シリア反体制勢力の動き(2014年6月10日)

西クルディスタン移行期民政局の人民防衛隊総司令部は声明を出し、イラクのモスル市をイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が事実上制圧したことを批判、「部隊派遣などを通じてイラク・クルディスタン地域のペシュメルガ部隊を全面支援する用意がある」と発表した。

また、人民防衛隊報道官はフェイスブックの公式ページを通じて別の声明を出し、イラクのモスル市をイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が事実上制圧を受けて、人民防衛隊がハサカ県の対イラク国境に位置するヤアルビーヤ国境通行所からイラク領内に展開したとの一部情報を否定した。

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クッルナー・シュラカー(6月10日付)は、3月9~10日にシリア・レバノン国境で行われたシリア政府とシャームの民のヌスラ戦線との捕虜交換(http://syriaarabspring.info/wp/?p=5182)で、シリア政府当局が釈放した女性のなかに、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の指導者アブー・ムハンマド・バグダーディー氏の妻サジャー・ドゥライミー氏が含まれていたと報じた。

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Kull-na Shuraka', June 10, 2014

Kull-na Shuraka’, June 10, 2014

イスラーミーユーン(6月10日付)は、シリア・ムスリム同胞団のアリー・サドルッディーン・バヤーヌーニー前最高監督者が、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長がエジプトのアブドゥルファッターフ・スィースィー大統領就任に祝辞を送ったことに抗議し、連立を脱会したと報じ、辞表全文を公開した。

辞表のなかでバヤーヌーニー前最高監督者は「私以外の多くの人々と同様、私は(シリア革命反体制勢力国民)連立の代表である議長が、エジプトの反革命に祝辞を送り、エジプト国民の革命を瓦解させたクーデタ分子を祝福していることに驚いている」とジャルバー議長による祝辞を酷評した。

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自由シリア軍参謀委員会のアブドゥルイラーフ・バシール参謀長はロイター通信(6月10日付)に対して、米国が現地の反体制武装集団に直接武器を供与し、制御できない勢力を作り出してしまっていると批判した。

バシール参謀長は、「米国は北部戦線、南部戦線で武器供与を行っており、我々はこの責任を担うことを要求している…。武装集団に個別に支援を行うことで、その司令官らは軍閥化し、将来制御が難しくなってしまう」と述べ、シリアが「アフガニスタン化」「ソマリア化」すると警鐘を鳴らした。

そのうえで、バシール参謀長は米国に、自由シリア軍参謀委員会への対空兵器の供与を改めて求めた。

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Kull-na Shuraka', June 10, 2014

Kull-na Shuraka’, June 10, 2014

リフアト・アサド前副大統領(アサド大統領の叔父)の息子でシリア在住のドゥライド・アサド弁護士はフェイスブックで大統領当選を記念してアサド大統領が発令した恩赦(2014年政令第22号)に関して「シリアの街は早晩殺人犯であふれかえる」と非難した。

ドゥライド・アサド弁護士は、リフアト・アサド前副大統領一家のなかで唯一シリア国内にとどまっている。

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シリア革命反体制勢力国民連立法務委員会のヒシャーム・ムルーワ氏は声明を出し、大統領当選を記念してアサド大統領が発令した恩赦(2014年政令第22号)について「かけ声」「死産」と批判した。

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シリア人権監視団は、ダイル・ザウル県で4月30日から本格化したイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)とシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団との戦闘での犠牲者数が634人に達したと発表した。

同監視団によると、犠牲者のうち39人が民間人(うち子供5人)、ヌスラ戦線戦闘員が354人、ダーイシュ戦闘員が241人だという。

またこの戦闘で住民13万人以上が避難を余儀なくされたという。

AFP, June 10, 2014、AP, June 10, 2014、ARA News, June 10, 2014、Champress, June 10, 2014、al-Hayat, June 11, 2014、Islamion, June 10, 2014、Kull-na Shuraka’, June 10, 2014、al-Mada Press, June 10, 2014、Naharnet, June 10, 2014、NNA, June 10, 2014、Reuters, June 10, 2014、SANA, June 10, 2014、UPI, June 10, 2014などをもとに作成。

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