シャーム解放機構がイドリブ県で「勧善懲悪委員会」の活動を再開(2020年5月11日)

シャーム・ネット(5月11日付)は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構に所属する宗教警察の「サワーイド・ハイル」(善なる腕)のメンバーが、イドリブ市内で活動を本格的に再開したと伝えた。

活動を再開したメンバーは「ファラーフ(繁栄)・センター」を名乗り、シャーム解放機構の治安部隊の全面支援を受けて、市場、市街地、理髪店、水タバコ屋、婦人服店などで監視・取り締まり活動を行っているという。

**

シリア人権監視団が入手した活動項目にかかる文書のコピーには、ファッラーフ・センターが以下のような行為の監視にあたることが列記されているという。

1. レストラン、オフィスなどでの男女の同席を阻止する。
2. 不浄な女性が店舗内で店主との一緒にいることを阻止する。
3. 男性による婦人服の販売を阻止する。
4. 式場や遊技場を監視し、禁止行為を阻止する。
5. 街、店舗、レストラン内で水タバコを吸い歓談するこを阻止する。
6. 猥褻な刈り上げの禁止と理髪師への厳罰。
7. ハラスメント、軽率な嫌がらせ、学校やオフィス前での待ち伏せを禁止する。
8. 店舗などでの禁止行為や写真・絵を禁止する。
9. 教育機関での男女生徒の同席を禁止する。

**

なお、「勧善懲悪委員会」とも称されたサワーイド・ハイルは、サウジアラビア人やシリア人の男女から構成され、2017年半ば頃から活動を開始した。

だが、たびたび住民の反発に遭っていた。

2017年6月には、イドリブ市内の市場でサワーイド・ハイルの女性説教師が行っていた「説教」を少女たちが拒むと、シャーム解放機構が少女たちを戦闘員として徴用するとしたうえで、彼女らを侮辱、逮捕、また説教師らを救済すると銘打って、彼女らにシャリーア法廷で処罰を与えることを求めるデモを組織した。

2018年2月には、サワーイド・ハイルのメンバーがイドリブ市内にあるピタゴラス専門学校に、男女が同席していたとして強制的に立ち入り、教員の1人に暴行を加え、経営者にシャリーアへの違反があったことを認める文書に署名を強要した。

サワーイド・ハイルはまた、市内のウルーバ女子学校にも同様の理由で強制的に立ち入り、学校を封鎖した。

これに対して、閉鎖を不服とする教員や女子生徒が、学校前で拒否する抗議デモを行ったが、シャーム解放機構が実弾を使用してこれを強制排除、その際に住民1人が負傷した。

また、病院や医療機関への行き過ぎた介入に対しても反発が高まり、医師、薬剤師、医療機関従事者が、イドリブ市以内の医療機関へのサワーイド・ハイルの立ち入りを拒否する声明を出していた。

AFP, May 11, 2020、ANHA, May 11, 2020、AP, May 11, 2020、al-Durar al-Shamiya, May 11, 2020、Reuters, May 11, 2020、SANA, May 11, 2020、SNN, May 11, 2020、SOHR, May 11, 2020、UPI, May 11, 2020などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.