シリア・アラブ共和国大統領府によると、アフマド・シャルア暫定大統領は、沿岸地域での地元武装グループ(「前政権の残党」)による治安紊乱と、内務省総合治安局部隊、国防省部隊による介入について国民に向けてテレビ演説を行った。
演説の内容は以下の通り。
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
万世の主であるアッラーに称賛を捧げ、誠実なる使徒とその一族、そしてすべての教友たちに祝福と平安があらんことを。
崩壊した体制の一部残党は、新たなシリアを試そうとしている。彼らは新たなシリアについてまったくの無知だが、今まさに改めて知ることとなった。シリアが、東から西、北から南にいたるまで一つに統合された国であることを目にしている。そのなかの一つの県がわずかに傷つけられただけでも、他のすべての県が立ち上がり、その誇りと栄光のために団結するのである。
今日のシリアに、権力と民衆の隔たりはない。シリアとはすべての人々のことであり、これを守り支援することは、すべての者の任務である。そのことが昨夜、まさに具現化された。このような国民と精神を持つ国に、恐れるべきことなど何もない。
旧体制の残党どもよ、解放の戦いにおいて、我々はお前たちと戦った。だがそれは、お前たちの命を惜しみながらの戦いであった。一方で、お前たちは我々の死を望み、執着した。我々は、お前たちが破壊したこの国の再建を願い、誰の血も無益に流すことを望んではいない。
我々は、戦いにおいて誇りを胸に抱き、正々堂々と戦う者たちである。しかし、お前たちは名誉なく戦う者たちに過ぎない。お前たちの所業は、今に始まったことではなく、幾十年もの間、シリアの血を容赦なく流し続けてきた。今もなお、その悪しき道を歩み続けている。我々は、赦しの精神をもって対処し、こうした悲劇的な状況に陥ることを避けようと努めてきた。だが、お前たちは、我々の言葉の意味すら理解していない。とはいえ、使徒の務めとは、ただ真実を伝えることにあるのみである。
お前たちは、シリアを守り、そのために尽力する者たちを殺害し、病院を襲撃し、平穏な市民を恐怖に陥れた。この忌まわしき行為は、すべてのシリア国民に対する攻撃に他ならず、許されざる大罪である。そして今、お前たちは、到底耐えられぬ報復を受けることとなった。もはや猶予はない。武器を捨て、自らを差し出せ。それが最後の機会である。
シリアの人々よ、世界は皆さんが祖国をどれほど愛し、どれほど深くその存在に根ざしているかを目の当たりにした。それこそが、あなた方の誇り高き血統にふさわしい姿である。この愛なくして国家は築かれない。私は、軍と治安部隊が、民間人の保護と安全の確保に尽力し、旧体制の残党を迅速に追撃したことを称えたい。しかし、彼らには警告したい。誰であれ、行き過ぎた報復や過剰な対応を決して許してはならない。それを防ぐことこそが、我々に課せられた責務である。なぜなら、我々が敵と一線を画すのは、まさにこの原則を守ることにあるからだ。我々が倫理を捨てた瞬間、敵と同じ存在に成り下がる。旧体制の残党は、挑発によって我々の理性を揺るがし、暴走させようと企んでいる。だが、我々はその罠に落ちることはない。
アッラーのお許しのもと、皆に思い出してもらいたい。アッラーは捕虜の地位を孤児や貧者と同等に定め、こう述べられている。
「またかれらは、かれを敬愛するために、貧者と孤児と捕虜に食物を与える」。捕虜は慈悲と憐れみを受けるべき存在であり、虐待や暴力にさらされることは許されない。それはアッラーの命令に反するだけでなく、この国の法にも背くものである。
最後に、我々は、いまだに過ちと圧制にしがみつく旧体制の残党を追い続ける。国民に対して罪を犯した者、治安と社会の平穏を脅かす者を、我々は公正な法廷に引き渡す。そして、武器の管理は、国家の手に統一される。無秩序な武装は、もはやシリアに存在し得ない。
武器を持たぬ民間人を攻撃し、一部の者の罪を理由に他の者を罰するような行為は、厳しく裁かれる。我々の同胞が住む沿岸地域の戦闘地帯も、我々の責任の一部であり、彼らを旧体制の残党の悪行から守ることは、我々の義務である。我々が受けた裏切りがどれほどのものであれ、国家は社会の平和の保証者であり、それを決して揺るがせはしない。
私は、戦闘地域に入ったすべての部隊に対し、軍および治安部門の指揮官に完全に従い、直ちに戦闘地域を整理し、発生した逸脱行為を抑制することを求める。これによって、軍と治安部隊がその任務を完全に遂行できるようになる。
シリアは前へと進み続け、決して後退することはない。どうか安心してほしい。我々の祖国は、アッラーの御加護のもとにある。
殉教者たちに哀悼の意を捧げるとともに、この聖なる月において、彼らがアッラーに受け入れられるよう願う。
万世界の主であるアッラーに称賛を捧げる。そして皆に平安と慈悲、そしてアッラーの祝福があらんことを。
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