ロシアは越境(クロスボーダー)人道支援の6カ月の期間延長を認めることを提案(2022年7月7日)

AP(7月7日付)は、シリア政府への許可なく国外から越境(クロスボーダー)人道支援を行うことを認めた国連安保理決議第2585号が2022年7月10日に失効するのを前に、ロシアが2023年1月10日までの半年だけ期間を延長することを提案したと伝えた。

安保理を構成する欧米諸国、アントニオ・グテーレス事務総長、越境人道支援に携わる30以上のNGOは1年の延長を求めており、ロシアは中国とともにこれに反対してきたが、妥協案を示したかたちとなる。

これを受けて、国連安保理は、アイルランドとノルウェーが提出した越境人道支援の1年間の期間延長を求める決議案の採決を予定していた7日の会合を延期した。

次回会合では、アイルランドとノルウェーの決議案が採択され、これが否決された場合、ロシアの決議案の採決が行われる予定。

ロシアの決議案では、境界経由(クロスライン)での人道支援を「完全、安全、そして妨害なく」認める旨合わせて記されている。

 

**

越境人道支援の実施は、国連安保理決議第2165号(2014年7月14日採択)によって定められた。

同決議は当初、有効期間を180日と定めていた。だが、人道支援継続の必要から、第2191号(2014年12月17日採択――2016年1月10日まで延長)、第2332号(2016年12月21日採択――2018年1月10日まで延長)、第2393号(2017年12月19日採択――2019年1月10日まで延長)、第2449号(2018年12月14日採択――2020年1月10日まで延長)、第2504号(2020年1月11日採択――2020年6月10日まで延長)、第2533号(2020年7月11日採択――2021年7月10日まで延長)、第2585号(2021年7月14日採択――2022年1月10日まで延長)によって8度にわたって延長されていた。

国連安保理決議第2585号は、境界経由(クロスライン)、すなわち政府支配地と反体制派支配地を隔てる境界線を経由した人道支援を拡充するための取り組みを強く奨励する一方、越境人道支援については以下の通り、定めていた。

安保理決議第2165号(2014年)の第2、3項の決定(越境人道支援実施にかかる決定)を、6カ月間、すなわち2022年1月10日まで、バーブ・ハワー国境通行所の通過のみについて延長することを決定する。合わせて、作業における透明性に特に事務総長が透明性に特に配慮しつつ、報告書の発行し、人道的ニーズを満たすための境界経由でのアクセスを進展させることを条件として、さらに6カ月、すなわち2022年7月10日まで追加延長するものとする。

この文言に基づき、2022年7月10日まで期間が追加延長されていた。

AFP, July 7, 2022、ANHA, July 7, 2022、AP, July 7, 2022、al-Durar al-Shamiya, July 7, 2022、Reuters, July 7, 2022、SANA, July 7, 2022、SOHR, July 7, 2022などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.