トルコ占領地とシャーム解放機構が軍事・治安権限を握る「解放区」内の30以上の市町村でシリア政府と反体制派の和解の必要を説いたトルコのチャヴシュオール外務大臣の発言に抗議するデモが行われ、数万人が参加(2022年8月12日)

トルコの占領下にあるシリア北部とシャーム解放機構が軍事・治安権限を握る同北西部各所で、8月11日のトルコのメヴリュト・チャヴシュオール外務大臣の発言に抗議するデモが続けられた。

抗議デモは、チャヴシュオール外務大臣が首都アンカラで行われている第13回大使会議の最終日の演説で、シリアのファイサル・ミクダード外務在外居住者大臣と会談していた事実を認めるとともに、「我々はシリアの反体制派と体制を何らかのかたちで和解させねばならない。そうしなければ、持続手和平はない」と述べたのを受けたもの。

発言を受けて8月11日に、トルコの占領下にあるアレッポ県のアアザーズ市、バーブ市、スーラーン町(スーラーン・アアザーズ町)、アフティームラート村、ハサカ県のラアス・アイン市、ラッカ県のタッル・アブヤド市、シャーム解放機構が軍事・治安権限を握るイドリブ県のイドリブ市などでデモが発生していた。

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シリア人権監視団、イナブ・バラディー(8月12日付)、オリエント・ニュース(8月12日付)、トルコのシリア・テレビ(8月12日付)、ザマーン・ワスル(8月12日付)などによると、トルコ占領地では、アレッポ県のバーブ市、アアザーズ市、ジャラーブルス市、ラーイー村、アフリーン市、ダービク村、ジンディールス町、ラージュー町、アフタリーン市、マアバトリー(マーバーター)町、トゥルクマーン・バーリフ村、マーリア市、スーラーン町、カルジャブリーン村、ズィヤーディーヤ村、バザーア村で、シャーム解放機構が軍事・治安権限を握るいわゆる「解放区」では、イドリブ県のイドリブ市、ハーリム市、ダーナー市、アティマ村、サルキーン市、サルマダー市、カファルヤー町、マアッラトミスリーン市近郊の国内避難民(IDPs)キャンプ、カフルルースィーン村、ジスル・シュグール市、マストゥーマ村、ダルクーシュ町、ハザーヌー町、タッル・カラーマ村、アレッポ県のアターリブ市、ダーラ・イッザ市、ジーナ村、イッビーン村で抗議行動が行われた。

デモが行われた市町村は30以上に上り、数万人が参加した。


 

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マストゥーマ村でのデモでは、バアス前衛基地に駐留しているトルコ軍が、基地の前で抗議行動を行う住民らを強制排除するため、催涙ガスを発射した。




また、ジャラーブルス市の国境通行所に駐留しているトルコ軍も、空に向けて銃を発砲するなどして、デモ参加者を強制排除した。


だが、ガズィアンテップ県知事はトルコ軍の介入について否定した。

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シリア人権監視団によると、各地で行われたデモには、イスラーム解放党のメンバーや支持者も参加し、トルコ国旗を掲揚している軍・治安関連、自治関連の機関に対して、トルコ国旗を撤去する意志を示したという。

AFP, August 12, 2022、ANHA, August 12, 2022、al-Durar al-Shamiya, August 12, 2022、‘Inab Baladi, August 12, 2022、Orient News, August 12, 2022、Reuters, August 12, 2022、SANA, August 12, 2022、SOHR, August 12, 2022、August 13, 2022、Syria TV, August 12, 2022、Zaman al-Wasl, August 2022などをもとに作成。

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