ロシア大統領府(クレムリン)は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、2015年11月のトルコ・シリア国境地帯でのトルコ軍戦闘機によるロシア軍戦闘機撃墜事件に関して、ヴラジミール・プーチン大統領に正式に謝罪を行ったと発表した。
この撃墜事件では、ロシア軍パイロット1人が墜落後にシリアの反体制武装集団に殺害され、これを機にロシア、トルコ両政府の関係は悪化していた。
トルコ側による謝罪は、ロシア政府が、両国の関係改善の前提条件として、賠償金支払い、事件関係者の裁判を長らく要求してきたもの。
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官によると、エルドアン大統領は謝罪文のなかで、「トルコはロシアとの関係正常化のために必要なすべてを行う用意がある」と表明、また殺害されたパイロットの遺族に弔意を示したという。
またロシア大統領府がインターネットを通じてその一部を公開した謝罪文には、トルコがロシアを友好国、戦略的パートナーとみなしており、「ロシア軍戦闘機を撃墜する意思を持ったことは一度もなかった」と明言、殺害されたパイロットの遺体をシリアの反体制武装集団から取り戻すためにトルコ側は危険を冒し、多大な努力を行ったと釈明した。
そのうえで「アンカラは、トルコ・ロシア関係にふさわしいレベルでこうした措置を実施した。私(エルドアン大統領)はここで改めて深い哀悼の意を示し、謝罪すると言いたい」と記されていた。
これに関連して、ロイター通信(6月27日付)は、トルコ高官の話として、ロシア軍戦闘機墜落後にパイロットを殺害したとされる男性1人の裁判が行われると伝えた。
この男性は2015年11月当時、トルコの支援を受けたトルクメン人(トルコ系シリア人)武装集団に加わり、戦闘を行っていたアルパルサーン・ジェリク容疑者。
2016年3月にイズミル市でトルコ当局に逮捕されていた。
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なお、『ハヤート』(6月28日付)は、ロシアの複数の消息筋の話として、ロシア政府は最近になってトルコ外務省に近い使節団の訪問を受け、2015年末のトルコ軍によるシリア・トルコ国境地帯でのロシア軍戦闘機撃墜事件後の両国の対立解消の仕組みについて議論をおこなっていた、と伝えた。
また、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、トルコ側が「テロリスト」のシリア領内への進入を阻止するためにシリア・トルコ国境を封鎖する必要があると強調しつつ、近く開催予定の黒海経済協力機構(BSEC)にトルコのメヴリュト・チャヴシュオール外務大臣を招待する意向を表明していた。
AFP, June 27, 2016、AP, June 27, 2016、ARA News, June 27, 2016、Champress, June 27, 2016、al-Hayat, June 28, 2016、Iraqi News, June 27, 2016、Kull-na Shuraka’, June 27, 2016、al-Mada Press, June 27, 2016、Naharnet, June 27, 2016、NNA, June 27, 2016、Reuters, June 27, 2016、SANA, June 27, 2016、UPI, June 27, 2016などをもとに作成。
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