旬刊シリア情勢(2015年12月1~10日)

2015年12月1日(火)から10日(木)までのシリアをめぐる主な動きは以下の通り。

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1.英国、ドイツがシリア空爆に参加するなか、米主導の有志連合の「誤爆」で民間人多数が死亡、またシリア軍基地が攻撃を受ける

英国とドイツの議会が、シリア領内での有志連合の空爆への参加・支援を承認し、英国空軍がダイル・ザウル県内のダーイシュ(イスラーム国)の石油関連施設などへの空爆に参加した。

これにより、米軍主導の有志連合によるシリア領内での空爆は増加したが、ダーイシュの中心拠点ラッカ市一帯での空爆や、西クルディスタン移行期民政局人民防衛部隊(YPG)が主導するシリア民主軍に対するハサカ県ハーン村での空爆では、ダーイシュ戦闘員だけでなく、民間人30人以上が犠牲となった。

また有志連合と思われる戦闘機は、ダイル・ザウル県内のシリア軍基地を空爆し、シリア軍将兵に犠牲者が出た。

一方、米国のジョン・ケリー国務長官やフランスのローラン・ファビウス外務大臣は、一方でダーイシュに対するテロとの戦い連携強化という枠組みのなかで、また他方でシリア紛争の政治的解決に向けた停戦・和解プロセスの文脈のなかで、シリア軍との連携の可能性を示唆した。

また、トルコ領内での「穏健な反体制派」の教練を断念して移行、YPGとの直接、間接の連携を強化するようになった米国は、YPGおよび同部隊が指導するシリア民主軍の作戦を支援するため、ハサカ県ルマイラ市近郊の農業用空港(アブー・ハジャル空港)の拡張工事を進めていった。

しかし、ロシア軍機撃墜事件以降、欧米諸国との距離感が目立つようになっていたトルコは、ロシアの「脅威」を口実に、シリア領内でのダーイシュに対する空爆への参加を見合わせた。

(主な関連記事)

米主導の有志連合はシリア領内で2回の空爆を実施(2015年12月1日)
ドイツのメルケル内閣はシリア領内でのフランスによるダーイシュ(イスラーム国)掃討作戦への軍事支援を承認(2015年12月1日)
カーター米国防長官はシリアへの米特殊部隊増派に前向きな発言(2015年12月1日)
米主導の有志連合はシリア領内で14回の空爆を実施(2015年12月2日)
米主導の有志連合はシリア領内で20回の空爆を実施(2015年12月3日)
英軍がシリア領内でダーイシュ(イスラーム国)石油関連施設への空爆を開始(2015年12月3日)
ケリー米国務長官は、ダーイシュ(イスラーム国)殲滅に向け、シリア軍、反体制派、アラブ諸国軍からなる合同地上部隊の結成を主唱(2015年12月3日)
米軍主導の有志連合がシリア領内で11回の空爆を実施(2015年12月4日)
ロシア軍がアレッポ県などでYPGとの連携を強化するなか、米軍はYPG主導のシリア民主軍を航空支援するため、ハサカ県の農業用空港を整備(2015年12月4日)
ケリー米国務長官「アサド退任はシリア政府と反体制派の協力の条件とはならない」(2015年12月4日)
ドイツ連邦議会はシリア領内でのフランス軍によるダーイシュ(イスラーム国)空爆への軍事支援を承認(2015年12月4日)
米軍主導の有志連合がシリア領内で12回の空爆を実施(2015年12月5日)
フランスのファビウス外相「アサド大統領は去らねばならないが、シリアでの政治的転換はアサド大統領が去らねばならないという意味ではない」(2015年12月5日)
英空軍が2度目となるシリア空爆でダイル・ザウル県ウマル油田を攻撃(2015年12月5日)
米軍主導の有志連合がシリア領内で9回の空爆を実施(2015年12月6日)
有志連合によるダーイシュ(イスラーム国)拠点への空爆ではダーイシュ・メンバーが死亡、ロシア軍によるダーイシュ拠点への空爆では民間人が死亡と報道(2015年12月6日)
米軍主導の有志連合はシリア領内で11回の空爆を実施(2015年12月7日)
トルコはロシア軍戦闘機撃墜事件を「好機」と捉え、シリア領内でのダーイシュ(イスラーム国)への空爆を中止(2015年12月7日)
米軍主導の有志連合がハサカ県、ラッカ県でのダーイシュ(イスラーム国)拠点への空爆で民間人40人以上を殺傷(2015年12月7日)
米軍がダイル・ザウル県のシリア軍基地を「誤爆」:米国側の主張に矛盾(2015年12月7日)
米軍主導の有志連合がシリア領内で4回の空爆を実施(2015年12月8日)
YPG報道官が有志連合によるハサカ県ハーン村での有志連合の「誤爆」を擁護(2015年12月8日)
米軍主導の有志連合がシリア領内で3回の空爆を実施(2015年12月9日)
米軍主導の有志連合がシリア領内で4回の空爆を実施(2015年12月10日)

2.サウジアラビアがアル=カーイダ系武装集団を含めたかたちで反体制派の合同会合を開催する一方、ロシア、イランは米国が後押しするシリア民主軍参加・支持組織の総会を後援

11月半ばに、米、ロシア、トルコ、サウジアラビア、トルコなどからなる国際シリア支援グループ(ISSG)が採択した「ウィーン合意」において定められているシリア政府代表と反体制派統一代表による和平交渉を見据えて、サウジアラビアが首都リヤドに、反体制派の代表約100人を招聘し、合同会合を開催した。

合同会合に参加した反体制派代表のなかには、欧米諸国が「シリア国民の正統な代表」と位置づける泡沫組織のシリア革命反体制勢力国民連立や、国内で活動を続ける民主的変革諸勢力国民調整委員会に加えて、シリア北部(トルコ国境地帯)、南部(ヨルダン国境地帯)で活動を続ける反体制武装集団の代表も出席、そのなかには、サウジアラビアが支援するイスラーム過激派のイスラーム軍とアル=カーイダ系組織のシャーム自由人イスラーム運動の代表も顔を連ねた。

シリアの反体制派の会合に、アル=カーイダ系組織の代表が参加するのはこれが初めて。

3日にわたる会合で、参加者は、「ウィーン合意」に準じるかたちでアサド大統領の即時退陣要求をとりさげ、「アサド大統領および政権幹部に居場所を与えないかたちでの新政治体制樹立」などを骨子とする閉幕声明を採択した。

しかし、合同会合に対して、イランは、「アル=カーイダとつながりのある一部のテロ組織が参加している。これらの組織がシリアの行方を決定することは許されない。我々はリヤドでの会合に賛同しない」と疑義を呈した。

また、合同会合への批判は、招聘されなかった反体制組織からも噴出した。

とりわけ、西クルディスタン移行期民政局を主導する民主連合党、国外で活動するカフム潮流は、リヤドでの合同会合に対抗するかたちで、ハサカ県マーリキーヤ市で、シリア民主軍に参加する武装集団や同組織を支持する政党・政治組織などとともに「シリア民主反体制勢力大会」を開催した。

シリア民主軍は、米軍が支援を強化している武装連合組織だが、総会は、ロシアとイランが開催に向けて後押しした。

「シリア民主反体制勢力大会」は、新たな政治連合体の「シリア民主評議会」を結成し、閉幕した。

(主な関連記事)

ヨルダンのアブドゥッラー2世国王「ダーイシュ(イスラーム国)と戦うため、シリア南部の反体制派を支援すべき」(2015年12月1日)
シリア国民連合は12月半ばに開催予定のサウジアラビア主催の反体制派合同会合に参加する代表メンバーの人選をめぐって内部対立(2015年12月2日)
サウジアラビアはシリアの反体制派の合同会合の招聘者数を100人に拡大(2015年12月5日)
アレッポ県で活動する「穏健な反体制派」の第1連隊は「外国の命令」によって任命された新司令官を拒否(2015年12月6日)
米軍が支援するシリア民主軍が、ロシア、イランの後援のもと、サウジアラビア主催のリヤドでの反体制派の合同会合に対抗して総会開催を予定(2015年12月6日)
トルコ政府のプロパガンダに呼応するかたちで「アラブ・トルクメン部族同盟」なる新組織がトルコ政府のシリアへの介入を呼びかける(2015年12月6日)
イスラーム軍のザフラーン・アッルーシュ司令官がサウジアラビアの首都リヤドでの反体制派の合同会合への参加を表明(2015年12月7日)
リヤドでの反体制派合同会合に対抗して、西クルディスタン移行期民政局やシリア民主軍に参加する政治・軍事組織が総会を開会(2015年12月8日)
サウジアラビアの首都リヤドでシリア国民連合、民主的変革諸勢力国民調整委員会、アル=カーイダ系組織などによる反体制派合同会合が開会:アサド政権の進退、移行期統治機関の権限、軍、治安機関の再編などをめぐって対立(2015年12月8日)
リヤドでの反体制派の合同会合で基本方針を確認:アサド大統領の進退、テロ組織の定義は曖昧に(2015年12月9日)
イランのアブドゥッラフヤーン外務副大臣はリヤドでのシリアの反体制派の合同会合にアル=カーイダ系組織が参加していると批判(2015年12月10日)
サウジアラビアのジュバイル外務大臣「アサド大統領には反体制派との交渉に応じるか、力で打倒されるかのいずれかの選択肢しかない」(2015年12月10日)
ハサカ県でのシリア民主軍参加・支持組織の総会が、新たな政治連合体「シリア民主評議会」を結成し閉幕(2015年12月10日)
サウジアラビアでのシリア反体制派の合同会合が、アサド大統領の即時退陣ではなく「アサド大統領および政権幹部に居場所を与えないかたちでの新政治体制樹立」などを確認する閉幕声明を発表、アル=カーイダ系組織もこれを受諾(2015年12月10日)

3.米トルコが設置合意したアレッポ県北部の「安全地帯」西端(アフリーン市郊外一帯)でYPGが主導するシリア民主軍がアル=カーイダ系組織と「穏健な反体制派」からなる武装集団と戦闘激化

米トルコが設置合意したアレッポ県北部の「安全地帯」西端に位置するアフリーン市郊外一帯では、西クルディスタン移行期民政局人民防衛部隊(YPG)および同部隊とともにシリア民主軍を攻勢する革命家軍が、アル=カーイダ系組織のシャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動、そして「穏健な反体制派」と目されるマーリア作戦司令室、さらにはシャーム戦線などが参加するアレッポ・ファトフ軍作戦司令室と交戦を激化させた。

双方は一時停戦に合意したが、ほどなく戦闘を再開、また戦闘は西クルディスタン移行期民政局が実効支配するアレッポ市シャイフ・マクスード地区でも発生した。

ロシア軍戦闘機撃墜事件以降、トルコ国境地帯での空爆を強化していたロシア軍は、アフリーン市郊外一帯での戦闘を受け、YPGを支援するかたちで空爆を実施し、シャイフ・マクスード地区では武器弾薬を投下したとの情報が流れた。

一方、「安全地帯」で活動するシャーム戦線などの武装集団が、ヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動とともに、YPG、革命家軍との戦闘を激化させるなか、ダーイシュ(イスラーム国)は「安全地帯」内にあるシャーム戦線などの拠点都市であるマーリア市一帯で攻勢を強めた。

(主な関連記事)

アレッポ市シャイフ・マクスード地区、アフリーン市郊外でYPG(が主導するシリア民主軍)がアル=カーイダ系組織および「穏健な反体制派」と攻撃に応戦(2015年12月1日)
YPG主導のシリア民主軍が米トルコ両政府が設置合意したアレッポ県北部の「安全地帯」西端でアル=カーイダ系組織と「穏健な反体制派」と交戦(2015年12月2日)
ダーイシュ(イスラーム国)は米トルコ両政府が設置合意したアレッポ県北部の「安全地帯」で勢力を拡大:反体制派はロシアの空爆に乗じてダーイシュが攻勢をかけたと主張(2015年12月2日)
西クルディスタン移行期民政局支配下のアレッポ市シャイフ・マクスード地区をアル=カーイダ系組織が砲撃するなか、ロシアが同地のYPGに武器弾薬を投下したとの情報が流れる(2015年12月3日)
米トルコが設置合意したアレッポ県北部の「安全地帯」西部に位置するアフリーン地区では、アル=カーイダ系組織と「穏健な反体制派」からなる連合組織がYPGと停戦合意(2015年12月3日)
米トルコが設置合意したアレッポ県北部の「安全地帯」でダーイシュ(イスラーム国)と「穏健な反体制派」の攻防続く(2015年12月3日)
米トルコがアレッポ県北部に設定した「安全地帯」で「穏健な反体制派」のシャーム戦線(スルターン・ムラード旅団)がダーイシュ(イスラーム国)からトルコ国境の複数の村を奪還(2015年12月5日)
アル=カーイダ系のヌスラ戦線などが西クルディスタン移行期民政局支配下のアレッポ市シャイフ・マウスード地区への砲撃を続ける(2015年12月5日)
米トルコが設定したアレッポ県北部の「安全地帯」でダーイシュ(イスラーム国)の攻勢続く(2015年12月6日)
アレッポ県で活動するファトフ軍がアル=カーイダ系のシャーム自由人イスラーム運動に、またスルターン・ムハンマド・ファーティフ旅団などがスルターン・ムラード師団にそれぞれ合流し、YPGに対する「穏健な反体制派」とアル=カーイダ系組織の糾合進む(2015年12月8日)
「穏健な反体制派」と目されるシャーム戦線は、ダーイシュ(イスラーム国)メンバー捕虜への死刑免除を喧伝するビデオを公表(2015年12月8日)
米トルコが設置合意したアレッポ県北部の「安全地帯」西部でYPG、革命家軍(自由シリア軍)などシリア民主軍が、マーリア作戦司令室(自由シリア軍)、アル=カーイダ系のヌスラ戦線と再び交戦、ロシア軍と思われる戦闘機がシリア民主軍を航空支援(2015年12月8日)
アレッポ県北部の「安全地帯」、アレッポ市シャイフ・マクスード地区でYPG主導のシリア民主軍がアル=カーイダ系組織と「穏健な反体制派」と戦闘を続ける(2015年12月9日)

4.ロシア軍、シリア軍がラタキア県、アレッポ県、ダマスカス郊外県での攻勢を続け、ファトフ軍の事実上の統括者と目されるサウジアラビア人説教師のアブドゥッラー・ムハイスィニー氏が負傷

ロシア軍とシリア軍が各地で、ダーイシュ(イスラーム国)、シャームの民のヌスラ戦線などのアル=カーイダ系組織を含む反体制武装集団に対する軍事作戦を継続し、シリア軍は、アレッポ市南部のジャアファリー丘、ハルサ村、ズィーターン村、ラタキア県のラルラク森、アザル森、アティーラ村一帯、カズガダール山周辺の丘陵地帯、上ムシャイリファ村、下ムシャイリファ村、ルワイサト・マスラーナ村、カタフ・アラーナ村、アックー村、ブーズ・ヒルバ村を奪還し、支配地域を拡大した。

また、トルコによるロシア軍戦闘機撃墜事件以降、トルコ国境地帯で空爆を強化していたロシア軍は、ヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動などからなるファトフ軍の事実上の統括者と目されるサウジアラビア人説教師のアブドゥッラー・ムハイスィニー氏を負傷させた。

一方、ダーイシュに対する軍事作戦は、ヒムス県中部(タドムル市、カルヤタイン市一帯)、アレッポ県東部、ダイル・ザウル県で継続され、一進一退の攻防が続いた。

(主な関連記事)

シリア軍がラタキア県北部の支配地域を拡大、アレッポ市北部でロシア軍と思われる戦闘機が水道処理施設を破壊(2015年12月1日)
ロシア軍と思われる戦闘機がタドムル市一帯のダーイシュ支配地域を空爆(2015年12月1日)
シリア軍がアレッポ市南部郊外、ダマスカス郊外県マルジュ・スルターン村一帯でアル=カーイダ系組織への攻勢を続ける(2015年12月2日)
シリア軍がアレッポ県東部、ヒムス県中部でダーイシュ(イスラーム国)への攻勢を続ける(2015年12月2日)
ダーイシュ(イスラーム国)は、チェチェン人工作員をロシア人メンバーが処刑するビデオ映像を公開(2015年12月2日)
シリア軍がアレッポ市南部でヌスラ戦線と戦闘の末、ジャアファリー丘を制圧(2015年12月3日)
シリア軍、ロシア軍がヒムス県中部などでダーイシュ(イスラーム国)への攻撃を続けるなか、シャイーラート航空基地(ヒムス県中部)でロシア軍戦闘機配備のための拡張工事がほぼ完了(2015年12月3日)
シリア軍がヒムス県中部、アレッポ県東部でダーイシュ(イスラーム国)との戦闘を続ける(2015年12月4日)‪
ロシア軍の空爆でアル=カーイダ系のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動などからなるファトフ軍の事実上の統括者と目されるサウジアラビア人説教師のムハイスィニー氏が負傷(2015年12月4日)
西クルディスタン移行期民政局が実効支配するトルコ国境のタッル・アブヤド市にシリア軍が教練キャンプを開設か?(2015年12月4日)
ロシア軍は過去9日間で431回の空爆を実施し、1,458カ所の標的を破壊(2015年12月4日)
シリア軍がラタキア県北部の森林、山岳地帯で支配地域を拡大
ダルアー県では、「自由シリア軍」がシリア軍に対して開始した「ジャディーヤ(町)解放の戦い」で、アル=カーイダ系のヌスラ戦線戦闘員18人が死亡(2015年12月5日)
シリア軍、ロシア軍が、ダマスカス郊外県、イドリブ県、ハマー県でアル=カーイダ系のヌスラ戦線などの拠点への空爆を続け、住民13人、戦闘員約50人が死亡(2015年12月6日)
赤十字国際委員会のダコー事務局長「ダーイシュ(イスラーム国)支配地域への人道支援のため、ダーイシュとの接触を試みている」(2015年12月6日)
シリア軍がラタキア県北部、アレッポ市南部郊外の複数の村を制圧(2015年12月7日)
ダーイシュ(イスラーム国)が拉致していたアッシリア教徒のうち25人を釈放(2015年12月8日)
シリア軍はハマー県、ヒムス県、アレッポ県でダーイシュ(イスラーム国)への攻撃を続ける(2015年12月8日)
シリア軍がアレッポ市南部郊外などで攻勢を強める(2015年12月8日)
シリア軍がヒムス県中部でダーイシュ(イスラーム国)への攻勢を続ける(2015年12月9日)
ダマスカス郊外県、ラタキア県などでシリア軍と反体制武装集団の戦闘続く(2015年12月9日)
ロシア軍は8日、シリア各所を82回にわたって空爆、また潜水艦ロストフナドヌーから巡航ミサイルで「テロ組織」拠点を初めて攻撃・破壊(2015年12月9日)
西クルディスタン移行期民政局が実効支配するタッル・タムル町でダーイシュ(イスラーム国)による連続爆破テロが発生し、数十人が死亡(2015年12月10日)
ラタキア県などで、シリア軍、ロシア軍が反体制武装集団への空爆・攻撃を続ける(2015年12月10日)
シリア軍は過去2週間で363回の空爆を実施し、タクフィール主義テロ組織の標的1,375カ所を攻撃・破壊(2015年12月10日)
ダーイシュ(イスラーム国)がシリア軍との戦闘の末にマヒーン町一帯を奪還(2015年12月10日)

5.ヒムス市最後の戦闘地域ワアル地区で停戦が発効し反体制武装集団が退去

ロシア軍と連携するシリア軍が戦況を優位に進めるなか、ヒムス市内における最後の戦闘地域ワアル地区で、国連の仲介のもとにシリア政府と、アル=カーイダ系組織のシャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動など約40の武装集団との間に交わされた停戦合意が発効し、シリア政府が用意した大型バスで投降を拒否する武装集団戦闘員の退去が始まった。

またダマスカス郊外県バラダー渓谷でも同様の停戦が発効、さらにダマスカス県南部を占拠するダーイシュ(イスラーム国)もシリア政府との停戦し、ラッカ県に退去することを模索しているとの情報が流れた。

(主な関連記事)

ヒムス市ワアル地区、ダマスカス郊外県ハーマ町一帯で反体制武装集団の退去などを骨子とする停戦合意が発効(2015年12月1日)
ダマスカス郊外県バラダー渓谷で、反体制武装集団の武装解除と投降などを骨子とする停戦が実現(2015年12月3日)
ヒムス市ワアル地区で籠城する反体制武装集団が、停戦合意履行に向けて退去拒否者への対応を協議(2015年12月4日)
ダマスカス県南部で活動するダーイシュ(イスラーム国)がシリア政府との停戦を模索、ラッカ市への退去を反体制派に呼びかける(2015年12月5日)
ヒムス市最後の戦闘地域ワアル地区での停戦合意に基づき、反体制武装集団戦闘員がシリア政府が用意したバスで退去を開始(2015年12月9日)

6.ロシアによる対トルコ経済制裁発令、ロシアとトルコの非難の応酬続く

ロシアのヴラジミール・プーチン大統領は、11月24日のトルコ軍によるロシア軍戦闘機撃墜への報復として、トマト、柑橘類、鶏肉などの輸入を2016年1月から禁止、両国政府間の合意に基づく貿易、投資、学術、文化協力に関する協議の停止などを骨子とする制裁を発令した。

また、ロシア国防省は異例の記者会見を開き、ダーイシュ(イスラーム国)とのシリア産の石油の密売買にトルコ政府が関与していることを示すという映像・写真を公開した。

これに対して、トルコのレジェプ・タイイプ・エルドーアン大統領は、ロシア国籍のシリア人がダーイシュとの石油売買に関与していると反論、またアフメト・ダウトオール首相は、ロシアがシリア空爆を通じてトルクメン人を「民族浄化」しようとしているといった非難を浴びせた。

(主な関連記事)

オバマ米大統領、NATO事務総長、トルコ首脳はトルコ軍によるロシア軍戦闘機撃墜事件をめぐって緊張緩和に期待(2015年12月1日)
ロシア政府は対トルコ経済制裁の内容を発表(2015年12月1日)
ロシア国防省はトルコ政府がダーイシュ(イスラーム国)との石油密輸取引に関与していることを示す写真、画像を公開(2015年12月2日)
トルコ国営アナトリア通信:イラク・クルド自治区高官は、トルコとダーイシュ(イスラーム国)の石油密輸取引の証拠としてロシア国防省が示したタンクローリーの画像について「クルド自治区の石油を運ぶタンクローリー」だと主張(2015年12月3日)
ロシアのプーチン大統領はトルコに「世界にとって脅威となるような感情的、ヒステリックな対応はとらない」としつつも、追加制裁を意思表明(2015年12月3日)
トルコのエルドーアン大統領「ロシアがダーイシュ(イスラーム国)との石油取引に関与している証拠を持っている」(2015年12月3日)
ロシア外務省のザハロワ報道官は、ロシアが空爆でトルクメン人の「民族浄化」を行っているとするトルコの主張を一蹴(2015年12月10日)

7.アサド大統領がチェコのテレビ局、英紙のインタビューに相次いで応じ、「有志連合にテロと戦う意思はなく、テロ根絶のヴィジョンを欠いている」と非難

アサド大統領は、チェコのテレビ局、英『サンデー・タイムズ』のインタビューに相次いで応じた。

チェコのテレビ局とのインタビューで、アサド大統領は、ダーイシュ(イスラーム国)に対する「戦争」を宣言したフランスのフランソワ・オランド政権など欧米諸国の姿勢について「懐疑的だ…。テロリストに直接支援し、世界におけるテロのもっとも熱狂的な支持者であるサウジアラビアと同盟を結びながら、テロと戦うことなどできない…。彼ら(フランス)は、サウジアラビア、カタール、そしておそらくそれ以外の国を通じて武器売却が行われていることを当然知っている」と述べた。

また欧州における難民・移民流入問題に関しては、「(欧州に押し寄せる)難民の多くはシリア人ではない。シリア人難民に関して言うと…、その大多数は良いシリア人で、愛国的で、普通の人々だ。彼らのなかにテロリストは紛れ込んでいるのだ」と指摘した。

一方、『サンデー・タイムズ』とのインタビューでは、「有志連合は何の成果も上げられないと言いたい。そのうえで、それは有害、違法であり、テロを支援していると言いたい…。なぜならテロはガンのような存在だからだ。ガンは切りとるだけでは駄目で、摘出しなければならない」と非難し、「テロとの戦い」に向けた有志連合の意思、ヴィジョンに疑義を呈した。

なお、アサド大統領は、11月13日のパリでの連続テロ事件発生を契機に欧米諸国がその残留を暗に認める姿勢へと転じたことを受けるかたちで、11月18日にはイタリアのRAIチャンネル、19日にはフランスの『ヴァルール・アクチュエル』誌、22日には中国の民間衛星テレビ局「鳳凰衛視」(フェニックス・テレビ)のインタビューに応じている。

(主な関連記事)

アサド大統領がチェコのテレビ局のインタビューに応じる「シリア人難民の大多数は良いシリア人で、愛国的で、普通の人々だが、彼らのなかにテロリストは紛れ込んでいるのだ」(2015年12月1日)
アサド大統領が『サンデー・タイムズ』の単独インタビューに応じる「有志連合にはテロと戦う意思はなく、テロを根絶するためのヴィジョンもない」(2015年12月6日)

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