反シリア・親ハリーリーのレバノン軍団のジャアジャア代表が、親シリア・ヒズブッラーの自由国民潮流代表のアウン元司令官の大統領選挙出馬を支持し、親シリア・ヒズブッラーのマラダ潮流代表のフランジーヤ議員と反シリアのハリーリー元首相を牽制(2016年1月18日)

レバノン軍団のサミール・ジャアジャア代表はマアラーブ市(レバノン山地県キスラワーン郡)で自由国民潮流代表で国民議会議員のミシェル・アウン元国軍司令官と会談し、2015年5月半ばのミシェル・スライマーン大統領の任期終了後不在となったままの大統領の候補の選定について協議した。

Naharnet, January 18, 2016

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会談後、ジャアジャア代表はアウン元司令官と共同記者会見を開き、アウン元司令官を次期大統領候補として支持すると発表、また自らが属す国民議会内の会派(ブロック)連合である3月14日勢力にアウン元司令官への支持を呼びかけた。

ジャアジャア代表はまた、レバノン軍団と自由国民潮流が、レバノンへの信仰、ターイフ合意、憲法を遵守することを確認したと述べるとともに、国家機関の強化、軍支援、レバノンの国益に沿った独自の外交路線、アラブ諸国をはじめとする国際社会との政治、安全保障面での協力を確認したと明言した。

そのうえで、ジャアジャア代表は、イスラエルを敵国とみなすこと、そしてレバノン・シリア国境の管理強化を通じた武器、戦闘員の移動の抑止をめざすと強調した。

内政においては、2013年半ばに任期を終了し暫定的に任期が延長されている国民議会の占拠に向けた選挙法改正をめざすと述べた。

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ジャアジャア代表が指導するレバノン軍団は、サアド・ハリーリー元首相が率いるムスタクバル潮流が主導する3月14日勢力に属す一方、アウン元司令官が率いる自由国民潮流、そして同組織を中心とする国民議会内会派の変革改革ブロックは、ナビーフ・ビッリー国民議会議長が代表を務めるアマル運動、そしてヒズブッラーとともに会派連合の3月8日勢力をなし、2005年以降、3月14日勢力に対抗してきた。

ジャアジャア代表は、スライマーン大統領の任期終了以降、大統領への就任の意思を示し、3月14日勢力の主要な勢力はこれを支持し、3月8日勢力の後援を受けるアウン元司令官に対抗してきた。

レバノンの大統領は任期が6年で、国民議会が選出することになっている。

現行憲法では、大統領の選出には国民議会議員の3分の2以上の賛成が必要で、3分の2以上の賛成が得られない場合、2回目の投票を行い、過半数の賛成が得られれば、大統領に選出されることになっている。

スライマーン大統領の任期終了に伴い、国民議会は第1回目の投票を実施したが、ジャアジャア代表、アウン元司令官いずれも過半数の票を得ることはできなかった。

その後、国民議会では2016年1月7日までに大統領選出のための臨時会が34回にわたって招集されたが、3月8日勢力の議員らの欠席により定足数に達せず、次回臨時会選挙は2月8日に予定されている。

大統領選挙をめぐる膠着状態は、昨年末、3月14日勢力を主導するムスタクバル潮流代表のサアド・ハリーリー元首相が、3月8日勢力のスライマーン・フランジーヤ議員(マラダ潮流)を大統領候補として支持するとの姿勢を示したのを受け、変化の兆しが見られるようになっていた。

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一方、12月にハリーリー元首相の支持を得ていたフランジーヤ議員は、マロン派のビシャーラ・ラーイー総大主教と会談した。

会談後、フランジーヤ議員はツイッターを通じて、「私は依然として大統領候補であり続ける」とコメントした。

Naharnet, January 18, 2016

Naharnet, January 18, 2016

AFP, January 18, 2016、AP, January 18, 2016、ARA News, January 18, 2016、Champress, January 18, 2016、al-Hayat, January 19, 2016、Iraqi News, January 18, 2016、Kull-na Shuraka’, January 18, 2016、al-Mada Press, January 18, 2016、Naharnet, January 18, 2016、NNA, January 18, 2016、Reuters, January 18, 2016、SANA, January 18, 2016、UPI, January 18, 2016などをもとに作成。

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