シャルア暫定大統領が米『タイム』誌の「世界でもっとも影響力のある100人」に選ばれる:フォード前駐シリア米大使「シャルアが一時的なイスラーム過激派なのか、現実主義的な政治家なのか、いまだ判断しかねる」(2025年4月16日)

『タイム』誌は、今年の「世界でもっとも影響力のある100人」にアフマド・シャルア暫定大統領を選んだ。

シャルア暫定大統領が選ばれたことに関して、ロバート・フォード前駐シリア米大使は以下の通り解説を寄せている。

昨年12月、長年にわたって強力な武装勢力であるシャーム解放機構(国際的テロ組織に分類されている)を築き上げてきたアフマド・シャルアと彼の反体制派同盟は、シリアのバッシャール・アサドによる残虐な政府を打倒した。
かつてはアル=カーイダやダーイシュ(イスラーム国)と手を結んでいたが、静かな語り口のシャルアは後にこれらの組織とも激しく戦い、戦闘員の忠誠を得ていった。最近では、他のシリア反体制派と時に銃口を突きつけながらも同盟を組み、トルコの支援も取りつけた。さらに、シリア北西部において、宗教的に保守的な「準国家」を樹立し、効果的な統治を行うとともに、少数派に対しても安心感を与えるような呼びかけを行った。アサドを打倒するには、軍事的指導者としてだけでなく、政治的指導者としても台頭する必要があることを、野心的なシャルアは理解していた。
現在、全シリアの暫定大統領となったシャルアは、かつて自身が率いた武装勢力の強硬派と、アサド退陣に安堵するリベラルなシリア国民との間でバランスを取っている。観察者たちは、シャルアが一時的な政治的利益のために穏健派を装っているイスラーム過激派なのか、それとも権力掌握のために過激派を利用した現実主義的な政治家なのか、いまだ判断しかねている。

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