旬刊シリア情勢(2016年1月中旬)

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1.ジュネーブ3会議開催を間近に控え、反体制派統一代表団の人選をめぐる対立が表面化

リヤド最高委員会議長のヒジャーブ元首相がパリでオランド大統領と会談し、アサド大統領排除の必要を改めて確認(2016年1月11日)
イランのファズリー内相がシリアを訪問し、シャッアール内相と会談「我々はシリアでの軍事作戦に直接介入していない…。シリア政府が…テロと戦うシリア軍への支援を我々に要請したので支援している」(2016年1月11日)
ロシアのプーチン大統領「アサド大統領はシリア国外に去る必要はないだろう」(2016年1月12日)
アサド大統領はイランのファズリー内務大臣と会談し、ロシアとイランの支援に謝意(2016年1月12日)
デミストゥラ・シリア問題担当国連アラブ連盟共同特別代表は、シリア政府、反体制派双方の拒否の姿勢に直面するなか、米・ロシア高官と会談(2016年1月13日)
ジュネーブ3会議のシリア反体制派代表団の人選をめぐって、ロシアが米国に新提案(2016年1月14日)
国連安保理はシリア国内の人道状況を審議、シリア軍、ダーイシュ(イスラーム国)、ヌスラ戦線などによる住民包囲を「戦争犯罪」と批判(2016年1月15日)
カタールのタミーム首長がロシアを訪問し、プーチン大統領と会談(2016年1月18日)
ファビウス仏外相「ジュネーブ3会議の日程通りの開催は困難」(2016年1月18日)
駐ロシアの反体制活動家は、リヤド最高会議に対抗してPYD代表を含む反体制派代表団メンバー候補の名簿をデミストゥラ・シリア問題担当国連アラブ連盟共同特別代表に提示(2016年1月19日)
仏・サウジ外相会談:ジュバイル外相「誰もシリアの反体制派に交渉における代表者を押しつけてはならない」(2016年1月19日)
ケリー米国務長官とラブロフ露外相が会談し、反体制派代表の人選をデミストゥラ氏に一任することを原則合意(2016年1月20日)
リヤド最高委員会はロシアが「テロ組織」とみなすイスラーム軍幹部をジュネーブ3会議の反体制派代表団メンバーに選出、PYDの参加、ロシアの介入を改めて拒否(2016年1月20日)

2.アレッポ県でシリア軍、シリア民主軍、ロシア軍、米軍、有志連合、アル=カーイダ系組織、ダーイシュ(イスラーム国)が混戦を続けるなか、ダーイシュがダイル・ザウル市北西部のシリア政府支配地域を急襲

米軍主導の有志連合はシリア領内で4回の空爆を実施(2016年1月11日)
YPG主体のシリア民主軍はアレッポ県東部でダーイシュ(イスラーム国)と、西部でヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動と交戦(2016年1月11日)シリア軍がダーイシュ(イスラーム国)との戦闘の末アレッポ市東部のアイシャ村を制圧(2016年1月11日)
シリア軍、ロシア軍がアレッポ県東部のダーイシュ(イスラーム国)の拠点都市マンビジュ市、バーブ市を激しく空爆、住民50人以上が死傷する一方、米主導の有志連合はティシュリーン・ダム一帯を空爆(2016年1月12日)
米軍主導の有志連合はシリア領内で8回の空爆を実施(2016年1月12日)
イスタンブールでの自爆テロの実行犯はダーイシュ(イスラーム国)に忠誠を誓ったサウジアラビア帰りのトルコ系シリア人(2016年1月13日)
シリア・ムスリム同胞団系のシャーム軍団などがアレッポ県のトルコ国境に近い村をダーイシュ(イスラーム国)との末に制圧(2016年1月13日)
YPG(シリア民主軍)がアレッポ市シャイフ・マクスード地区、アレッポ県アフリーン市郊外でヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動と交戦(2016年1月13日)
シリア軍はダーイシュ(イスラーム国)との交戦の末、アレッポ市東部のアイン・バイダー村を制圧、有志連合、ロシア軍はそれぞれダイル・ザウル県、アレッポ県を空爆(2016年1月13日)
エジプトのシュクリー外相「ロシアがシリアでの軍事作戦でテロ組織とそれ以外を区別できると信用している」(2016年1月13日)
トルコ軍はシリア、イラク領内のダーイシュ(イスラーム国)を戦車、重火器で攻撃、ダウトオール首相は過去48時間でロシア軍の空爆10日以上分に相当する戦果をあげたと発表(2016年1月14日)
米軍主導の有志連合はシリア領内で5回の空爆を実施(2016年1月14日)
アレッポ県北部でシリア・ムスリム同胞団系のシャーム軍団などからなる反体制派とダーイシュ(イスラーム国)が一進一退の攻防(2016年1月14日)
アレッポ県北部でYPG主体のシリア民主軍とアル=カーイダ系のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動の戦闘続く(2016年1月14日)
シリア軍がダーイシュ(イスラーム国)の拠点都市の一つバーブ市に近いサリーブ村、アッラーン村を制圧(2016年1月14日)
シリア・ロシア両政府はロシア軍機のシリアでの空爆期間を無期限とすることで合意(2016年1月14日)
米主導の有志連合はシリア領内で11回の空爆を実施(2016年1月15日)
シャーム戦線所属組織はアレッポ県北部のトルコ国境に位置するガザル村、ハルファトリー村をダーイシュ(イスラーム国)から奪還(2016年1月15日)
米軍発表によると、2015年4~7月にかけてのイラク、シリア領内での有志連合による空爆での民間人の犠牲者はたった8人(2016年1月15日)
アレッポ市北部アアザーズ市近郊でYPG主体のシリア民主軍がアル=カーイダ系のヌスラ戦線と交戦(2016年1月15日)
シリア軍はアレッポ県バーブ市近郊のウブーディーヤ村、ヒムス県中部の丘陵地帯をダーイシュ(イスラーム国)から奪還(2016年1月15日)
米主導の有志連合はシリア領内で3回の空爆を実施(2016年1月16日)
トルコ軍はシリア領内から越境しようとした自由シリア軍参謀委員会元メンバーを射殺(2016年1月16日)
ダーイシュ(イスラーム国)がダイル・ザウル市およびその周辺に侵攻しブガイリーヤ村を一時占拠、シリア政府は住民300人が虐殺されたと主張(2016年1月16日)
ダーイシュ(イスラーム国)はトルコ軍によるシリア北部への攻撃への報復として越境砲撃を行ったと発表(2016年1月16日)
米主導の有志連合はシリア領内で10回の空爆を実施(2016年1月17日)
アレッポ県北部のトルクメン人の村をシャーム戦線がダーイシュとの戦闘の末に制圧(2016年1月17日)
ダーイシュ(イスラーム国)はダイル・ザウル市郊外ブガイリーヤ村の民間人400人を拉致・連行:シリア軍とダーイシュはダイル・ザウル市一帯で交戦する一方、ロシア軍はアレッポ県バーブ市を空爆(2016年1月17日)
YPG主体のシリア民主軍はロシア軍の航空支援を受け、アレッポ県アアザーズ市郊外でヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動などと交戦(2016年1月17日)
シリア外務省は2015年12月にトルコ軍が少なくとも7回にわたってシリア領内を侵犯したと非難、国連に対応を要請(2016年1月17日)
米主導の有志連合はシリア領内で3回の空爆を実施(2016年1月18日)
イスラーム軍とダーイシュ(イスラーム国)がダマスカス郊外県で捕虜交換(1月18日)
ダイル・ザウル市北東部でダーイシュ(イスラーム国)とシリア軍の攻防が続くなか、有志連合はラッカ市を空爆(2016年1月18日)
アレッポ県北部のアアザーズ市郊外ではYPG主体のシリア民主軍がヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動と交戦(2016年1月18日)
シャーム戦線所属のスルターン・ムラード師団はダーイシュとの戦闘に向け「安全地帯」を軍事地区に指定、住民に退避勧告(2016年1月18日)
トルコ領のキリス市内の学校にシリア領内から発射された迫撃砲弾が着弾し、女性1人が死亡、キリス県知事はダーイシュ(イスラーム国)の攻撃と疑う(2016年1月18日)
米主導の有志連合はシリア領内で空爆を実施せず(2016年1月19日)
ダーイシュ(イスラーム国)は「ジハード・ジョン」の死亡を認める(2016年1月19日)
ダイル・ザウル県ブガイリーヤ村一帯でシリア軍とダーイシュ(イスラーム国)の戦闘が続くなか、ロシア軍がブーライル村を空爆(2016年1月19日)
ハサカ県では米軍がルマイラーン町郊外の農業用飛行場の軍事転用の準備を完了する一方、ロシア軍はカーミシュリー空港の拡張に向け士官・技術者を派遣(2016年1月19日)
トルクメン系のスルターン・ムラード師団などからなるシャーム戦線がダーイシュ(イスラーム国)との戦いで苦戦を続けるなか、トルコ軍がシリア領内(「安全地帯」)での地上作戦に向けた準備を本格化か?(2016年1月19日)
米主導の有志連合はシリア領内で1回の空爆を実施(2016年1月20日)
シリア軍、ロシア軍がダイル・ザウル県各所でダーイシュ(イスラーム国)と戦闘を続けるなか、ダーイシュは拉致した民間人400人のうち270人を解放(2016年1月20日)
ロシア軍はダーイシュ(イスラーム国)が攻勢を続けるダイル・ザウル県など57カ所を空爆(2016年1月20日)
ジャラーブルス自由人大隊は米・ロシアが支援するYPG主体のシリア民主軍への参加を表明(2016年1月20日)
シャーム戦線はアレッポ県北部トルコ国境に近い村をダーイシュ(イスラーム国)から再び奪還(2016年1月20日)

3.シリア軍がラタキア県北部でヌスラ戦線に対する攻勢を続ける

ロシア軍と思われる戦闘機がアレッポ県アンジャーラ村の学校を空爆し、子供12人、女性教師1人を含む15人が死亡(2016年1月11日)
シリア軍がラタキア県北部の拠点都市サルマー町を制圧する一方、ロシア軍と思われる戦闘機はアレッポ市北部の村を空爆し、25人が死亡(2016年1月12日)
シリア軍はヌスラ戦線などとの戦闘の末ラタキア県サルマー町郊外のマールーニーヤ村を制圧(2016年1月13日)
シリア軍がアレッポ市南部郊外、ダルアー県シャイフ・マスキーン市でヌスラ戦線などとの戦闘を続ける(2016年1月14日)
米軍がハサカ県ルマイラーン油田近郊の農業用飛行場に駐留か?(2016年1月14日)
米軍はYPG主体のシリア民主軍支援強化のために軍専門家数十人の駐留を計画する一方、シリア民主軍に対して「安全地帯」でのアル=カーイダ系組織との戦闘停止を要請(2016年1月14日)
シリア軍がアレッポ市一帯、ラタキア県北部でヌスラ戦線などへの攻勢を続ける(2016年1月15日)
シリア軍がヌスラ戦線らとの戦闘の末、ラタキア県サッラーフ村一帯の丘陵地帯などを制圧(2016年1月16日)
ヌスラ戦線のシリア人・外国人指導者90人が「解放区」を統治するシューラー評議会の樹立と武装集団の統合を提言(2016年1月17日)
シリア軍はハマー県、ヒムス県でヌスラ戦線など反体制武装集団との戦闘を続ける(2016年1月17日)
ラタキア県、アレッポ県、ダルアー県などで、シリア軍とヌスラ戦線などの反体制武装集団の戦闘続く(2016年1月18日)
ラタキア県、ヒムス県などでシリア軍とヌスラ戦線などからなる反体制武装集団の戦闘続く(2016年1月19日)
ラタキア県などでシリア軍とヌスラ戦線などとの戦闘続くなか、イドリブ県、アレッポ県でアル=カーイダ系組織の幹部が相次いで暗殺される(2016年1月20日)

4.ハサカ県カーミシュリー市内で西クルディスタン移行期民政局のアサーイシュとアッシリア教徒の武装組織ストロとの対立をシリア政府(政治治安部)とシリア正教会が仲介

ハサカ県カーミシュリー市でシリア民主軍に所属する二つの治安組織「ストロ」とアサーイシュが、ハサカ県でシリア軍とYPGが交戦(2016年1月12日)
シリア正教総主教と政治治安部が西クルディスタン移行期民政局のアサーイシュとアッシリア教徒の武装集団「ストロ」の和解を仲介(2016年1月18日)

5.国連、シリア赤新月社による人道支援物資搬入作業が続くなか、ロシアは「人道作戦」を開始、また停戦合意地区で住民の帰宅などが行われる

シリア軍の包囲を受けるダマスカス郊外県マダーヤー市と、アル=カーイダ系組織の包囲を受けるイドリブ県フーア市、カファルヤー町に、国連、シリア赤新月社が人道支援物資を搬入(2016年1月11日)
ヒムス市ワアル地区での停戦合意に沿って、地区内に残留した反体制武装集団戦闘員の武器引き渡しと投降が始まる(2016年1月13日)
ダマスカス郊外県マダーヤー町とイドリブ県フーア市、カファルヤー町で2回目となる人道支援物資の搬入作業が行われる(2016年1月14日)
ロシア軍はダーイシュ(イスラーム国)の包囲が続くシリア政府支配下のダイル・ザウル市などへの「人道作戦」開始を発表(2016年1月15日)
ダマスカス郊外県マダーヤー市で2015年12月の1ヶ月間で32人が餓死(2016年1月18日)
ロシア軍戦闘機は過去4日間で157回出撃、シリア領内の579カ所を空爆する一方、ダイル・ザウル県などで「人道作戦」を継続、物資40トンを投下(2016年1月19日)
ダーイシュ(イスラーム国)、ヌスラ戦線が退去したダマスカス県カダム区に、避難生活を送ってきた住民約3,000人が帰宅(2016年1月20日)
西クルディスタン移行期民政局は、ハサカ県ラアス・アイン市での赤新月社の支援活動を停止処分(2016年1月20日)

6.シリア人権監視団が、シリア軍、ロシア軍の空爆による犠牲者推計を発表

ロシア軍戦闘機は過去4日間で157回出撃、シリア領内の579カ所を空爆する一方、ダイル・ザウル県などで「人道作戦」を継続、物資40トンを投下(2016年1月19日)
シリア軍は1ヶ月弱で481回の出撃を実施し、1,662の標的を破壊したと発表(2016年1月20日)
シリア人権監視団発表:過去15ヶ月間でシリア軍の空爆でダーイシュなどの戦闘員4,000人、民間人7,600人が、ロシア軍の空爆で戦闘員1,900人、民間人1,000人が死亡(2016年1月20日)