バラク・オバマ米大統領は訪問先のハノーバー(ドイツ)で演説、そのなかでシリア情勢に関してシリア領内に米軍250人を増派すると発表した。
オバマ大統領は演説のなかで「ISIL(ダーイシュ(イスラーム国)と戦うイラクの部隊への追加支援に合意したのと同様、私はシリアでISILと戦う地元の武装勢力に対して米国がさらなる支援をすることを決定した。小規模ではあるが米特殊部隊がシリア領内にすでにおり、その特殊技能は、地元の武装勢力が主要地域からISILを掃討するうえで重要な役割を果たしてきた。これまでの戦果を踏まえ、私はシリアに米国の人員250人を追加で派遣することに同意した。そのなかには特殊部隊も含まれている。しかし、彼らは地上での戦闘を指揮することはなく、本質的には教練を施し、ISILを押し返そうとしている地元の武装勢力を支援する」と述べた。
一方、シリア国内での紛争については「我々はシリアの内戦を終わらせるための外交努力を放棄することはない。なせなら、シリア国民の苦しみは終わらねばならず、それには実効的な政治移行が必要だからだ」と述べた。
なお『ハヤート』(4月26日付)によると、オバマ政権はこれまでに米軍将兵約50人をすでにシリアに派遣し、西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の支援などを行っている。
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これに対して、シリア民主軍のタラール・スィールー報道官は、米軍からこの増派については連絡を受けていないとしつつ、オバマ米大統領の発言に歓迎の意を示し、さらなる部隊の派遣を求めた。
一方、イラン外務省報道官は、シリアへの部隊派遣に関して「シリア政府との調整を欠いた軍事介入は危機をさらに複雑にする。シリア政府の同意を得ていないいかなる軍事介入も危機解決には資さない」と批判した。
AFP, April 25, 2016、AP, April 25, 2016、ARA News, April 25, 2016、Champress, April 25, 2016、al-Hayat, April 26, 2016、Iraqi News, April 25, 2016、Kull-na Shuraka’, April 25, 2016、al-Mada Press, April 25, 2016、Naharnet, April 25, 2016、NNA, April 25, 2016、Reuters, April 25, 2016、SANA, April 25, 2016、UPI, April 25, 2016などをもとに作成。
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