アサド大統領は再選を受けてテレビ演説「今回の選挙は祝祭ではなく、革命だった…。国民は愛国心を再定義してくれた」(2021年5月28日)

アサド大統領は大統領選挙で再選されたことを受けて、シリア国民に向けてビデオ演説を行った。

演説の内容は以下の通り。

兄弟である市民、忠誠と帰属の意識に満ちた兄弟よ。
どんな国民投票においても、武器、言論、行動によって守られた投票であっても、憲法に基づく投票であっても、あなた方はいつも愛国心の意味について特別の定義を行ってきた。我々が経てきたどの段階においても、あなた方の定義は特別なメッセージを持っていた。友人であっても、敵であっても、このメッセージは、こうした段階における状況のもとで発せられ、その時々の課題に対応している。そして、あなた方が発する様々なメッセージは、戦時中であっても、一時たりとも修辞、知恵、語彙の明白さ、文章とそしてその行間における深遠な意味を欠くことはなかった。しかし、敵対者たちは、現実、自らの政策の失敗と敗北を否定し、自らの信条や道徳が地に墜ちたことを認めにという自ら政策の一環として、それを退け、拒否することに固執した。この数年にわたり、彼らは認知障害に陥ったようだ。自分の目で見ているが、頭で見ようとはしない。
この投票において、あなた方による愛国心の定義が内容を異にすることはなかった。だが、その方法が異なっていた。だから当然、結果や影響も異なったものとなるだろう。あなた方のメッセージは、彼らがあなた方の頭にめぐらせてきたあらゆる障壁と盾を打ち破るだろう。そして、あなた方の頭を、何年にもわたる冬眠状態から目覚めさせ、祖国の土地で何が起きているかを考えざるを得ない状態へと移すだろう。
あなた方が過去数週間に行ったことは、単なる記念のお祝いではないし、愛国的な感情の表明ではない。国民的義務に専念するということは、大統領選挙に参加することだが、実際に起きたことは、広範な拡がり、膨大な距離という点でそれを上回っていた。あなた方が行ったことは、様々な国籍、帰属をもった祖国の敵に対する前代未聞の抵抗という現象だった。彼らの傲慢さと偽りの誇りを打ち砕き、その手先や仲間の顔を殴打した。この抵抗は、祖国に対する誠実で深淵な忠誠心の最上級の表明によってなされた。それは、暗い部屋に座って、陰謀や計略を企て、我々の財産、声明、名声、尊厳を奪って成功を収めることを夢想する者たちにふさわしいメッセージを最強レベルで送るものだった。連中はまたしても、誤った評価と考慮、近視眼、そしてこの国民の真理、性格、堅固さへの理解のなさゆえに、子飼いたちとともに自らの運を無に帰するだろう。
あなた方は秤をひっくり返し、ゲーム盤を粉々に破壊した。あなた方は、自らの手で改めて、それを作り上げ、設置すること、そして兄弟と友人以外のパートナー以外に居場所がないことを、疑う余地がないかたちで明示した。
あなた方は、愛国心を再定義した。それは反逆が自発的に再定義されることを意味する。両者の違いは、いわゆる革命家(ثوار)の革命(ثورة)と、我々が目にしてきた雄牛たち(ثيران)の興奮(ثوران)の違いだ。名誉が身に沁みついている革命家と、飼い葉を与えられた雄牛(ثور)の違いだ。力と誇りを本分とする反乱者と卑しさと恥を好む雄牛の違いだ。創造主に跪く革命家とドルの前に跪く雄牛の違いだ。
あなた方は革命を定義した。一部の傭兵、そしてシリアのパスポートを所持しているにもかかわらず名誉を失った者たちによってその名を汚された革命を取り戻した。あなた方は革命の名声を取り戻し、それを再び開始した。だから、今回の出来事はお祝いなどでは決してない。あらゆる言葉が持つ比喩ではない真の意味での革命だった。テロ、反逆、道徳的退廃に対する革命。言葉、ペン、行動、武器による革命、名誉という名を冠し、他人に好きなところに連れて行ってもらえる乗馬のような状態に満足したすべての堕落者に対する革命。
兄弟よ、市民である男性、そして女性よ。
憲法が定める次期任期に国民に奉仕するため、国民は私を選んでくれた。それは大いなる名誉である。アイデンティティだけでなく、目標、施行、価値観、習慣といった点で国民に帰属することに勝る名誉はない。私に情熱と未来への信頼を与えてくれるものは、あなた方にある挑戦心だ。それがなければ、責任ある立場にある者が、国民規模の大きな脅威に立ち向かうことはできない。それがなければ、祖国が10年にわたる戦争を経て立ち上がることはできない。
あなた方が持つ完全なる力。節目ごとに明確に示されているもの。幾多の挑戦によってもたらされているもの。あなた方の意思がそれを行動と実践に返る。祖国に力を与え、勝利を可能とする強大なるエネルギーである。
私は、我々がこうした闘争心をもってすべての敵を打ち負かすことができると確信している。どれだけ多くの戦いに臨もうとも、事態がどれほど悪化しようと。この精神こそが、今後我々にとって必要なものだ。継続的行動、抵抗、不屈の精神に訴える段階であり、我々は改めて敵に対して、国民が自らの基本的な要求と生活を守るために闘うことで、祖国、そしてそれが象徴するすべてとの結びつきがますますますます強まることを証明すべきだ。この国民は常に、投票と大いなる試練によって、祖国が崇高なものとなり、それに勝るものがないことを証明してきた。
兄弟よ、愛する人々よ。
あらゆる都市、町、村で、行進、大衆が参加した集会などを通じて、自分なりの方法で祖国愛を表してくれたすべてのシリア市民に敬意を表したい。
自らの国への帰属心を表明し、国旗を掲げ、戦争において不屈の精神を示し、投票に臨んでくれたすべての個人、家族、部族に敬意を表したい。
国内の兄弟たちのメッセージに国外からのメッセージを統合してくれた全ての在外市民に敬意を表したい。距離や幾多の障害は、情熱をもって選挙に参加することを妨げることはなかった。圧力や暴力に晒されて投票できなかった人に、我々は言いたい。あなた方の声は何倍にもなって力強く届いている。投票箱を通じてではなく、その姿勢を通じて。敵にメッセージは伝わった。愛国的任務は達成された。
屈辱を受け入れない力強い国民として暮らしていこう。
不正に屈せず、そしてアッラー以外の何ものにもひれ伏さない力強い国民として生きていこう。
我々にとって、あなた方、そしてシリアが自由で、寛大で、力強くある限り。

SANA(5月28日付)が伝えた。

AFP, May 28, 2021、ANHA, May 28, 2021、al-Durar al-Shamiya, May 28, 2021、Reuters, May 28, 2021、SANA, May 28, 2021、SOHR, May 28, 2021などをもとに作成。

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