旬刊シリア情勢(2015年12月下旬)

Contents

1.アレッポ県北部の「安全地帯」をめぐってロシアと米国の水面下で接近

シリア軍が西クルディスタン移行期民政局実効支配下のアレッポ市シャイフ・マクスード地区を空爆(2015年12月21日)
米軍主導の有志連合がシリア領内で8回の空爆を実施(2015年12月21日)
米国はクルド民族主義政党のPYDを反体制派統一代表団に加えるべく、サウジアラビアとトルコを説得(2015年12月21日)
米軍主導の有志連合がシリア領内で8回の空爆を実施(2015年12月22日)
ダーイシュ(イスラーム国)支配下のハサカ県シャッダーディー市の奪還をめざすシリア軍とYPG主体のシリア民主軍が交戦し、シリア軍が後退(2015年12月22日)
米主導の有志連合はシリア領内で6回の空爆を実施(2015年12月23日)
ロシア軍、シリア軍、シリア民主軍がアレッポ県、ラッカ県でダーイシュ(イスラーム国)に対して攻勢(2015年12月24日)
YPG主体のシリア民主軍がアレッポ県東部のティシュリーン・ダム攻略に向けてダーイシュ(イスラーム国)への攻撃を激化する一方、ダーイシュは「安全地帯」の反体制派の拠点マーリア市に進行(2015年12月25日)
シリア軍とロシア軍がダマスカス郊外県東グータ地方、アレッポ県アアザーズ市を空爆(2015年12月25日)
米主導の有志連合はシリア領内で5回の空爆を実施(2015年12月26日)
YPG主体のシリア民主軍がダーイシュ(イスラーム国)との戦闘の末、アレッポ県東部ティシュリーン・ダム一帯を制圧(2015年12月26日)
米主導の有志連合はシリア領内で5回の空爆を実施(2015年12月27日)
YPG主体のシリア民主軍は、ユーフラテス川西岸への進軍を続け、ダーイシュ(イスラーム国)の拠点都市の一つマンビジュ市に迫る(2015年12月27日)
ロシア軍と思われる戦闘機がアレッポ県内のダーイシュ(イスラーム国)の主要拠点の一つバーブ市などを空爆(2015年12月27日)
米主導の有志連合はシリア領内で5回の空爆を実施(2015年12月28日)
シリア軍、ロシア軍がアレッポ市東部でダーイシュ(イスラーム国)への攻勢を強め、ユーフラテス川方面に東進(2015年12月28日)
アレッポ県でロシア軍、有志連合がそれぞれYPG主体のシリア民主軍を航空支援、これに対してダーイシュ(イスラーム国)はトルクメン人の村を制圧(2015年12月28日)
米主導の有志連合はシリア領内で5回の空爆を実施(2015年12月29日)
ロシア軍と思われる戦闘機がアレッポ県東部のダーイシュ(イスラーム国)の拠点都市の一つバーブ市を空爆(2015年12月29日)
アレッポ県各所でYPG主体のシリア民主軍がヌスラ戦線との戦闘を続ける(2015年12月29日)
アレッポ県北部の「安全地帯」でダーイシュ(イスラーム国)がシャーム戦線との戦闘の末に複数の村を奪還(2015年12月30日)
ロシア軍ヘリコプターが、米国の支援を受けるYPGに武器弾薬、イラン人士官、シリア軍士官を移送、アレッポ県北部の「安全地帯」掌握に向けた作戦を準備か(2015年12月31日)
米軍主導の有志連合はシリア領内で7回の空爆を実施(2015年12月30日)
米軍主導の有志連合はシリア領内で空爆を実施せず(2015年12月31日)

米軍主導の有志連合はシリア領内で空爆を実施せず(2015年12月31日)

2.シリア軍がロシア軍との連携のもと各地でダーイシュ、ヌスラ戦線などへの攻勢を続ける

シリア軍、ロシア軍がヒムス県中部、アレッポ県東部でダーイシュ(イスラーム国)の拠点を空爆(2015年12月21日)
シリア軍はダマスカス郊外県各所での空爆を激化する一方、アレッポ市ラーシディーン地区南部の丘陵地帯に到達(2015年12月21日)
ダマスカス郊外県ムウダミーヤト・シャーム市でシリア軍が有毒ガスを使用か?(2015年12月22日)
シリア軍がアレッポ県東部、ヒムス県中部でダーイシュ(イスラーム国)との戦闘を続ける(2015年12月22日)
ロシア軍、シリア軍がアレッポ県、ダマスカス郊外県、イドリブ県、ラタキア県での空爆を続ける(2015年12月22日)
シリア軍とダーイシュ(イスラーム国)がダイル・ザウル市内各所で交戦(2015年12月23日)
シリア軍がラタキア県のトルコ国境地帯の要衝ヌーバ山を再び制圧(2015年12月23日)
ロシア軍は18~23日の6日間で302回の出撃を行いシリア各地を空爆、1,093の標的を攻撃:空爆により民間人が犠牲となっているとのアムネスティ・インターナショナルの報告内容を否定(2015年12月23日)
ハマー県、ラタキア県などで、シリア軍と反体制武装集団の戦闘続く(2015年12月24日)
イスラーム軍のザフラーン・アッルーシュ司令官らダマスカス郊外県東グータ地方で活動するジハード主義武装集団の幹部多数がシリア軍(ないしはロシア軍)の空爆で死亡、反体制派はロシアをこぞって非難(2015年12月25日)
ロシア軍の9月末以降のシリア領内での空爆回数が5,240回に達する(2015年12月25日)
ダイル・ザウル市一帯でシリア軍とダーイシュ(イスラーム国)が激戦(2015年12月26日)
アレッポ市北部バーシュカウィー村一帯で、シリア軍とヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団が激しく交戦(2015年12月26日)
ヌスラ戦線とシリア国民連合も、イスラーム軍ザフラーン・アッルーシュ司令官殺害を「ロシアの空爆」と断じ非難(2015年12月26日)
シリア軍がダルアー県カフルシャムス町でジハード主義武装集団メンバー17人を殲滅(2015年12月27日)
シリア軍、ロシア軍がダルアー県のシャイフ・マスキーン市への攻勢を強める一方、ヒムス県では連続自爆テロが発生し、住民30人以上が死亡(2015年12月28日)
ロシア軍は25~27日の3日間で164回出撃、シリア領内各所でダーイシュ(イスラーム国)など556の標的を攻撃(2015年12月28日)
シリア軍がハサカ市で結成した特殊部隊約200人をダーイシュ(イスラーム国)との激戦が続くダイル・ザウル市に派遣(2015年12月29日)
シリア軍がダルアー県シャイフ・マスキーン市周辺、ラタキア県ブルジュ・カスブ村などを制圧(2015年12月29日)
ロシア軍が28、29日の2日で121回出撃、424カ所を空爆(2015年12月30日)
シリア政府と西クルディスタン移行期民政局が分割統治するカーミシュリー市(ハサカ市)で連続自爆テロ:ダーイシュ(イスラーム国)が犯行を認める(2015年12月30日)
シリア軍がダルアー県シャイフ・マスキーン市の中心部に迫る一方、抗戦に参加しない自由シリア軍南部戦線が住民の批判の的に(2015年12月30日)
ロシア軍空爆開始後の空爆による死者数は2,371人、うち1,579人はダーイシュ(イスラーム国)、ヌスラ戦線、トルキスターン・イスラーム党などの戦闘員(2015年12月30日)
ダルアー県で活動するヤルムーク殉教者旅団がダーイシュ(イスラーム国)への忠誠を撤回(2015年12月31日)
ヒムス県、ダイル・ザウル県でシリア軍によるダーイシュ(イスラーム国)への攻勢続く(2015年12月31日)
シリア軍がダマスカス郊外県マルジュ・スルターン村一帯でヌスラ戦線の反撃を受ける一方、クナイトラ県西サムダーニーヤ村を制圧(2015年12月31日)
シリア人権監視団:2015年の死者数は5万5,219人、うち「戦闘部隊およびイスラーム主義部隊の戦闘員を含む民間人」は20,977人(2015年12月31日)

3.シリア政府との停戦合意に従い、ダーイシュ、ヌスラ戦線のメンバーらの退去が相次ぐ

ダルアー県で活動するアル=カーイダ系組織のヌスラ戦線がシリア軍と停戦合意し、メンバーがイドリブ県に向け退去を開始する一方、ダマスカス郊外県バラダー渓谷でも停戦合意が成立(2015年12月21日)
シリア政府との停戦合意に従い、ダーイシュ(イスラーム国)を名乗る反体制武装集団メンバーがダマスカス県ヤルムーク・パレスチナ難民キャンプ一帯から退去(2015年12月24日)
シリア政府との停戦合意に基づき、ダーイシュ(イスラーム国)メンバーら3,600人がダマスカス県南部から、ヌスラ戦線メンバー200人強がダルアー県から退去開始(2015年12月25日)
イスラーム軍のザフラーン・アッルーシュ司令官殺害を受けて、ダマスカス県南部からのダーイシュ(イスラーム国)、ヌスラ戦線戦闘員の退去が一時延期(2015年12月26日)
ダマスカス県南部一帯からのダーイシュ、ヌスラ戦線の退去を受けて、ハマースを除くパレスチナ諸派がシリア政府の要請を受け、治安維持を目的とした合同部隊の結成を準備(2015年12月27日)
イラン仲介の停戦合意に従い、ザバダーニー市(ダマスカス郊外県)から反体制武装集団戦闘員負傷者ら126人がレバノン経由でトルコに退去、フーア市、カファルヤー町(イドリブ県)から国防隊隊員を含む民間人363人がトルコ経由でレバノンに避難(2015年12月28日)
停戦合意に基づきトルコに移送された反体制武装集団の負傷した戦闘員86人はシリア領内(イドリブ県)にただちに移送(2015年12月29日)

4.シリア政府と反体制派統一代表団の交渉に向けた動きが本格化

中国外交部は北京でのシリア政府と反体制派代表の対話会合主催への意向を表明(2015年12月21日)
アル=カーイダ系組織のヌスラ戦線が共闘を続けてきた「自由シリア軍」所属組織の「粛清」を決定(2015年12月22日)
シリア国内で活動する反体制組織の民主的変革諸勢力国民調整委員会は、YPGをテロ組織とみなすリヤドでの反体制派合同会合と同会合で設置された最高委員会を批判(2015年12月23日)
ムアッリム外相が中国で王外交部長と会談し、国連安保理決議第2254号が確認した政治移行プロセスを事実上受諾(2015年12月24日)
イランのアブドゥッラフヤーン外務副大臣「シリアのテロ組織を良い組織と悪い組織に分けることは避けるべき」(2015年12月25日)
ロシア・カタール外相会談:アティーヤ外務大臣はテロ組織のリスト作成を拒否(2015年12月25日)
デミストゥラ・シリア問題担当国連アラブ連盟共同特別代表「シリア政府と反体制派の和平交渉を1月25日にジュネーブで開催する」(2015年12月26日)
トルコのエルドアン大統領はイランのシリア介入を「宗派主義的動機」によると批判するとともに、ダーイシュ(イスラーム国)とPYDを「PKKと大差ない」と酷評(2015年12月27日)
イスラーム軍がシリア政府との交渉にあたる反体制派の統一代表団の人選を担当する最高委員会からの脱会を決定か?(2015年12月27日)
民主的変革諸勢力国民調整委員会のアブドゥルアズィーム代表がカーミシュリー市を訪問「西クルディスタン移行期民政局の支配下にある地域は首都ダマスカスよりも安全だ」(2015年12月29日)
サウジアラビア・トルコ両首脳がリヤドでシリア情勢などへの対応を協議(2015年12月29日)
ロシアのガティロフ外務次官「テロ組織に関して米国とロシアの視点は極めて近い」(2015年12月30日)
民主的変革諸勢力国民調整委員会のメンバー2人が、サウジアラビアでの反体制派統一代表団人選のための最高委員会参加の途上、シリア当局に逮捕(2015年12月30日)
シリアの治安当局は30日にレバノン国境で拘束していた民主的変革諸勢力国民調整委員会のメンバー2人を釈放(2015年12月31日)

5.シリアでの「テロとの戦い」で孤立感を深めるトルコはシリア領内に部隊を進駐

トルコ軍部隊がシリア領内のハサカ県マアバダ町近郊に侵入し進駐する一方、アレッポ県アフリーン市近郊で住民を殺害(2015年12月23日)
トルコ軍ヘリコプター2機がハサカ県上空を領空侵犯(2015年12月24日)
トルコ軍はハサカ領内の進駐部隊の規模を縮小(2015年12月25日)
トルコ軍がハサカ県ジュワーディーヤ村北部を侵犯、国境から100メートルの地点に侵入(2015年12月27日)