シリア軍総司令部が軍ヘリコプターのトルコへの領空侵犯および撃墜に関する声明を発出するなか、仏大統領がカタール外相との会談を行いアサド政権の「人道に対する罪」を懲罰する意向で合意(2013年9月17日)

Contents

反体制勢力の動き

第5師団化学兵器課の課長だったという離反士官のザーヒル・サーキト准将は、アサド政権が化学兵器をシリア人とイラク人のマフィアを経由して自由シリア軍に転売しようとしている、と述べた。

そのうえで、サーキト准将は、自由シリア軍のすべての部隊とジハード主義者に、化学兵器を購入しないよう呼びかけた。

クッルナー・シュラカー(9月17日付)が報じた。

**

シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長はイスタンブールでテレビ演説を行い、シリアの化学兵器廃棄に関して、国連憲章第7章に依拠した安保理決議を採択するよう国際社会に呼びかけた。

クッルナー・シュラカー(9月17日付)などが報じた。

**

クッルナー・シュラカー(9月18日付)によると、クルド最高委員会代表者会合が開催され、クルド人地域内のアラブ人、キリスト教徒などとの連絡調整などについて協議した。

会合には、シリア・クルド国民評議会代表者であるムスタファー・マシャーイフ氏、ムハンマド・サーリフ・アブドゥー氏、フアード・アリークー氏が出席しただけで、シリア・クルド民主党のムハンマド・イスマーイール氏、民主統一党のアースィヤー・アブドゥッラー氏、サイナム・ムハンマド氏、イルハーム・アフマド氏、アブドゥッサラーム・アフマド氏、アブドゥルカリーム・ウマル氏は欠席した。

**

シリア・クルド国民評議会を主導するシリア・クルド・イェキーティー党の政治局は声明を出し、ハサカ県ラアス・アイン市および同市周辺に対するシャームの民のヌスラ戦線とイラク・シャーム・イスラーム国の包囲・攻撃を非難し、シリア革命反体制勢力国民連立に対して、包囲解除のための責任を果たすよう求めた。

シリア政府の動き

シリア・アラブ・テレビ(9月17日付)は、シリア軍総司令部が軍ヘリコプターのトルコへの領空侵犯と撃墜に関する声明を出したと報じた。

同声明によると、領空侵犯したヘリコプターは、ラタキア県ブダーマ村に近いブーヌスィーヤ地方でトルコ国境を経由して潜入するテロリストを監視する偵察活動を行っていたが…、誤ってトルコ領空をわずかを侵犯、このことに気づいた直後にシリア領内に帰還しようとしたが、その際、トルコ軍戦闘機から直接攻撃を受け、シリア領内に墜落した」という。

また「トルコ側の対応は極めて迅速であったが、帰還途中だったヘリコプターは、いかなる戦闘任務にもついていなかった。このことは、シリアに対して緊張を高めようとしているエルドアン政府の真意を示すものである」と付言した。

**

ワーイル・ハルキー首相は、紛争で被災した一部地域の復興と避難住民帰宅のための今年度(2013年度)計画を実施するため、300億シリア・ポンド(1億5000万米ドル)を投入することを明らかにした。

ハルキー首相によると、前年度(2012年度)の復興資金は、150億シリア・ポンド(7500万米ドル)だったという。

SANA(9月17日付)が報じた。

国内の暴力

イドリブ県では、リヤーブ・ニュース(9月17日付)によると、トルコ国境に面したバーブ・ハワー国境通行所で、爆弾が仕掛けられた車が爆発し、少なくとも10人が負傷し、トルコ領内に搬送された。

複数の活動家によると、爆発は「自由シリア軍」が管理する国境通行所の入り口、トルコ国境から数百メートルの場所にあるサラフィー主義者の検問所で発生したという。

またシリア人権監視団によると、アルバイーン山一帯で、軍と反体制武装集団が交戦、またサラーキブ市を軍が空爆した。

一方、SANA(9月17日付)によると、アブー・ズフール航空基地周辺、サルマーニーや村、アルバイーン山周辺、マンティム村、ビカフルーン村、カフルラーター市、カフルルーマー村、マアッラト・ヌウマーン市、ウンム・ジャリーン村で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

他方、クッルナー・シュラカー(9月17日付)は、ジスル・シュグール市周辺の村落を空爆していたシリア軍ヘリコプターを「自由シリア軍」が撃墜したと報じた。

また「自由シリア軍」がアルバイーン山解放作戦を開始し、シリア軍のT72戦車などを破壊し、司令官の一人(大佐)を殺害した、と報じた。

**

ダマスカス郊外県では、前日のSANAの報道に続いて、シリア人権監視団が、シャブアー町が軍によって完全制圧されたと発表した。

同監視団によると、軍によるシャブアー町の完全制圧は、ヒズブッラーの戦闘員の支援のもとに行われ、反体制武装集団との交戦では戦闘員11人が死亡したという。

また同監視団によると、ダイル・アサーフィール市への軍の砲撃で、子供1人を含む4人が死亡した。

一方、SANA(9月17日付)によると、軍によって制圧されたシャブアー町で、ダマスカス国際空港街道に沿って反体制武装集団が通行する車輌を狙撃するために作った全長500メートルのトンネルが発見された。

またハラスター市、ドゥーマー市郊外、ダイル・サルマーン市、フジャイラ村、ズィヤービーヤ町、フサイニーヤ町、ルハイバ市、ヤブルード市、ダーライヤー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

他方、ダマスカス郊外県シャブアー町の武装集団の広報調整官は、クッルナー・シュラカー(9月17日付)に対して、同市がまだ陥落していないと述べた。

**

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、バルザ区、カーブーン区で、軍と反体制武装集団が交戦し、軍が砲撃を行った。

一方、SANA(9月17日付)によると、バルザ区、カーブーン区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアマーラ地区、カッサーア地区、アッバースィーイーン地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾複数発が着弾し、市民5人が死亡、子供2人を含む数十人が負傷した。

**

ヒムス県では、SANA(9月17日付)によると、レバノン領からタッルカラフ市郊外に潜入しようとした反体制武装集団を軍が撃退した。

またヒムス市バーブ・スィバーア地区、バーブ・トゥルクマーン地区に潜入しようとした反体制武装集団も、軍が撃退した。

このほか、ヒムス市クスール地区、バーブ・フード地区、カラービース地区、ダール・カビーラ村、ガントゥー市、バイト・ハッバハーン市、ラスタン市、ウンム・リーシュ村、ラッフーム村、ウンム・ハワーディース市、ヒブラ市、ムフターリーヤ村、シンダーヒーヤ村、ティールマアッラ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ダイル・ザウル県では、SANA(9月17日付)によると、ダイル・ザウル市ブアージーン地区、アブド村、ブーライル村、ムーハサン市で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

アレッポ県では、SANA(9月17日付)によると、アターリブ市、アウラム・スグラー村、ワディーヒー村で、トルコから武器を運び込もうとしていた反体制武装集団の車輌を軍が攻撃・破壊した。

またクワイリス村、アルバイド村、ラスム・アッブード村、マンスーラ村西部、アレッポ・ラッカ街道で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

アレッポ市では、スワイカ地区、ザフラーウィー市場、裁判所、スライマーン・ハラビー地区、ジュダイダ地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、外国人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ハサカ県では、SANA(9月17日付)によると、タッル・アウダ村、ラヒーヤト・ザーヒル村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

NNA(9月17日付)は、ベイルート北部のハーラート村(レバノン山地県ジュバイル郡)で、爆弾を仕掛けようしていたシリア人が誤爆し、死亡したと報じた。

諸外国の動き

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、対シリア国境でトルコ軍戦闘機がシリア軍ヘリコプターを撃墜したことに関して記者会見で「トルコ軍はしなければならないことをしたまでだ」と述べた。

またエルドアン首相は「トルコはシリアとの軍事的対決に関する交戦規則を変更した。トルコ軍兵士は特定の地域に向かうことを許されている…。新規則は、国境の侵犯が行われたときなどに適用される」と付言した。

**

トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、シリア革命反体制勢力国民連立暫定政府首班のアフマド・トゥウマ氏と会談した。

連立が出した声明によると、両者は、シリア・トルコ間の国境検問所の管理強化、シリア国内の避難民の住居確保を行う必要がある点で一致した。

**

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、モスクワを訪問したフランスのローラン・ファビウス外務大臣と会談し、シリア情勢への対応について協議した。

ラブロフ外務大臣は「最終目標がシリアの紛争の政治的正常化に到達することという点で合意した」と述べたが、『ハヤート』(9月18日付)によると、化学兵器廃棄問題への具体的な対応をめぐって歩み寄りは見られなかった。

一方、ファビウス外務大臣は、シリアでの化学兵器使用に関する国連調査団の報告書について「シリア政府が化学兵器を使用したことが明らかになった」と述べ、「西側諸国による圧力が大きな役割を果たした」と自賛しつつ、「地域への化学兵器拡散を阻止するための早急な措置が必要だ」と述べた。

**

フランスのフランソワ・オランド大統領は、カタールのハーリド・アティーヤ外務大臣とパリで会談し、シリア情勢について協議し、アサド政権の人道に対する罪を懲罰する点で一致した。

『ハヤート』(9月18日付)が報じた。

**

ジェニファー・サキ米国務省報道官は、シリア情勢をめぐるロシアの姿勢に関して「流れに逆らって泳いでいる」と非難した。

**

英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、シリアでの化学兵器使用に関する国連調査団の報告書の内容に関して「広範に化学兵器が使用されたことを明らかにしている客観的なこの報告書を歓迎する…。シリアの政権のみが攻撃の責任を追及されることは極めて明白だ」とする声明を出した。

またヘイグ外務大臣は、シリアでの化学兵器廃棄を支援するため専門家を派遣する用意があると付言した。

**

中国外務省報道官はシリアでの化学兵器使用に関する国連調査団の報告書の内容に関して「報告書を充分そして真剣に検討する」と述べた。

**

キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長はシリアでの化学兵器使用に関する国連調査団の報告書の内容に関して声明を出し「サリン・ガスを装填した地対地ミサイルが使用されたと詳述している報告書は…犯罪者を特定することの助けになるだろう」と指摘、改めて化学兵器の使用を強く非難した。

**

イスラエルのマイケル・オレン国連代表大使は、シリアでの化学兵器使用に関する国連調査団の報告書の内容に関して『ワシントン・ポスト』(9月17日付)に「アル=カーイダと同盟を結んでいる反体制勢力にアサドが敗北することの方が、アサドがイランと同盟することよりもましだ」と述べた。

また「アサドを退任させれば、イラン、ヒズブッラーの同盟が弱まるだろう。イスラエルにとって最大の脅威は、テヘラン、ダマスカス、そしてベイルートに至る戦略的アーチだ。我々はアサド政権がこのアーチの要石をなしていると見ている」と付言した。

**

国連のバレリー・アモス人道問題担当事務次長は、シリア情勢に関して、国外避難民200万人以上、国内避難民400万人以上の合わせて約700万人が人道支援を必要としていると述べた。

また、シリアへの国連の人道支援に関して、2013年だけで44億米ドルが必要だが、現時点で18億4000万米ドルしか資金を確保できていない、と付言した。

**

国連の潘基文事務総長は記者会見で、「シリアの化学兵器問題への対処方法に関する枠組み合意に米露がいたると楽観している」と述べた。

**

ヒューマン・ライツ・ウォッチのリチャード・ディッカー国際司法プログラム局長は「化学兵器を封印するのみで、それを使用した責任者を訴追しないというのでは、犠牲者に対する侮辱だ」と述べ、シリアの化学兵器廃棄に関する国連安保理決議に、国際刑事裁判所への付託を明記すべきだと主張した。

AFP, September 17, 2013、al-Hayat, September 18, 2013、HRW.org, September 17, 2013、Kull-na Shuraka’, September
17, 2013, September 18, 2013、Kurdonline, September 17, 2013、Naharnet, September
17, 2013、NNA, September 17, 2013、Reuters, September 17, 2013、Rihab News,
September 17, 2013、SANA, September 17, 2013、UPI, September 17, 2013、The
Washington Post, September 17, 2013などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.