ロシア難民受入移送居住センター:レバノンから419人、ヨルダンから799人の難民が帰国、避難民1,836人(うちルクバーン・キャンプからの帰還者1,836人)が帰宅(2019年5月3日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(5月3日付)を公開し、5月2日に難民1,218人が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは419人(うち女性125人、子供214人)、ヨルダンから帰国したのは799人(うち女性195人、子供332人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は209,764人となった。

内訳は、レバノンからの帰国者73,955人(うち女性21,873人、子ども36,854人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者135,809人(うち女性40,308人、子ども68,466人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

また、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は 439,044人(うち女性131,057人、子供222,613人)となった。

なお、45カ国で難民登録したシリア人の数は6,659,752人(うち女性1,997,926人、子供3,396,474人)。

**

一方、国内避難民1,836人が新たに帰宅した。

うち東グータ地方に帰宅したのは15人(うち女性3人、子供5人)、ダイル・ザウル県サーリヒーヤ村の通行所を経由してダマスカス郊外県、ヒムス県などに帰宅したのは0人、ヒムス県南東グラーブ山の通行所を経由して帰還したのは1,821人(うち女性637人、子供827人)、イドリブ県アブー・ズフール町郊外の通行所を経由して帰宅したのは0人だった。

これにより、2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は27,409人(うち女性3,838人、子供4,747人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,296,005人(うち女性386,397人、子供648,513人)となった。

なお、グラーブ山通行所を経由して帰還した1,821人のうち、米主導の有志連合が占領するヒムス県タンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)に面するヨルダン北東部のルクバーン・キャンプから帰国した難民は1,821人(うち女性637人、子供827人)だった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, May 3, 2019をもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シリア政府支配地域の人々が外国の援助、国内外への転居・移住をどう考えているかを調査した「中東世論調査(シリア2017年)」の単純集計報告書をCMEPS-Jが発表

中東調査会の髙岡豊上席研究員を中心とする平成27年~30年度科学研究費助成事業「世論調査による中東地域の政治秩序と変革の実証研究」(研究代表者:浜中新吾・龍谷大学教授)の調査チームが、シリア世論調査研究センター(SOCPS)の協力のもとに実施した最新の世論調査の結果がCMEPS-J.netにて発表された。

「中東世論調査(シリア2017年)」と題された世論調査は、シリア政府および西クルディスタン移行期民政局の支配地域で暮らす1500人を対象に2017年3月に実施され、現下の生活、日本を含む諸外国の援助をどう評価しているかに加え、国内外への転居・移住の是非をどう考えているかが調査された。

単純集計報告書は以下のURLにて閲覧可能。

https://cmeps-j.net/wp-content/uploads/2017/04/report_syria2017.pdf

CMEPS-J.net

 

(C)青山弘之 All rights reserved.

最新論考「シリア・アサド政権はどのように必要とされているのか?」(Synodos)

青山弘之「シリア・アサド政権はどのように必要とされているのか?」
Synodos、2015年3月19日

「アラブの春」がシリアに波及して、この3月15日で4年が過ぎた。「今世紀最悪の人道危機」と評される同国の惨状は、今でも「独裁」対「民主化」という勧善懲悪のもとで捉えられることが少なくない。「アサド政権が20万人以上の市民を虐殺した」、「アサド軍は「樽爆弾」を無差別に投下し、市民を殺戮している」といった批判がその典型だ。

むろん、国内では、シリア軍の作戦で多くの人命が絶たれ、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、人口(約2,200万人)の半分に相当する1,000万人が被災し、650万人が国内外での避難生活を余儀なくされている。しかし、実証や裏付けを伴わない一方的な批判は、もはや暴力停止に向けた建設的議論をモラトリアムするための口実にしか見えない。・・・

最新論考「シリア反体制武装勢力の同質性と異質性:アル=カーイダ系組織、ジハード主義者、「穏健な反体制派」(『国際情勢紀要』)

青山弘之「シリア反体制武装勢力の同質性と異質性:アル=カーイダ系組織、ジハード主義者、「穏健な反体制派」
『国際情勢紀要』第85号、2015年3月、125~133ページ

Ⅰ はじめに

シリアで紛争が発生してから2015年3月半ばで4年が経とうとしている。「アラブの春」の一環として始まったはずのこの紛争が「独裁政権」対「民主化運動」といったイメージとはほど遠く、混沌と暴力の応酬によって特徴づけられていることは今や周知の事実である。そこでは、シリア軍、国防隊、西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊(Yekîneyên Parastina Gel、略称YPG)、反体制武装勢力が入り乱れて戦いを続けるなか、米国が主導する有志連合が、一方でイスラーム国壊滅に向けて空爆を行いつつ、他方でバッシャール・アサド政権退陣をめざして「穏健な反体制派」を支援している。
本論では、現下の武力紛争における主要な当事者のうち、アル=カーイダ系組織、ジハード主義組織、「穏健な反体制派」といった言葉(カテゴリー)で分類されることが多い反体制武装勢力の組織間の関係に着目することで、その異質性と同質性を明らかにする。そのうえで、反体制武装勢力への支援や共鳴が持つ意味を考察する。なお2011年以降のシリア国内情勢の詳細な推移については「シリア・アラブの春顛末記――最新シリア情勢――」(http://syriaarabspring.info/)を参照されたい。・・・

(近日ネットにて公開予定)

最新論考「イスラム国掃討にアサド政権必要:「退潮」機に全シリアで結束を」(Janet e-World/A stand/e-World Premium)

青山弘之「イスラム国掃討にアサド政権必要:「退潮」機に全シリアで結束を(特集I・テロと言論の自由)」
Janet e-World、2015年2月25日
A stand Web新書、2015年3月2日
e-World Premium 2015年3月号

2月に入って、ダーイシュ(「イスラム国」のアラビア語の通称)に対する国際社会の攻勢と結束がにわかに高まりを見せている。
有志連合の一角をなすヨルダンは、モアズ・カサスベ中尉処刑への報復として、シリア、イラク領内での空爆を強化すると発表、米国もオバマ大統領がイラクでの一時的な地上部隊投入を念頭に置いた文書を議会に提出した。また国連では、ロシアの提案の下、石油取引や身代金支払いを禁止した安保理決議第2199号が全会一致で採択された。
こうした動きに逆行する形でシリアが疎外され続ければ、地域の混乱はさらに助長され、ダーイシュに延命の余地を与えるだけである。

◇有志連合と認知されないシリア軍

邦人質2人が殺害されて以降、日本ではダーイシュの脅威がことさら強調されるようになっている。だが、シリア国内に目を向けると、彼らが勢力を弱めていることは明らかだ。
昨年9月から続いていたシリア北部アインアルアラブ市での戦闘は、現地のクルド人民兵組織、西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊(YPG)がイラク・クルド人治安部隊「ペシュメルガ」や有志連合の後押しを受けて勝利し、その攻勢はトルコからの兵たん線上に位置するタルアブヤド市やジャラブルス市に及ぼうとしている。ダーイシュ内部では、非アラブ人幹部の狭量な宗教解釈や蛮行に不満を募らせたアラブ人が離反し、トルコに脱走するケースが頻発している。
シリア人の離反も相次ぎ、その一部はアルカイダ系組織「ヌスラ戦線」などのイスラム過激派に身を寄せるようになっている。カリフ制樹立が宣言された昨年半ばには、ヌスラ戦線や反体制武装集団「自由シリア軍」の戦闘員多数がダーイシュに合流したが、今やその逆の動きが生じているのである。さらに東部のデリゾール県では、「東部地域人民抵抗」を名乗る組織がダーイシュ戦闘員を襲撃するようになっており、住民の反抗も強まっている。
ダーイシュの退潮は、・・・

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新刊『「アラブの心臓」に何が起きているのか:現代中東の実像』(岩波書店)

青山弘之(編)『「アラブの心臓」に何が起きているのか:現代中東の実像』岩波書店。

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■体裁=四六判・並製・カバー・240頁
■定価(本体 2,400円 + 税)
■2014年12月18日
■ISBN 978-4-00-022084-2 C0031
________________________________________
「イスラーム国」の出現,ガザ戦争,シリア「内戦」…….相次ぐ混乱の原因は宗派対立なのか,それとも独裁者の存在なのか.今日の中東全体の政治的・社会的問題が先鋭的に現れているエジプト,シリア,イラク,レバノン,ヨルダン,パレスチナの「アラブの心臓」諸国の実像を解明し,中東政治を的確に読み解く視座を提示する.________________________________________

目次

凡例

序章       「混沌のドミノ」に喘ぐ「アラブの心臓」 青山弘之

第1章    エジプト:二つの「革命」がもたらした虚像の再考 横田貴之

第2章    シリア:「真の戦争状態」が必要とする「独裁」政権 髙岡豊

第3章    イラク:民主化の蹉跌と宗派対立という亡霊 山尾大

第4章    レバノン:「決めない政治」が支える脆い自由と平和 末近浩太

第5章    ヨルダン:紛争の被害者か、受益者か 吉川卓郎

第6章    パレスチナ:ハマース否定が導いた政治的混乱 錦田愛子

終章       中東政治の実情に迫るために 青山弘之

文献リスト

人名索引・事項索引

講演「過激派組織「イスラム国」の実態と欧米の対応」(暦日会)

青山弘之「過激派組織「イスラム国」の実態と欧米の対応」

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講演要点
今週は青山弘之氏の<『イスラム国』と欧米>に関するお話です。青山氏はアラブ問題研究の専門家。

イスラム過激派組織「イスラム国」の実態に迫るに当たってシリアとイラクの政治情勢さらには欧米との複雑な関係を浮き彫りにした。

1979年のイラン革命に始まり、湾岸戦争、イラク戦争などの経緯を振り返り、同時に欧米との関係などを解説し「イスラム国」結成の背景や実態を明らかにした。

「イスラム国」はアルカイーダ系の組織で、イラク・アルカイーダが2006年に結成したイラク・イスラム国(ISI)が母体という。

従来のアルカイーダがイデオロギー重視であるのに対して「イスラム国」はこれを非現実的とみて敵視し転覆を狙う。

主にシリアで勢力を拡大しアサド政権に対抗する。

戦闘員は2~3万人とされ、その4分の1から5分の1が外国人で約80カ国から来ているとみる。

「イラクとシリアの緩衝地帯など両国の実効支配が及ばない地域で主に活動している」という。

グループは残忍性、恐怖政治、宗教に厳格で盲目的に信じるなどの特徴を持つ。

これに対する欧米の基本的な戦略は「強いシリア」「強いイラク」化をけん制する意味で
イスラム国に対応してきた面もある。

つまり「イスラム国」を利用してシリアのアサド政権やイラク政権の強化にブレーキをかける魂胆もあるという。

ただ「イスラム国」が石油資源などを有するイラクに侵入したことに危機感を持ち「米国中心に欧米や中東諸国がイスラム国の空爆を断行した」との背景を説明した。

青山弘之(あおやま・ひろゆき) プロフィール
1968年生まれ。東京外国語大学卒、一橋大学大学院修士課程修了。在ダマスカスIFPO(フランス中東研究所)共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員、東京外国語大学准教授を経て2013年4月から現在の東京外国語大学総合国際学研究院教授。
専門は現代シリア・レバノン政治。著書は「混迷するシリア:歴史と政治構造から読み解く」(岩波書店)、「シリア・アラブの顛末記」など。

http://www.rekijitsukai.co.jp/koushi_a/2014/aoyama-hiroyuki14-11-02.html

最新論考「イスラム国爆撃」(共同通信社)

青山弘之「イスラム国空爆」(共同通信社)

シリアとイラクで勢力を広げている過激派の「イスラム国」に対して米国を中心とした有志連合が空爆に踏み切った。・・・

『岩手日報』2014年11月3日、『佐賀新聞』2014年11月5日、『デイリー東北』2014年11月5日、『高知新聞』2014年11月6日、『山形新聞』2014年11月7日に掲載。

最新論考「世界80カ国から集まる戦闘員:「イスラム国」は爆撃国が育てた」(Wedge)

髙岡豊(中東調査会上席研究員)「世界80カ国から集まる戦闘員:「イスラム国」は空爆国が育てた」
Wedge、2014年10月28日

これまで「イスラム国」を放任し、成長させてきた国が焦りをみせている。2014年8月、アメリカはイラク、シリアで大攻勢をかけていた「イスラム国」に対しイラク北部での限定的空爆を開始した。爆撃の範囲は次第に拡大し、イラク西部のアンバール県でも「イスラム国」の拠点が空爆された。9月にはフランスも空爆に参加し、軍事行動やその支援に参加する国も増加した。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4375?page=1

最新論考「混乱を再生産するイスラーム国と欧米:その奇妙な親和性」(『世界』)

青山弘之「混乱を再生産するイスラーム国と欧米:その奇妙な親和性」
『世界』第862号、2014年11月、pp.145-153

米英仏が化学兵器使用疑惑を根拠にシリアへの限定的攻撃を画策してから1年が経った2014年9月、バラク・オバマ米大統領は、イスラーム国を殲滅するとしてシリア空爆の意思を再び表明した。イスラーム国を「ガン」と非難する米国の好戦的な姿勢は、反体制派を「細菌」と呼び、「テロとの戦い」の名のもとにその殲滅をめざしてきたバッシャール・アサド政権を彷彿とさせる一方、既存の国家枠組みを軽視する欧米諸国の支援策は、シリア、イラク両国国境の撤廃を主唱し、混乱を助長するイスラーム国との奇妙な親和性を感じさせる。混沌の中東を読み解く。・・・

最新論考「アサド政権を利する「イスラム国」の台頭:欧米の無力、さらに露呈」(e-World Premium)

青山弘之「アサド政権を利する「イスラム国」台頭:欧米の無力、さらに露呈」

e-World Premium, Vol. 7, 2014年8月、pp. 28-32

■対アサドでアルカイダを黙認した欧米
■既存武装集団の離合集散促す
■欧米諸国に軍事解決認めさせるメッセージ
アルカイダ系過激組織「イスラム国」の攻勢は、イラクの民主政治が宗派主義的プロパガンダにもろいことを白日の下にさらしたが、シリアにおいては、民主化や人道保護の名の下にテロを黙認してきた欧米諸国の干渉政策の失敗を象徴する出来事として捉えることができる。・・・

最新論考「宗派対立」では読み解けないイラクの混乱:シリア紛争との連続線」(『外交』)

青山弘之「宗派対立」では読み解けないイラクの混乱:シリア紛争との連続線」(一点視界・一天四海)『外交』第26号、2014年7月、pp. 86-90

http://book.jiji.com/gaiko/

イスラム過激派の武装勢力が「イスラム国家」の樹立を宣言、首都バグダッドへの侵攻を続けるなどイラク情勢が緊迫の度を強めている。情勢悪化の本質的要因に何があるのか。「アラブの春」以降混乱が激化するアラブ世界の現状を、青山弘之・東京外国語大学教授に分析してもらった。・・・

最新論考「アサド政権を利する「イスラム国」の台頭:欧米の無力、さらに露呈」(e-World)

青山弘之「アサド政権を利する「イスラム国」台頭:欧米の無力、さらに露呈」
e-World、2014/07/24-14:46

■対アサドでアルカイダを黙認した欧米
■既存武装集団の離合集散促す
■欧米諸国に軍事解決認めさせるメッセージ
アルカイダ系過激組織「イスラム国」の攻勢は、イラクの民主政治が宗派主義的プロパガンダにもろいことを白日の下にさらしたが、シリアにおいては、民主化や人道保護の名の下にテロを黙認してきた欧米諸国の干渉政策の失敗を象徴する出来事として捉えることができる。・・・

最新論考「イラクとシャームのイスラーム国」は何に挑戦しているのか」(『世界』)

髙岡豊「イラクとシャームのイスラーム国」は何に挑戦しているのか」
『世界』第859号、2014年8月、 pp. 20-24

中東が大きく揺れている。内戦の続くシリアから国境を越えてイラクへ進撃し、首都バグダッドに迫る勢いのイスラーム過激派武装勢力ISIS。どういう組織なのか。そしてその登場の歴史的意味とは?・・・

 

最新論考「悪化するシリア情勢に難民たちはいま」(Synodos)

井上慶子「悪化するシリア情勢に難民たちはいま」
Synodos、2014年7月7日
http://synodos.jp/international/9370

2014年3月15日、シリアで最初のデモが起こってから3年が経った。国連難民高等弁務官(以下UNHCR)の統計[*1]によれば、6月16日時点で、シリアの紛争による避難民は287万人、うち正式に難民登録をしているのは280万人。難民登録数は2013年4月半ば過ぎから急激に増え、今もなお増え続けている。・・・

最新論考「カリフ制樹立を宣言した「イラクとシャームのイスラーム国」の過去・現在・将来」(Synodos)

髙岡豊「カリフ制樹立を宣言した「イラクとシャームのイスラーム国」の過去・現在・将来」
Synodos、2014年7月4日
http://synodos.jp/international/9659

2014年6月、「イラクとシャームのイスラーム国」[*1]の攻勢を前にイラク軍が脆くも敗走、イラク中部の諸都市や、西部のシリアやヨルダンとの国境通過地点が「イスラーム国」などの武装勢力の手に落ちた。・・・

最新論考「アル=カーイダ系武装組織の抗争の「場」と化したシリア」(nonfiction J)

高岡豊「アル=カーイダ系武装組織の抗争の「場」と化したシリア」
http://nonfiction.jp/%e5%9b%bd%e9%9a%9b/12023

nonfiction J、 2014年5月8日
2010年から2012年にかけて起きた「アラブの春」。中東地域における民主化の波として国内メディアでも大きく報道された。しかし、実際には、「アラブの春」以降の現状は混とんとしている。特に内戦が泥沼化しているシリアについて、メディアからその情勢は十分に伝わってこない。そこで、中東調査会研究員としてシリア情勢をウオッチしている高岡豊氏にシリアを取り巻く状況を読み解いてもらった。・・・

最新論考「混迷するアラブ情勢の今:シリアをめぐる紛争をどうとらえるか」(『地理・地図資料』)

青山弘之「混迷するアラブ情勢の今:シリアをめぐる紛争をどうとらえるか」
http://www.teikokushoin.co.jp/journals/geography/pdf/201401g/04_hsggbl_2014_01g_p07_p10.pdf

『地理・地図資料』2014年度1学期号、7~10ページ

チュニジアでの政権交代に端を発する「アラブの春」がアラブ各国を席巻してから3年が経った。「民主化革命」などと報道されたこの政治変動が当初の楽観的な期待から乖離し,各国政情を不安定化させたという現実は,最近になってようやく認知されつつある。しかし・・・

最新論考「シリア:民主化なき戦い 東京外大教授 青山弘之氏」(『読売新聞』2014年2月22日朝刊)

最新論考「シリア:民主化なき戦い 東京外大教授 青山弘之氏」(編集委員が迫る/聞き手 鶴原徹也)『読売新聞』2014年2月22日朝刊。

シリア紛争は3月、3年が過ぎた。戦闘は今日も続き、死者は推計で14万人を超え、難民・避難民は900万人に及ぶ。一時は苦境に立ったアサド大統領だが、依然として政権にとどまっている。日本有数のシリア・ウオッチャー、青山弘之・東京外語大教授に情勢を読み解いてもらった。…

2014-03-22_06-59-43_238

http://info.yomiuri.co.jp/

最新論考「シリア紛争から3年:アサド政権と反体制勢力の暴力の応酬をめぐる「善」と「悪」(Asahi中東マガジン)

青山弘之「シリア紛争から3年:アサド政権と反体制勢力の暴力の応酬をめぐる「善」と「悪」

Asahi中東マガジン、2014年3月18日 http://middleeast.asahi.com/report/2014031600001.html

「シリア革命」と呼ばれた反体制運動が高揚し、シリアが未曾有の混乱に苛まれてから3月15日で3年が経った。「今世紀最悪の紛争」と評されるこの武力紛争は、「政権崩壊は時間の問題」といった主張が欧米諸国や日本のメディアから姿を消して以降、大きく取り上げられることはなくなった。2013年8月のダマスカス郊外県グータ地方での化学兵器使用を受けて、シリア情勢への関心はにわかに高まりを見せたが、そこで注目されたのは、シリアそのものというよりは、むしろバッシャール・アサド政権に「懲罰的」な攻撃を行おうとした米英仏のヒステリーだった。
シリアの紛争への関心が薄れるなか、「自由を求める無垢な市民に対する独裁政権の一方的弾圧」というイメージだけが記憶にとどまり、多くの人がそれを現実だと錯覚している。だが、今日のシリアはこうしたイメージでは到底理解し得ない結末へと向かっており、実態に即した理解と対応が求められている。

* * *

「アラブの春」が波及するかたちで発生したシリアの紛争は、既存の政権(独裁政権)を「悪」、抗議行動を行う民衆を「善」と位置づけ、「悪」は滅び、その後に「善」なる「民主制」が実現する(実現せねばならない)という予定調和に沿って捉えられることが多い。しかし、拙稿(『混迷するシリア:歴史と政治構造から読み解く』岩波書店、2012年)で詳述した通り、この紛争は、争点や当事者を異にするさまざまな局面が折り重なるかたちで展開しており、重層性を無視した過度の単純化は、実態の把握を困難なものとした。
予定との調和を見せずに混迷を続けたシリア情勢は、中東政治を説明する際にしばしば引き合いに出される「宗派対立」という視点から説明されることもあった。アラウィー派政権とスンナ派からなる国民・反体制勢力の闘争、といった図式がそれである。しかし、宗派対立は、アサド政権を非難する欧米諸国と、シリアでのテロを自己正当化するアル=カーイダ系組織の言説が作り出す仮想現実だった。宗派への帰属やその教義は、…「続きはログイン・ご購入後に読めます」

最新論考(再)「アサド政権にさらなるフリーハンド:和平会議「破綻⼨前」の裏事情」(Astand)

青山弘之「アサド政権にさらなるフリーハンド:和平会議「破綻⼨前」の裏事情(特集II・シリアの隘路)」
e-World、2014年2月26日号 https://janet.jw.jiji.com/
Astand、2014年3月10日 http://astand.asahi.com/webshinsho/jiji/eworld/product/2014030400003.html

■シリア政府に有利な戦況
■自国出身活動家の帰還恐れる西欧諸国

シリアでの紛争解決に向けた政府とシリア国民連合による初の直接和平交渉「ジュネーブ2会議」が、1月22日から2月15日にかけてスイスで開催された。2ラウンドにわたる会議は、「テロとの戦い」を優先しようとする政府代表団と、現政権を排除した形での移行期統治機関(移行期政府)の樹立を訴える「国民連合」の対立により紛糾し、今後の交渉日程についても合意できないままに閉幕した。
だが閉幕直前の12日の会合で、国民連合が政権退陣を求める文言の明記を取り下げ、また仲介者であるアフダル・ブラヒミ国連・アラブ連盟共同特別代表が13日の米ロ外務次官との協議を経て、移行期統治機関の審議を先送りにすると決断したことで、シリア政府は事態収拾のフリーハンドを得た形となった。

◇シリア政府に有利な戦況

シリアの紛争は「アラブの春」の体制転換劇からの類推で、政権退陣に解決の糸口があるようなイメージがつきまとう。しかし拙稿(「せめぎ合いのなか友好的敵対に軟着陸したシリア和平会議」Synodos、2月5日付)で詳述した通り、ジュネーブ2会議が履行を目指す2012年6月のジュネーブ合意は「現政権、反体制組織…から構成される移行期統治機関を当事者の総意の下に発足させる」と規定し、アサド政権の存続を含意していた。
このことは、昨年半ばにアサド政権が化学兵器廃棄に責任を有する「正統な代表」として、欧米諸国を含む国際社会から承認されたことで既定事実となり、今回の会議で改めて追認された。
国内の暴力についても、アルカイダ系武装集団に対する掃討作戦など軍のあらゆる行為を「たる爆弾による住宅地への無差別殺りく」と断じる一部の活動家のプロパガンダゆえ、政権の残忍さが強調されるきらいがある。しかし、ロンドンを拠点とする反体制人権団体のシリア人権監視団が発表した死者総数14万人のうち、約5万4000人が軍や親政権民兵の将兵であることは看過されるべきでない。むろん、同監視団によると、民間人(武装した市民を含む)の犠牲者も5万人弱に達するという。だが、民間人の死者数は過去2カ月でなぜか2万人も「減少」し、代わってジハード(聖戦)主義武装集団の戦闘員の死者が3万人強に急増した。武力紛争が政権の一方的暴力だとの主張はますます成り立たなくなっている。

アサド政権は昨年末以降・・・

最新論考「紛争下のシリアにおける政治構造の若干の変容(試論):「権力の二層構造」持続に向けた抜本的制度改革」『国際情勢 紀要』

青山弘之「紛争下のシリアにおける政治構造の若干の変容(試論):「権力の二層構造」持続に向けた抜本的制度改革」『国際情勢 紀要』第84号、2014年2月(世界政治経済調査会国際情勢研究所出版)、pp. 183-196。

Ⅰ はじめに
Ⅱ 紛争前の政治構造
Ⅲ 紛争下の政治構造
Ⅳ 結びに代えて

http://www.sekaiseikei.or.jp/kokusaijyosei.htm

最新論考「アサド政権にさらなるフリーハンド:和平会議「破綻⼨前」の裏事情」(e-World)

青山弘之「アサド政権にさらなるフリーハンド:和平会議「破綻⼨前」の裏事情(特集II・シリアの隘路)」

e-World、2014年2月26日号 https://janet.jw.jiji.com/

■シリア政府に有利な戦況
■⾃国出⾝活動家の帰還恐れる⻄欧諸国

シリアでの紛争解決に向けた政府とシリア国⺠連合による初の直接和平交渉「ジュネーブ2会議」が、1⽉22⽇から2⽉15⽇にかけてスイスで開催された。・・・

最新論考「ヒズブッラーとは何か――抵抗と革命の30年」(Synodos)

ヒズブッラーとは何か――抵抗と革命の30年
末近浩太 / 中東地域研究
http://synodos.jp/international/7006
中東情勢をめぐる報道のなかでしばしば登場する「ヒズボラ」。最近では、とくに2011年からのシリア「内戦」において、バッシャール・アサド政権を支持・支援する勢力として、新聞やテレビのニュースで取り上げられている。かつては、自爆攻撃や欧米人の誘拐を繰り返す「イスラーム原理主義」や「テロ組織」として、その名がたびたび報じられたこともある。・・・

最新論考「せめぎ合いのなか友好的敵対に軟着陸したシリア和平会議」(Synodos)

せめぎ合いのなか友好的敵対に軟着陸したシリア和平会議
青山弘之 / アラブ地域研究

http://synodos.jp/international/6953
1月22日からスイスのモントルーとジュネーブで、シリアでの紛争の解決に向けた国際和平会議「ジュネーブ2会議」が始まり、シリア政府と在外反体制組織のシリア国民連合(正式名シリア革命反体制勢力国民連立)が3年余りに及ぶ紛争の政治解決に向けて初の直接交渉に臨んだ。