西クルディスタン人民議会報道官がペシュメルガの西クルディスタンへの軍事介入は「現在提起されていない」ことを明らかに、ハルキー首相は化学兵器使用調査団の活動が成功するための全ての措置を講じる準備へ(2013年8月20日)

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反体制勢力の動き

西クルディスタン人民議会のシールザード・ヤズィーディー報道官は『ハヤート』(8月21日付)に、イラク・シャーム・イスラーム国、シャームの民のヌスラ戦線との戦闘激化やイラクへのクルド系住民の大量避難に関連して、イラク・クルディスタン自治政府のペシュメルガの「西クルディスタンへの軍事介入は現在提起されていない」と述べた。

ヤズィーディー報道官はまた「西クルディスタン地域は経済、生活、人道支援を必要としている」と付言した。

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クッルナー・シュラカー(8月20日付)によると、ダマスカス県で「シリア国民建設運動」暫定準備委員会が声明を出し、9月28日までに結党声明を発表することを明らかにした。

結党を行う発足人委員会は現在72人からなっており、そのなかには、ハビーブ・イーサー氏、ジャラール・ヌーファル氏らが名を連ねている。

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自由シリア軍参謀委員会のルワイユ・ミクダード政治広報調整官はElaph(8月20日付)に「海岸(ラタキア山間部)戦線の崩壊に関して繰り返しなされている報道」は根拠がないと否定、「自由シリア軍はすべての戦線で戦いを続けている」と述べた。

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『ハヤート』(8月21日付)によると、クルド山地調整を名のる組織を含む13の調整組織、シリア革命反体制勢力国民連立メンバーのハーリド・マスブート氏、ムスタファー・サフタ氏ら13人がラタキア山間部での「海岸解放作戦」継続を訴える共同声明を発表した。

共同声明は、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長、自由シリア軍参謀委員会のサリーム・イドリース参謀長に宛てられており、ラタキア県での戦闘が「始まったばかりだ」としたうえで、「海岸の戦いの早期決着は、革命のためになり、他県での(政府の)軍事的圧力と我らがシリア人同胞の痛みを軽減する」と主張した。

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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、ダマスカス郊外県のバービッラー市、バイト・サフム市、アクラバー村、ブワイダ市、ナジュハ市、サイイダ・ザイナブ町、スバイナ町、ダマスカス県ヤルムーク区を「被災地」に指定、国際機関、人道支援団体に対して、「民間人救出のための早急且つ迅速な介入」を呼びかけ、「人道回廊設置」を求めた。

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クッルナー・シュラカー(8月20日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立本部がカイロからイスタンブールに移転するとした一部報道を、ハイサム・マーリフ法務委員会委員長が否定したと報じた。

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クッルナー・シュラカー(8月20日付)によると、シリア国民評議会はジョルジュ・サブラー氏を事務局長(任期6ヶ月)に再選した。

シリア政府の動き

ワーイル・ハルキー首相は、化学兵器使用に関する国連調査団の訪問を歓迎し、合意に従い協力し、外務在外居住者省が調査団の活動を成功させるべく必要なすべての措置を講じる準備を行った、と述べた。

ロイター通信(8月20日付)が報じた。

国内の暴力

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団がジャウバル区内の軍拠点を攻撃し、軍と交戦、戦闘はアッバースィーイーン地区のバス発着場近くまで及び、同地区の広場に迫撃砲弾が着弾し、多数が死傷した。

またバルザ区では、同地区の完全制圧をめざす軍が攻勢を強め、ヤルムーク区では、軍、パレスチナ人の人民諸委員会が、反体制武装集団と交戦し、多数が死傷した。

一方、『ハヤート』(8月21日付)によると、マッザ区の大学寮で火災が発生する映像がインターネットにアップされた。

他方、SANA(8月20日付)によると、バルザ区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアッバースィーイーン地区、カッサーア地区、ザブラターニー地区に迫撃砲弾複数発が着弾し、市民8人が負傷した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、軍がパレスチナ人の人民諸委員会の支援を受け、フサイニーヤ・パレスチナ難民キャンプへの突入を試みた。

またムウダミーヤト・シャーム市、ハーン・シャイフ農場、ダーライヤー市などで軍と反体制武装集団が交戦、軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(8月20日付)によると、カーラ市、タッル・クルディー、ハラスター市、ダイル・サルマーン市、カースィミーヤ農場、ムライハ市、ズィヤービーヤ町、フサイニーヤ町、フジャイラ村、ザバダーニー市、ヤブルード市郊外で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、ドゥーマー殉教者旅団、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ナワー市、フラーク市、ブスル・ハリール市を軍が空爆し、複数名が死傷した。

一方、SANA(8月20日付)によると、ダーイル町、ナワー市、ヤードゥーダ村、バスル・シャーム市、西ムライハ村、インヒル市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、サウジ人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ハウラ地方などを砲撃した。

一方、SANA(8月20日付)によると、ヒムス市クスール地区、カラービース地区、ジャウラト・シヤーフ地区、バーブ・フード地区、タルビーサ市、ガントゥー市、カルアト・ヒスン市、ダール・カビーラ村、カフルラーハー市、ブルジュ・カーイー村、サルムーティーヤ農場、東ブワイダ村、タドムル市郊外、ラスタン市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点を破壊、武器を押収した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団がアレッポ市ライラムーン地区を砲撃、複数が死傷した。

またアレッポ市では、バーブ街道地区でに軍の迫撃砲が着弾し、子供1人を含む5人が死亡したほか、ザフラー地区、マサーキン・ハナーヌー地区、ブスターン・バーシャー地区などで軍と反体制武装集団が交戦し、複数が死傷した。

シリア軍さらに、イドリブ県との県境に位置するバータブー村を空爆した。

他方、SANA(8月20日付)によると、ムスリミーヤ・アレッポ街道、マーイル町、バヤーヌーン町、マンナグ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ハーミディーヤ航空基地南部の軍拠点を反体制武装集団が迫撃し、複数が死傷した。

一方、SANA(8月20日付)によると、アーリヤ市、サルマーニーヤ村、ハッジ・ハンムード農場、バザーブール村、イブリーン村、アルバイーン山、アリーハー・マストゥーマ街道、マアッラトミスリーン市、タッル・スルターン市、アブー・ズフール市西部、バラーギースィー市北部、ダイル・ガルビー村、カフルルーマー村、マアッラト・ヌウマーン市、ハーミディーヤ市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、外国人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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クナイトラ県では、SANA(8月20日付)によると、ビイル・アジャム市の反体制武装集団拠点に軍が特殊作戦を行い、複数の戦闘員を殺傷した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、ダルダーラ村、ハミード村、ジャーファー村、ラアス・アイン市近郊の村々、ジュワーディーヤ市郊外のサファー村で、民主統一党人民防衛隊と、イラク・シャーム・イスラーム国、シャームの民のヌスラ戦線が交戦した。

レバノンの動き

LBCI(8月20日付)によると、18日にベカーア県ヘルメル郡のマシャーリーウ・カーアなどに迫撃砲弾5発が着弾した事件に関して、マルワーン・ハディード中隊を名のる集団がビデオ声明(http://www.youtube.com/watch?v=S3621uNnOlY&feature=player_embedded)を出し、犯行を認めた。

マルワーン・ハディードは1970年代にシリア国内で活動していた急進的イスラーム主義者で、1980年代にシリア国内での武装闘争を主導したシリア・ムスリム同胞団戦闘前衛隊の前身であるアッラーの党の戦闘前衛隊を指導した人物。

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NNA(8月20日付)によると、ベカーア県バアルベック郡アルサール村東部のマルサド地方で、シリア軍戦闘機が灯油を積んだトラックを攻撃、破壊した。

諸外国の動き

国連は声明を出し、ジュネーブ2会議開催のためオランダのハーグで予定されている米露外相級会談に、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表は参加しないと発表した。

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米国のUSAIDは、シリアの紛争に伴う避難民受入など食糧事情などが悪化するヨルダンに対して、2,400万ドル相当の食糧援助を行うと発表した。

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赤十字国際委員会レバノン代表のユルグ・モンターニー氏は記者会見を開き「紛争当事者が錯綜している場合、我々は訪問したい地域にいるすべての集団の信頼を得ねばならない…。問題は、我々が入りたい時に入りたい地域に行くことができないことだ」と述べ、反体制勢力制圧地域へのアクセスが困難な実態を吐露した。

AFP, August 20, 2013、Elaph, August 20, 2013、al-Hayat, August 21, 2013、Kull-na Shuraka’, August 20, 2013、Kurdonline, August
20, 2013、LBCI, August 20, 2013、Naharnet, August 20, 2013、NNA, August 20,
2013、Reuters, August 20, 2013、SANA, August 20, 2013、UPI, August 20, 2013などをもとに作成。

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