2014年4月9日のシリア情勢:国内の暴力

アレッポ県では、シリア赤新月社のハーリド・アラクスースィー氏(人道支援物資配給担当局長)はAFP(4月9日付)に対し、「昨日(4月8日)、UNHCRのチームとの協力のもと、ジスル・ハッジ通行所を経由して支援物資の搬入を実現した」と述べ、反体制武装集団が占拠するアレッポ市東部に対して人道支援が行われたことを明らかにした。

アラクスースィー局長によると、人道支援物資の搬入は、軍および反体制武装集団双方の発砲停止合意を受けて行われたという。

同局長によると、アレッポ市東部への人道支援は、2013年6月のアレッポ中央刑務所方面からの物資搬入以来2度目で、ジスル・ハッジ経由での搬入は初めてだという。

ジスル・ハッジを経由した人道支援物資搬入は、通行所の規模が小さいために、小型車輌が270回往復して行われ、食糧、調理器具、医薬品、毛布などが搬入され、UNHCRのチームやボランティア活動家によって配布されたという。

またシリア人権監視団によると、アレッポ市東部のジャムイーヤト・ハルフィーイーン地区、ザフラー協会地区で軍とシャームの民のヌスラ戦線、ムジャーヒディーン軍、イスラーム戦線などからなる反体制武装集団が交戦した。

Kull-na Shuraka', April 9, 2014

Kull-na Shuraka’, April 9, 201409

アレッポ・メディア・センターによると、この戦闘で、「革命家」は同地区の一部を制圧し、軍兵士および「シャッビーハ」多数を捕捉、空軍情報部があるダウワール・マーリーヤ方面に進軍しているという。

軍はまた、アレッポ市カラージュ・ハジャズ通行所(ブスターン・カスル地区・マシャーリカ地区間)で反体制武装集団と交戦する一方、マーリフ村を砲撃した。

一方、SANA(4月9日付)によると、アレッポ中央刑務所周辺、シャイフ・ナッジャール市工業団地地区、ハーン・アサル村、フマイマート村、アレッポ市ラーシディーン地区、ジャムイーヤ・ハルフィーイーン地区、ジュダイダ地区、ライラムーン地区、ブアイディーン村、アルバイド村、クワイリス村、ダーラト・イッザ市、カブターン・ジャバル村、ハーン・トゥーマーン村、アウラム・クブラー町、シュワイフナ村、マンスーラ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ダマスカス郊外県では、SANA(4月9日付)によると、軍がランクース市を制圧し、安と安定を回復するとともに、同市周辺で、シャームの民のヌスラ戦線などからなる反体制武装集団の「残党」の追撃を続けた。

『ハヤート』(4月10日付)によると、これに関して、シャームの民のヌスラ戦線のアブドゥッラー・アッザーム・シャーミー報道官は、ランクース市に同戦線が駐留しておらず、同市侵攻には価値がないとしたうえで「(軍が)制圧した(ランクース市郊外の)監視塔も重要ではなく、政府は「偽りの勝利」を鼓舞しようとしている」と述べた。

しかし、ヌスラ戦線はツイッターを通じて、ランクース市での戦闘で前線司令官のアブー・タルハ・バグダーディー氏が死亡したと発表した。

また、反体制組織のカラムーン報道機関は声明を出し、ランクース市陥落を否定した。

さらにシリア人権監視団は、ランクース市内および同市周辺で、軍、国防隊、ヒズブッラー戦闘員がシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団が依然として戦闘を続ける一方、軍が同市を砲撃していると発表した。

一方、シリア人権監視団によると、カラムーン地方、ムライハ市郊外、東グータ地方での軍の砲撃や、軍、国防隊、ヒズブッラー戦闘員との戦闘で、ジハード主義武装集団戦闘員28人が死亡したという。

また、SANAによると、軍はハルブーン市、イフラ村、サルハ市郊外、ムライハ市郊外、アーリヤ農場、アルバイン市、ダーライヤー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、ヌスラ戦線、シャーム解放旅団、ハビービ・ムスタファー旅団の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区、ヤルムーク区を軍がする一方、未明からヤルムーク区で、PFLP-GCの民兵とシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団が交戦した。

**

ARA News, April 9, 2014

ARA News, April 9, 2014

スワイダー県では、スワイダー調整によると、ドゥルーズ派のシャイフ、ルーランス・サラーム師が治安当局に逮捕されたが、住民らの抗議デモを受けて釈放された。

クッルナー・シュラカー(4月9日付)によると、サラーム師釈放を求めるデモ参加者は、ドゥルーズ派シャイフ・アクル邸があるサフワ村に向かって行進を行い、シャイフ・アクル3人(ヒクマト・ヒジュリー師、ハンムード・ヒンナーウィー師、ユースフ・ジャルブーア師)が声明で、サラーム師を含むすべての逮捕者の釈放、軍事情報局スワイダー支局のワフィーク・アッバース(ワフィーク・ナースィル)支局長解任を求めた。

また国防隊の隊員70人も完全武装でデモに合流し、サラーム師釈放を求め、アサド大統領の写真を掲げてデモを排除しようとした「シャッビーハ」の1人を殴打したという。

**

SANA, April 9, 2014

SANA, April 9, 2014

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市カラム・ルーズ地区(アラウィー派住民が多い地区)で、爆弾が仕掛けられた車2台が相次いで爆発し、少なくとも4人が死亡、多数が負傷した。

これに関して、SANA(4月9日付)は、この爆破テロで女性、子供を含む25人が死亡、107人が重軽傷を負ったと報じた。

またSANAによると、マシュラファ村に潜入しようとした反体制武装集団を軍が撃退した。

さらに、ヒムス市旧市街に籠城していた反体制武装集団戦闘員32人が当局に投降した。

**

ダルアー県では、シリア人権監視団によると、シャームの民のヌスラ戦線とシリア軍がハーッラ市郊外で「捕虜交換」を行い、ヌスラ戦線が士官1名を、軍が女性8人を釈放した。

一方、SANA(4月9日付)によると、サムリーン村およびその周辺、ヌアイマ村、キヒール村、ウンム・マヤーズィン町、サムリーン村・ズィムリーン村分岐点、ハーッラ市、クワダナ村北西部、アイン・ズィクル村、アトマーン村、ジャドル村周辺、ダルアー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ダイル・ザウル県では、SANA(4月9日付)によると、ダイル・ザウル市ハウィーカ地区、ラシュディーヤ地区、ウルフィー地区、旧空港地区、労働者住宅地区、ジュバイラ地区、ブール・サイード通り、マリーイーヤ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備、地下トンネルを破壊した。

**

イドリブ県では、SANA(4月9日付)によると、ハーッジ・ハンムード村近郊、ハーン・スブル村、カルア・ガザール村、アブー・ズフール航空基地西部、アレッポ・サラーキブ街道、バウワービーヤ農場、アンダーン・シャイフ村、タッル・サラムー村、フータ村、ダイル・サンバル村、ハーン・シャイフーン市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ハサカ県では、ARA News(4月9日付)によると、シャームの民のヌスラ戦線とシャーム自由人イスラーム運動が、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の戦闘の末、シャティーフ村、ラカーヤ村を制圧した。

またカリー・スール村で、シリア・イラク国境地域に堀を建設するとしたイラク・クルディスタン地域政府の決定に反対するデモが民主統一党に近い革命青年運動の呼びかけのもとに行われた。

AFP, April 9, 2014、AMC, April 9, 2014、AP, April 9, 2014、ARA News, April 9, 2014、Champress, April 9, 2014、al-Hayat, April 10, 2014、Iraqinews.com, April 9, 2014、Kull-na Shuraka’, April 9, 2014、Naharnet, April 9, 2014、NNA, April 9, 2014、Reuters, April 9, 2014、SANA, April 9, 2014、UPI, April 9, 2014などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.