国連安保理でアレッポ情勢への対応を協議するための会合:米・ロはともに和平プロセス再開に懐疑的(2016年9月25日)

国連安保理では、シリア情勢、とりわけアレッポ市での戦闘への対応に協議するための会合が開かれた。

潘基文事務総長は会合で、アレッポ市東部の住宅街に対するバンカーバスターと見られる爆弾の使用に関して「戦争犯罪とみなされよう」と指摘、「シリアの悪夢」を終わらせるよう呼びかけた。

また米国のサマンサ・パワー国連大使は、ロシア軍による空爆を「テロとの戦いではなく、蛮行だ…ロシアが戦争を続ける限り、和平は実現しない」と非難する一方、「停戦を再開するため可能な方法を検討し続ける」と述べた。

これに対して、ロシアのヴィタリー・チュルキン国連大使は「米国はシリアの武装テロ集団を掌握できなていない」と反論、「テロ集団は人道支援搬入を阻止することで、停戦を反故にすることに成功した」と述べ、アレッポ県アウラム・クブラー町での国連とシリア赤新月社の支援チームに対する攻撃へのシャームの民のヌスラ戦線(シャーム・ファトフ戦線)の関与を疑った。

そのうえで、「直接交渉を拒否している当事者は誰だ」と問い、リヤド最高交渉委員会、そしてこれを支援する欧米諸国を批判、「シリアでの和平プロセスは現在、ほぼ不可能だ」と述べた。

会合では、スタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連特別代表がアレッポ市情勢についての報告を行った。

デミストゥラ氏によると、アレッポ市一帯での最近の戦闘での死者は213人(うちアレッポ市東部が139人、アレッポ市郊外が74人)にのぼるとしたうえで、国際社会で使用が禁止されている兵器の使用が戦争犯罪にあたると主張、空爆の即時停止と人道支援物資の搬入、48時間の停戦の発効、負傷者の搬出を提言した。

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リヤド最高交渉委員会委員長のリヤード・ヒジャーブ元首相を団長とする「反体制派」使節団は、アサド政権の犯罪に対する米国の弱腰の姿勢に抗議し、米国高官と予定していた会談を中止した。

『ハヤート』(9月26日付)が伝えた。

AFP, September 25, 2016、AP, September 25, 2016、ARA News, September 25, 2016、Champress, September 25, 2016、al-Hayat, September 26, 2016、Iraqi News, September 25, 2016、Kull-na Shuraka’, September 25, 2016、al-Mada Press, September 25, 2016、Naharnet, September 25, 2016、NNA, September 25, 2016、Reuters, September 25, 2016、SANA, September 25, 2016、UPI, September 25, 2016などをもとに作成。

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