バアス党シリア地域指導部のヒラール副書記長がカーミシュリー市を電撃訪問するなか、シリア国民評議会がジュネーブ2会議に参加しないとの「断固たる決定」を発表(2013年10月13日)

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反体制勢力の動き

ダマスカス郊外県で活動するシャバーブ・フダー大隊(自由シリア軍)のアブー・サーリフを名乗る司令官は、ビデオ声明(10月13日付)で「最後通告を発し10月13日日曜日12時まで猶予を与える」としたうえで「治安機関施設周辺の住宅地からの避難を民間人に呼びかける。なぜなら我々は、ダマスカスの空にロケット弾と迫撃砲の雨を降らせるからだ」と脅迫した。

アブー・サーリフ氏はまた、この攻撃がダマスカス県南部一帯、ムウダミーヤト・シャーム市への軍の砲撃への対抗措置だと主張し、シリア政府に対して包囲解除を要求した。

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アラビーヤ・チャンネル(10月13日付)は、「自由シリア軍」がイード・アル=アドハー期間中、ヒムス県とダマスカス郊外県で一時休戦に応じる準備があるとの意思を示したと報じた。

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国内で活動する民主的変革諸勢力国民調整委員会は声明を出し、現行の憲法において大統領と内閣に与えられているすべての権限を移譲された移行期政府を発足し、その首班に「反体制指導者、ないしは無所属の人物を合意に基づいて」就任させることを提言した。

また「シリア軍と、シリアの危機を政治的に解決することに同意した反体制武装集団の士官からなる合同暫定軍事評議会」を設置し、治安・国防にあたるべきとの意見を示した。

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シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー事務局長は声明を出し、「現下の状況を踏まえ、ジュネーブに行くことはないとの断固たる決定を行った」と発表した。

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シリア革命反体制勢力国民連立政治局メンバーでヨルダンを活動拠点とするカマール・ルブワーニー氏はCNN(10月13日付)に、シリア国内の反体制武装集団どうしが、在外の反体制勢力の調整のもと連絡を取り合い、「イスラーム主義的指導部のもとに、軍事的、政治的、集権的な評議会の宣言」を準備していると述べた。

ルブワーニー氏によると、武装集団間の連絡調整は、イスラーム軍などとの間で進められており、「イスラーム的な色合い」を持ち、シャームの民のヌスラ戦線は参加が見込まれているが、イラク・シャーム・イスラーム国は排除されるという。

こうした取捨選択に関して、ルブワーニー氏は「タクフィール主義者の指導部より、国内のサラフィー主義者の指導部の方がましだ」と述べた。

一方、シリア革命反体制勢力国民連立については、「国外で結成された反体制勢力の一部だが、シリア革命を代表してはいない。そのメンバーは自分たち自身しか代表しておらず、またヨルダン、トルコ、フランス、米国、カタールなどの諜報機関が人選を行った」と否定的な見方を示した。

そのうえで「連立は、ジュネーブ2会議を通じて、国連憲法第7章に基づき正統性を確保しようとしているが、これはシリアの分割をもたらす動きものだ」と批判した。

また連立をジュネーブ2会議に参加させようと、米国などが圧力をかけていると指摘、連立が大会に参加すれば、シリア国民評議会のメンバーなど約30人の代表が連立を脱会するだろうと付言した。

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シリア人権監視団は8月24日に、ダイル・ザウル県ブサイラ市で「何者か」が爆弾を爆発させ、シャイフ・イーサー・アブドゥルカーディル・リファーイー廟が破壊されていたと発表した。

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クッルナー・シュラカー(10月13日付)によると、トルコのハタイ県レイハンル市内のアナトリア・カフェで、反体制武装集団・活動家の代表、ジャーナリスト、人道支援活動家ら約100人が集まり、「シリア自由人連合」を結成した。

「シリア自由人連合」はまた発足声明を発表、革命の成就、1950年憲法の復活、三権分立などをめざすことで合意したことを明らかにした。

「シリア自由人連合」に参加した主な武装集団は以下の通り:

第77師団(北部地域)
第3師団(ダマスカス郊外県カラムーン山地一帯)
バルク・ナスル旅団(イドリブ県、ハマー県)
第90旅団(ダマスカス西部)
ファジュル旅団(ダマスカス郊外県西グータ地方)
サイフ・シャーム旅団(ダマスカス郊外県西グータ地方)
ウマウィーイーン旅団(ダマスカス県、ダマスカス郊外県)
砂漠の殉教者旅団(イドリブ県)
ビラード・シャーム・イスラーム旅団(イドリブ県)
ジュンド・ラフマーン旅団(イドリブ県アブー・ズフール)
ラーヤ旅団(イドリブ県アブー・ズフール)
サイイド・マスィーフ旅団(ダマスカス県)
ウマル・ムフタール旅団(イドリブ県ザーウィヤ山)
ハビーブ・ムスタファー旅団(イドリブ県)
ムウタスィム・ビッラー旅団(イドリブ県)
アブー・バクル・スィッディーク旅団(アレッポ県)
フサイン・ハルムーシュ旅団(ラタキア県)
ワアド・サーディク旅団(ラタキア県)
ウンマ・イスラーミーヤ戦線旅団(アレッポ県、ヒムス県)
統一解放戦線(ラッカ県、ダイル・ザウル県、ハサカ県の6旅団)
ムアーウィヤ・ブン・アビー・スフヤーン(ヒムス県ラスタン市)
イスラーム殉教者旅団(ダマスカス郊外県カラムーン山地一帯)
アブダール・シャーム旅団(ダマスカス県ドゥンマル区、ダマスカス郊外県バラダー渓谷)
ハムザ旅団(ダマスカス郊外県バラダー渓谷)
カラーマ殉教者旅団(ダマスカス郊外県バラダー渓谷)
殉教者サミール・ダヒーク旅団(ヒムス県ラスタン市)
鷲旅団
バヤーリク・イスラーム旅団
サイフッラー・マスルール旅団
ファジュル・ムジャーヒディーン旅団
ヒッティーン旅団
ジュンド・ラフマーン旅団(アレッポ県)
殉教者マーズィンロケット弾防衛旅団(イドリブ県ザーウィヤ山)
アマーナ殉教者旅団(ハマー県)
カラー間殉教者旅団(イドリブ県ハーン・シャイフーン市)
ムンタスィル・ビッラー旅団(イドリブ県ハーン・シャイフーン市)
第533コマンド旅団(ハマー県北部)
第633歩兵旅団(イドリブ県ハーン・シャイフーン市)
ハリーファ旅団(イドリブ県マアッラト・ヌウマーン市)
山鷹旅団(イドリブ県シャフシャブー山)
タッル・フハール大隊(アレッポ県)
特殊任務大隊(ダマスカス郊外県マダーヤー町)
ウカーブ大隊(ダマスカス郊外県カラムーン山地一帯)
ハーン・シャイフーン革命家旅団
第465ハーン・シャイフーン殉教者中隊
シャイフ山殉教者旅団
西部郊外自由人旅団
ダマスカス軍事革命評議会旅団

なおこれに関して、『ハヤート』(10月13日付)は、自由シリア軍参謀委員会(最高軍事評議会)報道官のカースィム・サアドッディーン大佐がレイハンル市で、数十の武装集団を統合し、「シリア自由人軍」を結成したとの情報が流れたと報じていた。

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ダマスカス郊外県で活動する反体制組織・活動家がドゥーマー市に会し、自治組織「拡大文民評議会」を結成した。

「拡大文民評議会」は、独立司法委員会、シャリーア委員会、文民行政市民福祉評議会などからなり、ダマスカス県・ダマスカス郊外県革命指導評議会、シリア平和運動機構、シリア民主フォーラム革命運動局などが参加した。

シリア政府の動き

クッルナー・シュラカー(10月13日付)によると、バアス党シリア地域指導部のヒラール・ヒラール副書記長がハサカ県カーミシュリー市を電撃訪問した。

訪問には、アブドゥンナースィル・シャフィーウ地域農民局長、ハルフ・ミフターフ出版文化情報局長、ハサカ支部のナースィル・アブドゥルアズィーズ支部局長、ハサカ県のムハンマド・ズアール・アリー知事が同行した。

訪問は、政権支持者の士気高揚が目的だったという。

Kull-na Shuraka', October 13, 2013

Kull-na Shuraka’, October 13, 2013

国内の暴力

SANA(10月13日付)は、ダマスカス県のウマウィーイーン広場の立体交差入り口で、反体制武装集団が車2台に爆弾を積んで相次いで自爆したと報じた。

また、アッバースィーイーン地区、カッサーア地区、バーブ・シャルキー地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾複数発が着弾し、十数人が負傷した。

このほか、カーブーン区、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、外国人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

一方、シリア人権監視団によると、ジャウバル区などで、軍と反体制武装集団が交戦した。

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イドリブ県では、SANA(10月13日付)によると、赤十字国際委員会のスタッフ多数の乗った車を「何者か」が襲撃し、スタッフが拉致された。

ロイター通信(10月13日付)などによると、拉致されたのは、赤十字国際委員会スタッフ6人とシリア赤新月社のボランティア1人。

また、シリア人権監視団によると、サルミーン市、ラーミー村、カフルルーマー村、マアッル・シャマーリーン市、タッル・マンス村などを軍が空爆した。

一方、SANA(10月13日付)によると、カトルーン市、アーリヤ市、ティーバート市、ハーッジ・ハンムード農園、クーリーン市、アルバイーン山一帯、ウンム・ジャリーン村、ザアラーナ村、ワーディー・ダイフ軍事基地周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、カタナー市にある軍第78旅団の武器庫を反体制武装集団が制圧した。

また反体制武装集団がバービッラー市にある軍の拠点を迫撃する一方、軍と反体制武装集団がダイル・サルマーン市、ビラーリーヤ村、カースィミーヤ市などで交戦した。

さらに、ワーフィディーン・ゴラン高原難民キャンプ地域に迫撃砲弾が着弾した。SANA(10月13日付)によると、これにより、1人が死亡、約20人が負傷した。

一方、SANA(10月13日付)によると、シャイフーニーヤ氏、ザマルカー町、カースィミーヤ市、フジャイラ村、スバイナ町、ヤルダー市、ジャイルード市南部、アドラー市・ナバク市間、ダーライヤー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、外国人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

他方、シリア人権監視団によると、ムウダミーヤト・シャーム市に対する軍の包囲を受け、住民約1,500人が市外に避難した。

避難した1,500人はそのほとんどが女性、子供だという。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、軍がダルアー市を空爆する一方、アトマーン村上空で軍の戦闘機が反体制武装集団の攻撃を受けて墜落した。

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スワイダー県では、シリア人権監視団によると、ドゥルーズ派が多く住むザフル・ジャバル地方で、軍、国防隊が反体制武装集団と交戦した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ウンム・ジャリーン村が軍の砲撃を受けた。

またアアザーズ市に近い、マアッリーン村で、民主統一党人民防衛隊がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と交戦した。

一方、SANA(10月13日付)によると、クワイリス村、ナイラブ村北部、ナッカーリーン村、ラスム・アッブード村、カースティールー街道で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(10月13日付)によると、カーミシュリー市の税関局前に仕掛けられた爆弾が爆発した。死傷者は出なかったという。

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クナイトラ県では、使徒末裔旅団は声明を出し、フッリーヤ村を9日間の包囲の末に制圧したと発表した。

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ヒムス県では、SANA(10月13日付)によると、ヒムス市バーブ・スィバーア地区、ハミーディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区、ハーリディーヤ村、ダール・カビーラ村、タッルカラフ市、ザーラ農場、カフルナーン市、カニーヤ・アースィー村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(10月13日付)によると、ブワイダ村、ジナーン市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザイル県では、SANA(10月13日付)によると、ダイル・ザウル市ウルフィー地区、ハミーディーヤ地区、ハウィーカ地区、ジュバイラ地区、旧空港地区、工業地区、シャイフ・ヤースィーン地区、アルディー地区、ハトラ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、SANA(10月13日付)によると、ナワーラ村、キリス村、カビール村、サルマー町郊外、ダルーシャーン村などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、50人以上の外国人戦闘員を殲滅、拠点・装備を破壊した。

諸外国の動き

在アンマンの英国大使館は声明を出し、シリア人避難民対策として英国がヨルダンに新たに1,200万ポンド相当の支援を行うと発表した。

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ザマーン・ワスル(10月13日付、http://zamanalwsl.net/news/42048.html)は、「日本人ジャーナリストがイスラーム教に入信し、イラク・シャーム・イスラーム国のメンバーとなった」と伝え、写真2枚を公開した。

このうち1枚目の写真には、イラク・シャーム・イスラーム国メンバーと思われる男性とともにこやかな表情でタウヒードを意味する人差し指を立てているジャーナリストが映っている。

また別の写真には、複数の戦闘員と並んで銃を構える迷彩服姿の別の日本人男性が映っている。

なおザマーン・ワスルをはじめとするアラビア語サイトの多くは、ジャーナリストの常岡浩介さんとアレッポ市で反体制武装集団と行動を共にしていたトラック運転者の藤本敏文さんを混同して報じている。

AFP, October 13, 2013、Alarabina.net, October 13, 2013、CNN, October 13, 2013、Elaph, October 13, 2013、al-Hayat, October 13, 2013, October 14, 2013、Kull-na Shuraka’, October 13, 2013, October 14, 2013, October 15, 2013、Naharnet, October 13, 2013、Reuters, October 13, 2013、Rihab News, October 13, 2013、SANA, October 13, 2013、UPI, October 13, 2013、Zaman al-Wasl, October 13, 2013などをもとに作成。

 

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