旬刊シリア情勢(2015年12月中旬)

Contents

1.シリア紛争解決に向けた停戦・政治移行プロセスの行程を定めた国連安保理決議第2254号が採択されるも、反体制派の交渉団の人選やテロ組織の峻別などをめぐる課題山積

リヤドでの合同会議で新設されたシリア政府との交渉にあたる反体制派統一代表団の人選を行うための最高委員会が「シリアの友連絡グループ」高官と会談(2015年12月11日)
ロシア外務省はサウジアラビア主催の反体制派合同会合を非難(2015年12月12日)
米ロシア外相が電話会談でシリア紛争の停戦プロセスおよび和解プロセスから排除すべき「イスラーム主義テロ組織」のリストを作成する必要がある点で合意(2015年12月14日)
ケリー米国務長官がロシアでプーチン大統領、ラブロフ外務大臣と会談し、シリア情勢への対応について協議(2015年12月15日)
フランスのファビウス外務大臣はリヤドでの反体制派の合同会合を高く評価(2015年12月15日)
ロシア外務省報道官「ウィーンでの合意に従って、2016年1月1日にニューヨークでシリア政府と反体制派の交渉を開始する」(2015年12月16日)
サウジアラビアの後援を受けるイスラーム軍は、リヤドでのシリア反体制派合同会合での決定の破棄を示唆(2015年12月16日)
国連安保理はダーイシュ(イスラーム国)への資金源遮断をめざす決議(2253号)を全会一致で採択(2015年12月18日)
シリア政府との交渉にあたる反体制派統一代表団の人選を行うための最高委員会がリヤドでの会合でヒジャーブ元首相を委員長に選出(2015年12月17日)
ロシアのプーチン大統領「アサド政権は、米国が提案する安保理決議が自分たちにとって好ましいものでなかったとしても、受け入れるべき」(2015年12月17日)
国連安保理決議第2254号採択を受けた各国首脳・外相の反応:欧米諸国、トルコはアサド政権の正統性を改めて否定する一方、ロシア、中国、イランは政権退陣はシリア国民が決するべきと主張(2015年12月18日)
国連安保理はジュネーブ合意(2012年6月30日)とウィーン合意(2015年10月30日、11月14日)に基づくシリア紛争解決に向けた停戦・移行プロセスを承認する決議第2254号を全会一致で採択(2015年12月18日)
米国、ロシア、サウジアラビア、トルコ、イランなど国際シリア協力グループ(ISSG)諸国がニューヨークで外相級会合を開始し、テロ組織の認定などについて協議(2015年12月18日)
リヤドのシリア反体制派最高委員会のヒジャーブ委員長は、「アサド政権処罰を譲歩しない」としつつも、対話に向けた信頼醸成の必要を強調(2015年12月18日)
アル=カーイダ系組織のジュンド・アクサー機構は音声声明でリヤドでのシリア反体制派の合同会合に参加した武装集団を「意志のない奴隷」と厳しく非難(2015年12月20日)
アラブ連盟のアラビー事務総長は国連安保理決議2245号を支持(2015年12月20日)

2.シリア紛争解決に向けた停戦・政治移行プロセスをめぐる国際社会のコンセンサスに対してアル=カーイダ系のヌスラ戦線が一方で反発、他方で戦略転換を模索

アル=カーイダ系組織のヌスラ戦線のジャウラーニー最高指導者がアラビー21の単独インタビューに応じ、リヤドでの反体制派の合同会合を「殉教者の血への裏切りで、アサド体制への降伏だ」と非難(2015年12月12日)
アル=カーイダ系組織「ヌスラ戦線」の最高指導者ジャウラーニー氏と思われる顔写真がネット上で公開・拡散(2015年12月16日)
アル=カーイダ系組織「ヌスラ戦線」のサウジ人指導者が、軍事連合である「ファトフ軍」に代わる新たな政治連合の結成を主唱(2015年12月19日)

3.ドイツはダーイシュとの戦いにおけるシリア政府との協力と、アサド大統領抜きでのシリア紛争の長期的解決を主唱しつつ、シリアの諜報機関との協力関係を再開

米軍主導の有志連合がシリア領内で5回の空爆を実施(2015年12月11日)
米軍主導の有志連合がシリア領内で7回の空爆を実施(2015年12月12日)
ドイツのメルケル首相「ダーイシュ(イスラーム国)との戦いにおいてアサド政権と協力する意思はない」(2015年12月12日)
米軍主導の有志連合がシリア領内で3回の空爆を実施(2015年12月13日)
米軍主導の有志連合がシリア領内で6回の空爆を実施(2015年12月14日)
米軍主導の有志連合はシリア領内で6回の空爆を実施(2015年12月15日)
サウジアラビアはアラブ・イスラーム諸国34カ国からなる対テロ軍事同盟の結成を発表するも、ダーイシュ(イスラーム国)との主戦場であるシリア、イラクを同盟に加えず(2015年12月15日)
米軍主導の有志連合はシリア国内で7回の空爆を実施(2015年12月16日)
ドイツのメルケル首相「シリアの危機はアサド抜きでの長期的解決策が必要」:ドイツ軍がシリアでの空爆作戦に初参加(2015年12月16日)
米国主導の有志連合はシリア領内で3回の空爆を実施(2015年12月17日)
ドイツ諜報機関がシリアの諜報機関(ムハーバラート)との協力関係を再開(2015年12月18日)
米主導の有志連合はシリア領内で3回の空爆を実施(2015年12月19日)
トルコ外務省は声明で国連安保理決議第2254号への支持を表明、アサド大統領らシリア政府の完全排除を主唱(2015年12月20日)
米主導の有志連合はシリア領内で3回の空爆を実施(2015年12月20日)

4.シリア軍が各地で反体制派やダーイシュへの攻勢を続けるなか、リヤドの反体制派合同会合に参加したシャーム自由人、イスラーム軍がヌスラ戦線との連携を強化

シリア軍がダマスカス郊外県、ダマスカス県ジャウバル区で攻勢強化(2015年12月11日)
ロシアのプーチン大統領「シリア軍と連携する自由シリア軍に武器弾薬物資を供与し、支援している」(2015年12月11日)
シリア軍がアレッポ市南部の5カ村とラタキア県北部のクーズ山を制圧(2015年12月12日)
シリア政府の支配下に完全復帰したヒムス市のザフラー地区で連続爆破テロが発生し、16人が死亡(2015年12月12日)
アル=カーイダ系組織の支配下にあるイドリブ県解放を目指す親政権民兵組織「イドリブ浄化青年連合」が新たに発足(2015年12月12日)
ロシア軍と思われる戦闘機がアレッポ県東部のダーイシュ拠点を激しく空爆(2015年12月13日)
シリア軍がダマスカス郊外県、アレッポ市を地対地ミサイルなどで無差別攻撃する一方、反体制武装集団も首都ダマスカスを無差別砲撃(2015年12月13日)
アレッポ県、ヒムス県、ラッカ県などでシリア軍、YPGがダーイシュ(イスラーム国)との戦闘を続ける(2015年12月14日)
シリア軍がアル=カーイダ系組織などイスラーム過激派との戦闘の末、ダマスカス郊外県の激戦地マルジュ・スルターン村一帯とハマー県北部の2カ村を制圧(2015年12月14日)
国連人道問題担当事務次長は、シリア軍、反体制武装集団双方による無差別攻撃を非難(2015年12月14日)
ロシア軍参謀総長「ロシア軍は1日30~40回の空爆を実施し、テロとの戦いに参加している自由シリア軍所属の部隊を支援している」(2015年12月14日)
ロシア軍機は15日、59回の出撃を行い、212の標的を攻撃、「テロリスト」320人を殺害、タンクローリー109輌を破壊(2015年12月15日)
ヒムス県中部、ダイル・ザウル県などでシリア軍とダーイシュの戦闘続く(2015年12月15日)
リヤドでの反体制派の合同会合に参加したイスラーム軍、アル=カーイダ系のシャーム自由人イスラーム運動が、ヌスラ戦線などとともにダマスカス郊外県マルジュ・スルターン村一帯奪還に向けた合同作戦司令室を結成(2015年12月15日)
ダマスカス郊外県、アレッポ県でシリア軍と反体制武装集団の戦闘続く(2015年12月15日)
アレッポ市東部のクワイリス航空基地が復旧し、ダーイシュ、ヌスラ戦線などとの戦いにおける戦略的拠点としての機能を回復(2015年12月15日)
ロシア軍機は15日、59回の出撃を行い、212の標的を攻撃、「テロリスト」320人を殺害、タンクローリー109輌を破壊(2015年12月15日)
ロシア国防省はシリアでの空爆を開始した9月30日以降、4,201回の攻撃を実施したと発表(2015年12月15日)
ロシア軍機がアレッポ県のダーイシュ(イスラーム国)の拠点都市マンビジュ市一帯を空爆し、住民約50人死亡(2015年12月16日)
シリア軍がヌスラ戦線、トルキスターン・イスラーム党との戦闘の末、トルコ国境に近いヌーバ山を完全制圧(2015年12月16日)
シリア軍報道官「9~15日までの7日間でシリア軍機は193回出撃し、テロリストの拠点563カ所を破壊」(2015年12月16日)
シリア軍がアレッポ県、ハマー県、ラタキア県で反体制武装集団との戦闘を続ける(2015年12月17日)
アレッポ県、ヒムス県などでシリア軍がダーイシュ(イスラーム国)との戦闘を続ける一方、ヤルムーク殉教者旅団がヌスラ戦線メンバーを処刑(2015年12月17日)
「穏健な反体制派」はロシアからの武器弾薬物資供与・支援を「嘘」だと全否定(2015年12月17日)
シリア軍はトルコ国境の山岳地帯で支配地域を拡大、ロシア軍はイドリブ県を空爆(2015年12月18日)
シリア軍がヒムス県中部、アレッポ県東部などでダーイシュ(イスラーム国)との交戦を続ける(2015年12月19日)
アル=カーイダ系組織のヌスラ戦線、トルキスターン・イスラーム党などがラタキア県北部の要衝ヌーバ山をシリア軍から奪還(2015年12月19日)
シリア軍がアレッポ県東部、ヒムス県中部でダーイシュ(イスラーム国)との戦闘を続ける(2015年12月20日)
シリア軍がヌスラ戦線など反体制武装集団の拠点の一つハーン・トゥーマーン市(アレッポ市南部)を制圧(2015年12月20日)
ロシア軍の空爆でアル=カーイダ系のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動などからなるファトフ軍の事実上の統括者と目されるサウジアラビア人説教師のムハイスィニー氏が再び負傷(2015年12月20日)

5.米トルコが設置合意した「安全地帯」を中心に、YPG主体のシリア民主軍、ヌスラ戦線と「穏健な反体制派」の連合組織アレッポ・ファトフ軍作戦司令室、ダーイシュが混戦

ダーイシュ(イスラーム国)との戦いを続けるYPGがトルコ国境近くで爆弾が仕掛けられた無人偵察機2機を撃墜(2015年12月11日)
米トルコがアレッポ県北部に設置合意した「安全地帯」でシャーム戦線とダーイシュ(イスラーム国)、ヌスラ戦線とYPGがそれぞれ交戦(2015年12月11日)
アレッポ県北部の「安全地帯」の拠点都市マーリア市でダーイシュ(イスラーム国)がシャーム戦線、アレッポ・ファトフ軍作戦司令室と交戦(2015年12月12日)
アレッポ県北部の「安全地帯」西部でYPG主体のシリア民主軍がヌスラ戦線らと交戦(2015年12月13日)
アレッポ県、ヒムス県、ラッカ県などでシリア軍、YPGがダーイシュ(イスラーム国)との戦闘を続ける(2015年12月14日)
米トルコが設置合意した「安全地帯」内でシャーム戦線がダーイシュとの戦闘の末、1カ村を奪還(2015年12月15日)
ハサカ県カーミシュリー市で西クルディスタン移行期民政局アサーイシュがシリア軍、治安部隊、国防隊隊員21人を逮捕(2015年12月16日)
ハサカ県カーミシュリー市で国防隊隊員ら2人殺害、遺族はアサーイシュの犯行と非難(2015年12月17日)
米国がYPG主体のシリア民主軍所属のアラブ人武装勢力に新たに武器弾薬支援(2015年12月17日)
ダーイシュ(イスラーム国)がタッル・アブヤド市郊外でYPGの検問所に自爆攻撃(2015年12月18日)
YPGとアレッポ・ファトフ軍作戦司令室がアレッポ市シャイフ・マクスード地区、アフリーン市一帯での戦闘停止で合意(2015年12月20日)

6.イスラエル軍の空爆と思われる攻撃でヒズブッラーの幹部1人がダマスカス郊外県ジャルマーナー市で死亡

ヒズブッラーの幹部サミール・クンタール氏がイスラエル軍によると思われる攻撃によりダマスカス郊外県ジャルマーナー市で死亡(2015年12月20日)