シャーム自由人イスラーム運動のラビーブ・ナッハース報道官は『ハヤート』(8月10日付)とのインタビューに応じ、そのなかで同運動が所属するファトフ軍およびアレッポ・ファトフ軍作戦司令室によるアレッポ市一帯での戦闘の最終目的が「アレッポ市の包囲解除と…全土解放」にあるとしたうえで、同地での勝利が「ゲームのルールを変え…国際社会は政治プロセス、そしてそのなかでのアサドの役割を再検討することを余儀なくされるだろう」と強調した。
また、シャームの民のヌスラ戦線がアル=カーイダとの関係解消を宣言し、シャーム・ファトフ戦線に改称ついては、「遅きに失したが正しい方向に向けた前向きなステップであり、「シリア革命を軍事、政治の両面からかたち作ってきた様々な勢力が長らく求めてきたこと」だと高く評価した。
そのうえで「シャーム・ファトフ戦線は偉大な(シリア)国民の一部をなしており、アサド政権とその同盟者に対してもっとも激しい戦闘を行っている当事者だ。それゆで、彼らを愛国的な革命プロジェクトのなかに包摂することが、みなにとっての最優先事項にならねばならない」と付言し、シャーム・ファトフ戦線との共闘を主唱した。
なお、ヌスラ戦線最高指導者のアブー・ムハンマド・ジャウラーニー氏は以前、ジャズィーラ・チャンネルのインタビューで、ヌスラ戦線の主導的戦闘員は外国人で、その数はメンバーの3割程度を占めていると述べており、実際に幹部の多くはシリア人以外の外国人からなっている。
また、シャーム・ファトフ戦線は、シャーム自由人イスラーム運動などからなるファトフ軍に所属するとともに、同運動が参加するアレッポ・ファトフ軍作戦司令室と共闘関係にある。
一方、シャーム自由人イスラーム運動とシャーム・ファトフ戦線の違いに関して、ナッハース氏は、外国のアジェンダとの関係の有無、サラフィー・ジハード主義以外のイスラーム主義の潮流との関係の有無をあげたうえで、後者がアル=カーイダとの関係解消を組織面に限定すべきでないと主張し、「シリア革命のプロジェクト」に歩み寄るべきだとしつつ、「シャーム・シャーム戦線を含む多様な革命諸勢力どうしが接近し、革命に資する共通のヴィジョンに至ることが肝要」と述べ、シャーム・ファトフ戦線(ヌスラ戦線)を「革命勢力」とみなした。
AFP, August 9, 2016、AP, August 9, 2016、ARA News, August 9, 2016、Champress, August 9, 2016、al-Hayat, August 10, 2016、Iraqi News, August 9, 2016、Kull-na Shuraka’, August 9, 2016、al-Mada Press, August 9, 2016、Naharnet, August 9, 2016、NNA, August 9, 2016、Reuters, August 9, 2016、SANA, August 9, 2016、UPI, August 9, 2016などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.