シリア・ロシア軍はイドリブ県などへの爆撃を再開、シリアのアル=カーイダとトルコの支援を受ける反体制派はハマー県北部で大規模攻撃(2019年5月21日)

シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北部、アレッポ県西部の緊張緩和地帯第1ゾーンでは、シリア・ロシア軍が攻撃を激化させてから22日目となる5月21日、シリア・ロシア軍の爆撃が再開され、シリア軍とシャーム解放機構などからなる反体制武装集団の戦闘も続いた。

シリア人権監視団によると、シリア軍戦闘機による爆撃回数は26回、投下した「樽爆弾」の数は14発を記録、ロシア軍戦闘機も8回の爆撃を行った。

また、シリア軍地上部隊が発射した砲弾は400発以上にのぼった。

これにより、4月30日以降の戦闘による犠牲者数は前日より6人(民間人0人、兵士・反体制武装集団戦闘員6人)増えて516人となった。

うち、180人が民間人(女性41人、子供38人を含む)、336人がシリア軍兵士および反体制武装集団戦闘員。

一方、クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)に近いANHA(5月21日付)は、複数の活動家の話として、トルコ軍がシャーム解放機構を教練するために緊張緩和地帯第1ゾーンに設置されているイドリブ県に増援部隊を派遣したと伝えた。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍戦闘機がサフリーヤ村を2回爆撃した。

また地上部隊が、カフルズィーター市、ラターミナ町、ザカート村、シャフルナーズ村、サフリーヤ村、マイダーン・ガザール村、フワイジャ村を砲撃した。

これに対して、シャーム解放機構などからなる反体制武装集団はスカイラビーヤ市一帯を砲撃した。

両者は、カフルヌブーダ町一帯、ムガイル村、ハミーラート村、タッル・フワーシュ村、フワイズ村で、シリア軍とシャーム解放機構などからなる反体制武装集団で激しく交戦した。

これに関して、ドゥラル・シャーミーヤ(5月21日付)などは、シャーム解放機構とトルコの支援を受ける国民解放戦線が、5月8日にシリア軍によって制圧されたカフルヌブーダ町に対して大規模攻撃を行ったと伝えた。

攻撃では、シャーム解放機構が爆弾を積んだ車を特攻させ、シリア軍兵士多数を殺傷し、タッル・フワーシュ村、ハミーラート村などを奪還したという。

ただし、RT(5月21日付)によると、シリア軍はこの攻撃を撃破したという。

一方、SANA(5月21日付)によると、シリア軍がシャフシャブー山(イドリブ県)に面するガーブ平原のサフリーヤ村、カルーティーヤ村を通るシャーム解放機構の兵站戦を砲撃した。

このほか、国民解放戦線はジューリーン村にあるシリア軍の基地を砲撃したと発表した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍戦闘機がフバイト村を8回、ハーン・シャイフーン市を6回、ウライニバ村、アービディーン村、ヒーシュ村、ナキール村をそれぞれ2回爆撃し、ヘリコプターがアービディーン村、フバイト村、カッサービーヤ村に「樽爆弾」をそれぞれ4発、マガッル・ハマーム村に2発を投下した。

ロシア軍戦闘機もカッサービーヤ村、マガッル・ハマーム村をそれぞれ2回爆撃した。

シリア軍地上部隊はさらに、ハーン・シャイフーン市やダイル・サンバル村を砲撃した。

一方、SANA(5月21日付)によると、シリア軍がバアルブー村、アービディーン村、フバイト村にあるシャーム解放機構の拠点を砲撃、これを破壊した。

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アレッポ県では、SANA(5月21日付)によると、反体制武装集団が撃った迫撃砲弾複数発が、アレッポ市のマサーキン・サビール地区、シャイハーン交差点地区に着弾し、住民6人が負傷した。

これに対して、シリア軍は直ちにアレッポ市南部郊外の砲撃地点を砲撃し、反体制武装集団の戦闘員複数人を負傷させたという。

ANHA(5月21日付)によると、砲撃を行ったのはシャーム解放機構。

一方、シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機がアレッポ市ラーシディーン地区、ICARDA地区をそれぞれ2回爆撃した。

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ラタキア県では、ドゥラル・シャーミーヤ(5月21日付)によると、シャーム解放機構がクルド山地方のクナイカ丘一帯を砲撃した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を11件(アレッポ県1件、ラタキア県8件、ハマー県2件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を19件(アレッポ県6件、イドリブ県4件、ラタキア県2件、ハマー県7件)確認した。

AFP, May 21, 2019、ANHA, May 21, 2019、AP, May 21, 2019、al-Durar al-Shamiya, May 21, 2019、al-Hayat, May 22, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, May 21, 2019、Reuters, May 21, 2019、RT, May 21, 2019、SANA, May 21, 2019、SOHR, May 21, 2019、UPI, May 21, 2019などをもとに作成。

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