バラック在トルコ米大使兼務シリア担当特使:「シャルア暫定大統領が包摂的な統治を推進し、西側諸国との関係構築を進めていることが、一部の過激派による暗殺の動機となり得る」(2025年6月10日)

トーマス・バラック在トルコ米大使兼務シリア担当特使は、アル=モニターのインタビューに応じ、アフマド・シャルア暫定大統領が包摂的な統治を推進し、西側諸国との関係構築を進めていることが、一部の過激派による暗殺の動機となり得ると懸念を示し、「取り巻く保護体制の構築を急ぐ必要がある」と述べた。

バッラク特使は以下の通り述べた。

シリアへの経済的支援が遅れれば遅れるほど、分裂した集団が「今こそ混乱を起こす好機だ」と動き出すだろう。
そうした敵対者が動き出す前に抑止する必要がある。
彼(シャルア暫定大統領)は、聡明で自信に満ち、集中力がある…。彼は優れた話し手で、そのポーカー・フェイスも効いている。
今日、我々とシャルア暫定大統領の利害は完全に一致していると確信している。
彼がイドリブ県で成し遂げたように、過激なイスラームではなく、穏健なイスラームを基礎とした包摂的で機能的な社会の構築を目指しているのだ。
(ドナルド・トランプ)大統領の意志を、官僚的な保留によって妨げさせてはならない。
彼は自らの判断で、思い切った決断を下した。絆創膏を一気にはがすようなものだった。これは顧問の助言ではない。トランプ大統領が自分らしく行った判断だ。そしてそれは見事だった。
制裁解除に条件はない。
我々は命令しない。条件も提示しない。国家建設もしない。我々はそれを過去にやって、うまくいかなかった。
イスラエルとシャルア暫定大統領が、現時点で直接対話していなくとも、軍事的に衝突することが双方にとって極めて愚かな選択であるという沈黙の了解を持っていることが我々の願いだ。
シリアが生き残る唯一の道は、国家の中で複数の非国家武装勢力が互いに戦い合うような状況を終わらせ、あらゆる少数派がそれぞれの文化・伝統・習慣を保持しつつ、シリア人として共存できる状態を作ることだ。
武装勢力の統合にはより深いアイデンティティの問題が根底にあるが、最終的には「制服の違い」に過ぎない。
(シリア人が)自分の国を自分で作りたいのなら、どうぞやってくれ。我々は、良い人材や良いアイデアが流入するのを阻んでいる制限を外すだけで…、それによって希望が満ち溢れるだろう。
たとえ水や電力の供給がまだ改善されていなくても、人々は発電機が建設されているのを見ることができる…。この段階では、たった一滴の希望が、どれだけの絶望にも勝る。

(C)青山弘之 All rights reserved.