シリアでの人権侵害を調査するための国連人権理事会調査委員会のピネイロ委員長:「2020年3月のロシアとトルコによるシリア北西部での停戦合意以降、同地での爆撃にシリア軍が運用する航空機が関与したことを確認していない」(2023年3月13日)

シリアでの人権侵害を調査するための国連人権理事会調査委員会は、2022年7月1日から12月31日までの半年間のシリア国内での人権状況にかかる報告書(A/HRC/52/69)を理事会に提出した。

39ページからなる報告書では、シリア軍がシャーム解放機構の支配下にあるイドリブ県内の国内避難民(IDPs)キャンプをクラスター弾で攻撃し、民間人7人が死亡、少なくとも60人が負傷した事件(11月)、トルコ占領下の「ユーフラテスの盾」地域内のバーブ市(アレッポ県)に対するロケット弾攻撃で民間人16人が死亡、29人が負傷した事件(8月)、政府支配地、シャーム解放機構支配地、トルコ占領地での恣意的逮捕、失踪、拘留中の死亡、嫌がらせ、恐喝、言論統制、性的暴力などの横行、政府の支配下にある南部での治安悪化、1300万人が難民・国内避難民(IDPs)となっている実態、シリア国民の90%が貧困状態にあること、シリア北西部での女性や子供ら5万6000人がキャンプ生活を余儀なくされている実態などが報告された。

その一方で、委員会は、2020年3月のロシアとトルコによるシリア北西部での停戦合意以降、同地での爆撃にシリア軍が運用する航空機が関与したことを確認していないと指摘した。

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シリアでの人権侵害を調査するための国連人権理事会調査委員会のパウロ・セルジオ・ピネイロ委員長はまた、ジュネーブの国連本部で記者会見を行い、トルコ・シリア大地震に対するシリア政府と国連の対応の遅れを批判した。

ピネイロ委員長は以下のように述べた。

苦しみのなかで多くの英雄的行為が行われた。だが、我々はまた、シリア政府と国連を含む国際社会が、もっとも支援を必要としている人々の命を救うための支援を迅速に向けることに失敗したことを目の当たりにした。
シリアの人々はもっとも絶望的な時期に、保護してくるはずだった人々によって見捨てられ、無視された。

AFP, March 13, 2023、ANHA, March 13, 2023、al-Durar al-Shamiya, March 13, 2023、Reuters, March 13, 2023、SANA, March 13, 2023、SOHR, March 13, 2023などをもとに作成。

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