シリア・ロシア軍はイドリブ県、ハマー県を激しく爆撃、反体制派支配下のマアッラト・ヌウマーン市では市場が狙われ39人が死亡、ロシアは爆撃への関与を否定(2019年7月22日)

シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北部、アレッポ県西部の緊張緩和地帯では、シリア・ロシア軍が攻撃を激化させてから82日目となる7月22日、シリア・ロシア軍は爆撃を継続、シリア軍とシャーム解放機構などからなる反体制武装集団が交戦、双方が相手方の支配地域を激しく砲撃しした。

シリア人権監視団によると、4月30日以降の戦闘による犠牲者数は前日より68人(民間人68人(うち女性7人、子供9人)、シリア軍兵士0人、反体制武装集団戦闘員0人)増えて2,651人となった。

68人のうち、シリア・ロシア軍の攻撃による死者は54人、反体制武装集団の攻撃による死者は14人。

なお、2,651人のうち、759人が民間人(女性142人、子供189人を含む)、918人がシリア軍兵士、974人が反体制武装集団戦闘員。

シリア軍戦闘機による爆撃回数は約80回を記録、ヘリコプターが「樽爆弾」25発を投下、ロシア軍も48回の爆撃を行った。

またシリア軍の地上部隊による砲撃は340発におよんだ。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でマアッラト・ヌウマーン市、サラーキブ市、カフルサジュナ村、マアッルズィーター村、アルマナーヤー村、バスィーダー村、カフルルーマー村、マアッラト・スィーン村、カンスフラ村、ファッティーラ村、カフルナブル市一帯、マルアンド村に対して爆撃を実施するとともに、ヘリコプターでマアッラト・ヌウマーン市、カフルルーマー村に「樽爆弾」を投下した。

この爆撃により、サラーキブ市で女性1人と子供1人を含む市民8人、カフルルーマー村で女性1人を含む2人が死亡した。

またシリア軍は地上部隊が県内各所を砲撃し、ジスル・シュグール市近郊のカスタン村で女性1人、子供1人を含む一家4人が、ビダーマー町で男性1人が死亡した。

ロシア軍もマアッラト・ヌウマーン市、ハーン・シャイフーン市、ラカーヤー村、タマーニア町、タッル・タルイー村、ヒーシュ村、カフルナブル市、ハザーリーン村一帯を爆撃し、マアッラト・ヌウマーン市では市場が狙われ、ホワイト・ヘルメットなどによると市民39人が死亡した。

また、カフルナブル市でも市民1人が死亡した。

これに関して、ロシア国防省は声明を出し、「英国と米国が資金を提供するホワイト・ヘルメットの匿名人物が出した発表は…ウソの発表である」と否定したうえで、「ロシア空軍はこの地域に対して爆撃を実施していない」と主張した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でサルマーニーヤ村、ドゥワイル・アクラード村、ラトミーン町に対して爆撃を実施するとともに、ヘリコプターでムーリク市、サルマーニーヤ村に「樽爆弾」を投下した。

この爆撃で、ラトミーン村で子供2人が死亡した。

またシリア軍は地上部隊が県内の戦闘地域を砲撃した。

ロシア軍もムーリク市、ラターミナ町を爆撃した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍地上部隊が県内の戦闘地域を砲撃し、カフルダーイル村で男性1人が死亡した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でカッバーナ村一帯に対して爆撃を実施するとともに、地上部隊が同地を砲撃した。

ロシア軍もカッバーナ村一帯を爆撃した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を5件(ハマー県4件、ラタキア県1件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を6件(ハマー県5件、イドリブ県1件)確認した。

AFP, July 22, 2019、ANHA, July 22, 2019、AP, July 22, 2019、al-Durar al-Shamiya, July 22, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, July 22, 2019、Reuters, July 22, 2019、SANA, July 22, 2019、SOHR, July 22, 2019、UPI, July 22, 2019などをもとに作成。

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