ロシア外務省は、アサド大統領が複数の反体制武装勢力との交渉を経て、平和的に権力を移譲するよう指示を出し、辞職したと発表した。
ロシア外務省はまた、シリア国内の軍事基地の安全に深刻な脅威はないとしつつも、最高警戒態勢を維持していると述べた。
さらに、ロシア政府は、シリアのすべての反体制派勢力と連絡を取り合っており、アサド大統領がシリアを離れたことを確認したと付言した。
RIAノーヴォスチ(12月8日付)は、ロシア大統領府関係者の話として、アサド大統領と家族がロシアの首都モスクワに到着、ロシアは人道的配慮に基づき彼らの亡命を認めたと伝えた。
シリア人権監視団は、これに先立って、7日晩にアサド大統領を乗せたと見られるダマスカス航空機が離陸した後、ダマスカス国際空港を守備していたシリア軍部隊が同地から撤退したと発表していた。
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一方、イラン国営テレビ(12月8日付)は、首都ダマスカスが「攻撃抑止」軍事作戦局を制圧したことを受けて、ダマスカスのイラン大使館が武装勢力により占拠されたと報じた。
また、イラン外務省は、ダマスカスの大使館からイラン人外交官を退去させたと発表した。
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アサド政権崩壊を受けた各国の対応は以下の通り:
中国外交部は「中国はシリアの状況の展開を注視しており、シリアが一日も早く安定を取り戻すことを望んでいる」と発表した。
フランス外務省のクリストフ・ルモワン報道官が「体制はシリア国民を互いに争わせ、シリアを分断・分裂させ続けてきたが、今こそ団結の時である」と述べ、平和的な政治移行を促すとともに、「あらゆるの形態の過激主義を拒否する」と強調した。
ドイツのアナレーナ・ベアボック外務大臣は、「シリアがいかなるかたちであれ、他の過激派の手に渡ることを防がなければならない」「クルド人、アラウィー派、キリスト教徒といった民族的・宗教的少数派の完全な保護と政治的包摂の必要性」を強調した。
トルコのハカン・フィダン外務大臣は、ドーハ・フォーラムでアサド政権の崩壊は「もちろん、これは一夜にして起こったわけではない。この13年間、シリアは混乱のなかにあった」と発言した。
UAEのアンワル・カルカーシュ大統領顧問は、バーレーンでのマナーマ対話会議で「我々はシリア国民が協力し、混乱がさらに拡大するのを防ぐことを望んでいる」と発言した。
英国のアンジェラ・レイナー副首相は「アサドはシリア国民にとって決して良い存在ではなかった」、「この地域の安定が必要である」、「独裁とテロは、すでに多くの苦難を抱えるシリア国民にさらなる問題をもたらす」、「政府がシリア国民の利益のために行動する政治的解決が必要だ」と述べた。
ゲイル・ペデルセン・シリア問題担当国連特別代表は、反体制派による掌握を「内戦14年近くを経たシリアにとっての分水嶺の瞬間」としたうえで、「今日、我々は慎重な希望を持って、新たな章の幕開け――平和、和解、尊厳、そしてすべてのシリア人を包摂する未来を期待している」と述べた。
AFP, December 8, 2024、ANHA, December 8, 2024、‘Inab Baladi, December 8, 2024、IRIB, December 8, 2024、Reuters, December 8, 2024、RIA Novosti, December 8, 2024、SANA, December 8, 2024、Sham FM, December 8, 2024、SOHR, December 8, 2024などをもとに作成。
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