アサド大統領は、6日のトルコ・シリア大地震の影響についてのビデオ演説を行い、そのなかで祖国こそが家であり、それを守ることは、課題の性質や規模、能力の増減にかかわらず義務だと述べた。
演説の内容は以下の通り。
親愛なる市民のみなさん
祖国は家だ。それをまもることは、課題の性質や規模、能力の増減にかかわらず義務である。地震発生当初からそうだった。シリアという祖国、家に対するこの深淵で包括的な感情は、祖国という一つの家族を構成する個々人、そして組織によるものである。アレッポ、ラタキア、ハマで亡くなったきょうだいを守り、助けるという偉大なる献身は、我々の誰にとっても異質なものではなく、シリアに対する戦争の節目節目に触れてきたものである。だが今回は、より包括的で明白だった。もっとも重要なのは、より雄弁だったことだ。なぜなら、12年におよぶ戦争と封鎖を経て、死、破壊、全国レベルでの物不足が伴われているなかで行われたからだる。その過酷さにもかかわらず、互いに対する我々の感情と思考、祖国の土地、人々、概念、習慣、電灯に対する我々の感情と思考は変わることはなかった。
この戦争が多くの国家資源を枯渇させていたのなら、さらなる訊きに対処する能力は弱まっていた。だが、同時に、それは、地震当初から迅速且つ効果的に行動する経験と能力をシリア社会に与えた。この災害と我々に与えられた任務の規模はいずれも可能な能力をはるかに超えていた。だが、我々の社会は、その個々人、そして個々の組織がそれを実行できた。そして、それもまた可能な能力を超えたものだった。それは、戦争や封鎖だけが理由ではない。シリアは2世紀反にわたって震災地ではなかった。この種の自然災害に備えのある建物や住居、施設や設備もなかった。それによって、最初の課題の規模は大きなものとした。こうした弱点は、政府機関、市民社会の関連機関、そして個人による高度で迅速な対応がなければ補えなかった。救出活動に携わるボランティアであれ、物資や支援金を寄付してくれた人々であれ、国内で暮らす人であれ、在外居住者であれ、あらゆる方法で封鎖を解除し、被災した自分たちのきょうだいに可能な限りの支援を届けようとした。加えて、アラブ諸国や友好国から緊急支援が届いた。それらは地震の影響を軽減し、負傷者を救出しようとする国民的な努力への重要な支えになった。
だが、この分野におけるそれ以外の国の経験を活かしても、遅かれ早かれ地震の影響は生じてしまう。我々が数ヵ月、数年にわたって、サービス、経済、社会といった面での課題に直面するものは、地震発生当初の数日間に直面したことにも増して重要だ。それには、国内のさまざまな分野で多くの思考、対話、互助、組織化が必要であり、一連の影響を地震とだけ結び付けて、個別に見るのではく、戦争、テロによる破壊、封鎖がもたらした影響と、そして最後に発生した地震の積み重ねとして見ることが必要となる。加えて、戦争以前の数十年の間にさまざまな分野で積み重なってきた機能不全の要因もある。
事態は複雑に見える。それぞれの問題の原因を個別に整理するのは難しいだろう。しかし、それは我々に、積み重なったこれらの問題を互いに結び付けて解決する機会を与えている。つまり、緊急事態における否定的側面に対処することから、包括的対処が持つ肯定的側面へと以降するのである。それが意味するのは、危機に対処するにあたって同じ場所にとどまることではなく、発展し、前進することだ。こうしたことは、一度すべてではなく、能力や時間的段階に応じて優先課題として行われ得るものだ。だが、重要なのは、国民的なコンセンサスに基づいたビジョンを持ち、広範な対話に依拠することだ。
しかし、その時まで、我々は地震の影響に順次対応していかねばならない。これまで行われてきた救援段階、緊急避難所の確保、食料、衣服、医薬品といった基本必需品の確保を経たうえで、政府関連機関は、恒久的な住居が今後提供されるまで、仮設住居確保に向けた取り組みを開始した。現在、被災者支援基金の設立に向けた検討が進められており、あらゆる面での生活能力が回復されるまで支援することが目指されている。それは、被害状況の集計を終え、要支援者を特定する基準や支援の根拠を確定した後に行われる。これらと合わせて、被災地域に被害を与え、国民経済全般にも影響を与えるような景気後退を抑えるための迅速な行動が、国民の経済的負担を軽減し、経済の循環を加速させる法律の施行や政策を通じてとられる。加えて、多くの考えがこれまでに提起されており、関係機関による検討や議論、実現可能性の検証を経て発表されるだろう。
親愛なるきょうだいよ。
多くの社会が、地理的なものであれ、政治的な者であれ、軍事的なものであれ、文化的なものであれ、社会的なものであれ、それ以外のものであれ、この種の地震に直面するとき、何らかの安定を失い、法律、制度、概念、監修、制度、道徳といった社会的な規律が揺さぶられるに違いない。そしてそれが今度は、隠れていた、あるいはこれらの規律が機能することで抑えられていた既存の否定的な側面を表面化させる。
危機のなかで表面化するこうした症状に対処する熱意と衝動性が必要となる。だが、それが誇張や妄想ではなく、知恵と意識、事実に基づいて結集されることが条件だ。噂を宣伝するのではなく、真実を探そう。地震発生直後の数時間、あるいは数日間に我々が目にした英雄的行為、犠牲、献身、連帯、そして際限のない行動力が噂で覆い隠されるのなら、この優れた驚くべき人道的で愛国的な光景を作り出したすべての人々を不快にさせるメッセージを送り、異なったイメージを広め、我々が他者のために描き出した純白のイメージと矛盾するイメージを与えてしまう。
昼夜を問わず蜂の巣のような閉鎖された場所で、救援活動を行った我々の愛国的な民生・軍事機関、市民コミュニティ、個々のボランティアが英雄的行為のイメージを、若い者であれ、年老いた者であれ、誰が消し去ることができようか? 彼らは希望、苦痛、熱意、満悦感、無限の愛、そして多大な犠牲を払って祖国を支え、その成果すべてのなかに美徳を備えた人々だったのではないか? 彼らは美しい意味な崇高な価値を備えた祖国だったのではないか? あるいは、溢れ出す善意をもって要望や疑問を排除し、被災者を支えるための自発的な民衆の衝動だったのではないか? 裕福な人が求められることなく与え、貧しい人が自分と家族が苦しんでいる人が被災者を支援するのにかろうじて十分な自らの持ち物と1日の食料の一部から分け与えるという衝動だったのではないか? 我らは我々のために、もっとも崇高な表現をもった生きた真のモデル、もっとも深淵な意味をもった異国心、最高の資質をもって人間性を体現したのではないのか? さまざまなメディアやSNSにおいて、和r割れの社会の真のイメージを守るために熱意を持って動員に応じた人々を忘れることができるのか? 彼らは一部の人々が広めようとしている歪められたイメージを許しはしない。それは、社会としての我々の評判を傷つける。そのなかにある道徳、連帯心、利他的なありようのなかに、個人と社会のレベルで最高の価値が存在するのではないか? それ以外の物語、話、終ることのない詳細、個人、英雄、勇敢さ。彼らは現代の手本であり、未来へと導く存在である。
だが、彼らすべて、そして物であれ、言葉であれ、物心面でできることをして、痛ましい苦痛を軽減するために取り組んだすべての人に対して、国内にいようと、国外にいようと、我々は感謝をしない。なぜなら、我々のなかの誰かの祖国への愛、祖国への奉仕、祖国防衛は義務であり、感謝を求められるものではないからだ。むしろ、我々は彼らに、「あなた方を誇りに思い、祖国はあなた方を誇りに思っている」と言いたい。
犠牲者に対する我々の痛みと悲しみ、そして我々の祖国の民に対する誇りが入り混じる大海のなかで、災害の最初の数時間から我々に寄り添ってくれたすべての国には、アラブ姉妹国からその他友好国に至るまで、感謝せずにはいられない。これらの国の物資の支援、あるいは現場での支援は、我々が過酷な時間において、困難な状況に立ち向かう我々の力を強めるのに大きな効果があった。とりわけ、効果的に参加し、瓦礫の下で生きている人がいるとの希望をもって、最後の瞬間まで働き続けてくれたさまざまな国の救助隊に言及した。彼らは、献身さと熱意をもってシリア人の救援隊とともに救助活動に参加してくれた。彼らこそ真のきょうだいだった。我々は、すべてのシリア人を代表して、彼らに感謝の意を示したい。
親愛なる市民のみなさん
この祖国における我々はみな、アッラーを信じるイスラーム教徒、ないしはキリスト教だ。アッラーへの信仰は、その意思への信仰を意味する。その信仰とは、我々にとって運命であり、我々が愛するものや憎むものをもってもたらされる。我々が、自らを襲う苦楽やその原因から神の知恵を理解しようとする立場にいなくとも、我々は確実に教訓を学びとり、そこから正しいことと悪しきことを学ぶ。
この過酷な試練から我々が学んだ最初の、そしてもっとも重要なことは、さまざまな階層、部門に身を置いている我々が互いに力を合わせて、自らの状況と能力の欠如を克服したということだ。それは、我々自身の大いなる能力への信仰だ。信仰とは、我々が連帯すれば作り出され、我々が分散してしまえば潰えてしまう。
アッラーを信じよう。祖国を信じよう。奇跡を作り出す能力を持った意思を信じることで、シリアを愛しい民がいる国、力強い歴史、豊かな尊厳、能力に富んだ意思を持つ国としよう。
我々が失った者たちをアッラーが憐れみ、我々の傷ついた者たちを癒し、シリアとその国民をあらゆる危害から守ってくださいますように。
あなた方に平和とアッラーの憐れみと祝福がありますように。
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