選んだのは、彼の人格、行動のなかに自らの意思が体現されているからである」と表明した。

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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、大統領選挙が「シリア国内および近隣諸国にいる避難民900万人以上を無視」しており、「正統性を欠き、シリア国民を代表していない」と改めて非難した。

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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、アサド大統領の選挙での勝利に関して「シリア人への侮辱」だと非難、「アサドは選挙前も選挙後も正統性を失っている。この選挙は真の民主主義とは無縁だ」と述べた。

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サウジアラビアで事実上の亡命生活を送るレバノンのムスタクバル潮流代表のサアド・ハリーリー元首相は声明を出し、アサド大統領の選挙での勝利に関して「どのような人間の知性が、74%ものシリア国民が選挙に参加したなどと信じられようか」と非難、「シリア国民はバッシャールを政治の場から抹殺するための真のグローバルな結束を必要としている」と主張した。

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レバノンの進歩社会主義党党首のワリード・ジュンブラート議員は声明を出し、アサド大統領の選挙での勝利に関して「20万人を越える死者、800万人以上の国内外避難民、政治犯、失踪者の票があれば、シリア政府はもっといい結果を出せていたろうに…。(シリア大統領選挙は)古代、中世、現在の歴史における民主主義のなかでも前代未聞だ」と皮肉を込めて批判した。

しかしジュンブラート議員は、シリアの友連絡グループを名乗る欧米諸国、湾岸諸国、トルコについても「いわゆる国際社会、つまりは「シリアの敵」は…、西欧諸国の首都にある豪華な五つ星ホテルのロビーに集まって…知恵を絞り出すための会合を開き、反対と非難の声明を出しているだけだ」と酷評した。

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ロシア外務省報道官は声明を出し、シリア大統領選挙の監視にあたったロシアの「監視団は、この国の困難な状況にもかかわらず、この選挙が公正且つ透明性を持ったもので、シリア人有権者による積極的参加があったとの結論に達した」と述べるとともに、「民主主義の基準と照らし合わせ100%理想的だとみなし得るこの選挙の正統性に疑義を呈するいかなる根拠もない」と強調した。

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イラン外務省は声明を出し、シリアでの大統領選挙とアサド大統領の勝利に関して「イランはシリア人有権者の投票を尊重する。なぜなら彼らのみが自分たちの政治の行方を決めることができるからだ」と支持を表明した。

AFP, June 5, 2014、AP, June 5, 2014、ARA News, June 5, 2014、Champress, June 5, 2014、al-Hayat, June 6, 2014、Kull-na Shuraka’, June 5, 2014、al-Mada Press, June 5, 2014、Naharnet, June 5, 2014、NNA, June 5, 2014、Reuters, June 5, 2014、SANA, June 5, 2014、UPI, June 5, 2014などをもとに作成。

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