シャルア暫定大統領は、トランプ米大統領のシリアへの制裁解除宣言と同大統領との会談を受けて、国民に向けて演説:国際社会に投資を呼びかける(2025年5月14日)

SANAによると、アフマド・シャルア暫定大統領は、13日のドナルド・トランプ米大統領のシリアへの制裁解除宣言と14日の同大統領との会談を受けて、国民に向けて演説を行った。

演説の内容は以下の通り:

親愛なるシリア国民の皆さん、シリアは、崩壊した体制の支配のもと、現代史における悲劇的な時代を経験した。この間、国民は殺され、強制移住を余儀なくされ、闇の牢獄に消え、苦しみの叫びが高く響きわたった。
また、国家の資源は破壊され、盗賊と殺戮者の手によって略奪され、シリアはその住民や近隣諸国、地域、さらには世界から放置され、忌避される地となり果てた。
シリアは姉妹諸国やその国民ら、隣国から孤立し、文明国であるはずのシリアは、その輝かしい歴史からも遠ざかり、真のアイデンティティを失い、諸外国の列に後れを取った。だが、栄光の地イドリブにおいて、祝福されたシリア革命のもと、シリアの新たな未来が築かれていた。
国が解放され、その僕たちは歓喜し、彼らとともに隣国の兄弟たち、さらには世界全体が歓喜した。国民の帰属意識は蘇り、新たな国家への国民の熱意が高まった。
姉妹諸国とその国民もまた、シリア国民とその喜びを共有したいと欲し、希望の窓が開かれ、希望に満ちた未来が見え始めた。しかし、シリアはいまだ過去の重荷と痛みに縛られている。
過去6ヵ月の間、我々が身を置いていたこの厳しい現実を癒すことを優先課題とし、昼夜を問わず、国内の統合と市民の平和の維持、安全の確保と武装の制限から、内閣の発足や選挙委員会の設立に取り組み続けてきた。
また、憲法宣言の発布、国民大会の開催、不当な法律の撤廃、市場解放、組織の実情の評価、不具合の把握、その改善策の提示を続け、合わせて新生シリアの現状を各国に伝えるべくシリアの外交シャトルが重ねられた。
新生シリアは、もっとも重要な国際フォーラムや会議に参加し、国連でその旗を掲げ、閉ざされていた門戸を開き、アラブ諸国および西側諸国との戦略的関係の構築に成功した。
数ヵ月前、私はリヤドを訪れ、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子と会談した。彼は、シリアへの制裁解除に向けて全力を尽くすと約束した。私は、彼のまなざし、そして彼の国民のまなざしのなかに大いなる愛を見た。
その後、私は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領を訪れた。彼は14年にわたり、シリア国民に寄り添い、彼とその国家は数百万のシリア人を受け入れ、多くの負担を担ってくれた。
私は、シリアが自らの足で立とうとすることへの愛、好意、歓喜、そして万全の構えを見て取った。さらに、私は、(カタールの)タミーム・ビン・ハマド首長を訪れた。彼もまた、歴史に記される姿勢をもってシリア国民とともに耐え、解放の瞬間から、我々の傍らに寄り添ってくれている。
その後、私は(UAE)のムハンマド・ビン・ザーイド大統領を訪れた。彼はシリアの同胞のためにUAEの門戸をすぐさま開放し、シリアが復興するのに必要なことをする万全の構えを示してくれた。
最初に祝辞を寄せてくれたのは、バーレーンのハマド・ビン・イーサ国王であり、クウェートの兄弟ら、オマーンのスルターンだった。熱烈な歓迎と、喫緊の諸問題に対する王国(ヨルダン)の姿勢を示してくれたヨルダンのアブドゥッラー2世のことも忘れていない。
また、エジプトのアブドルファッターフ・スィースィー大統領のまなざしのなかにも、シリアの復興と再建への強い意志を見てとった。リビア、アルジェリア、モロッコ、スーダン、そしてイエメンの兄弟たち、そしてシリアとの関係回復への意欲を示してくれたイラクのムハンマド・シヤーア・スーダーニー首相も同様である。
さらには、マクロン大統領との会談が行われた。彼は早くからシリアへの制裁解除への意志を示してくれた。ドイツ、イタリア、スペインなどといったEU諸国もこれに歩調を合わせてくれた。英国もまた、愛するシリアに対する制裁を速やかに解除した。
国民の皆さん、諸君らの国への愛、そのための犠牲、そして新生シリアへの喜びと団結が、国際世論に対してきわめて大きな影響を及ぼしたのである。
制裁解除に向けた在外シリア人コミュニティの働きかけと貢献も、大きな成果をもたらした。シリア国民よ、内外の結束と統合、姉妹諸国との接近と善隣は、シリアにとっての力強い財産である。
我々は今日、その成果を現実として目の当たりにしている。国家間、国民間の真摯な兄弟愛や素朴な慈愛ほど美しいものはない。私は、シリアへの制裁解除を祝うだけではなく、我々の喜びは、この地域の国民どうしの真摯な兄弟愛、湧き上がる感情の復活のなかにあるのだ。
決断と方針の統合にアッラーは失望しない。ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子は約束を果たし、エルドアン大統領は偽りのない慈愛を示し、タミーム首長は誠実さを示し、ムハンマド・ビン・ザーイド大統領も情熱を示してくれた。すべての指導者たちは誠意を示してくれた。
そして、トランプ大統領がこの愛のすべてに応え、制裁解除の決断を下したのである。親愛なる国民の皆さん、我々の前途はまだ長い。だが今日、真剣な取り組みが始まった。それによって、現代シリアの復興が始まったのだ。進歩、繁栄、知識、労働に向かってともにシリアを築いていこう。
ここを起点として、我々は、シリアが投資環境の強化、経済法制の整備、そして国内外の資本が復興と包括的発展に実際に参入することを可能にするための措置を推し進めることに専心すると明言したい。
我々は、国内外のすべての同胞の投資家、アラブの姉妹諸国、トルコ、そして世界中の友人たちを歓迎する。我々は、あらゆる分野において提供されている機会を活かすよう呼びかける。
シリアは、平和と協働の地であると皆さんに誓約し、善意をもって差し伸べられたすべての手に誠実であり続ける。
シリアは今日から、もはや勢力争いの舞台とはならず、外国勢力の野心の踏み台ともならない。我々は、シリア分割を決して認めず、旧体制が用いてきた国民分断のナラティブが蘇ることを許さない。シリアはすべてのシリア人のものだ。
シリアは宗派、人種のいかんを問わず、すべてのシリア人のものだ。この祝福された地に暮らすすべての人々のものだ。共生こそが歴史を通じて得られた我々の遺産であり、我々を引き裂いてきた諸々の分断は、常に外部介入によるものだった。我々は今日、それらすべてを拒否する。
試練の時代が我々に教えてくれたことは、我々の力が我々の統合にあること、そして、復興の道のりが、結束と真摯な取り組みによってしか拓かれない、ということだ。
我々は殉教者たちと負傷者たちのことを決して忘れない。愛する者を失った人々の権利をなおざりにすることはなく、彼らは未来に向けたあらゆる歩みのなかに常にあり続ける。


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