米英仏は、ヌスラ戦線と共闘して停戦を無視するシャーム自由人イスラーム運動とイスラーム軍を国連安保理のテロ制裁リストに追加記載するよう求めるロシアの要請を却下(2016年5月10日)

複数の外交筋によると、ロシアが、国連安保理のアル=カーイダおよびターリバーン制裁委員会が定める制裁対象リストにシャーム自由人イスラーム運動とイスラーム軍を追加記載することを要請したが、米国、イギリス、フランス、ウクライナの4カ国がこれを却下した。

シャーム自由人イスラーム運動は、アル=カーイダのメンバーらが結成した武装集団だが、アル=カーイダとの関係を否定している。しかし、イドリブ県、アレッポ県、ダマスカス郊外県など各地でシリアのアル=カーイダと目されるシャームの民のヌスラ戦線と共闘しており、最近では、アレッポ市南部郊外でヌスラ戦線などとともに新生ファトフ軍を指導し、シリア政府支配地域への攻勢を続けている。

一方、イスラーム軍は、アル=カーイダ系の組織ではないが、シャーム自由人イスラーム運動とともに、シリアのアル=カーイダと目されるシャームの民のヌスラ戦線と共闘している。

両者は、リヤド最高交渉委員会に参加していたが、ジュネーブ3会議第3ラウンドにおいて、委員会を脱会し、米国・ロシアによる敵対行為停止合意(2月27日)を破棄、その後のシリア軍による「講和規定」適用や米国・ロシアによる停戦合意を無視して、戦闘を続けている。

ロシアによる提案を拒否した米国は、国連代表部報道官を通じて、停戦を無視するシャーム自由人イスラーム運動とイスラーム軍が、「停戦に参加している…。両者をブラックリストに記載すると停戦に悪影響を及ぼす」と述べた。

また英国の国連代表部報道官は、シャーム自由人イスラーム運動とイスラーム軍が「イスラーム過激派だが、アル=カーイダやダーイシュ(イスラーム国)との関係を拒否している…。両組織の役割は、政治的解決を拒否するヌスラ戦線、ダーイシュとは違う…。両組織を孤立させれば、その過激派をもたらし、政治的解決が遠のく」と述べ、ロシアの提案を拒否した理由を正当化した。

AFP(5月11日付)などが伝えた。

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一方、SANA(5月11日付)によると、バッシャール・ジャアファリー国連シリア代表は、ロシアの要請が却下されたことに対して「国連憲章や国際法の判断への暗殺」と批判、「危機を長引かせようとする当事者たちに…薄っぺらな名目によって内政干渉をすることを止めるよう言いたい」と表明した。

AFP, May 11, 2016、AP, May 11, 2016、ARA News, May 11, 2016、Champress, May 11, 2016、al-Hayat, May 12, 2016、Iraqi News, May 11, 2016、Kull-na Shuraka’, May 11, 2016、al-Mada Press, May 11, 2016、Naharnet, May 11, 2016、NNA, May 11, 2016、Reuters, May 11, 2016、SANA, May 11, 2016、UPI, May 11, 2016などをもとに作成。

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