アスタナ20会議が閉幕:カザフスタンはアスタナ・プロセスの終了を提案するも、ロシア、トルコ、イランは共同声明で今年下半期にアスタナ21会議を開催すると表明(2023年6月21日)

カザフスタンの首都アスタナで20日から開催されていたアスタナ20会議(ロシア、シリア、トルコ、イランによる外務副大臣級会合)は、保証国であるロシア、トルコ、イランの3ヵ国が共同声明を発表して閉幕した。

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アスタナ会議の主催国であるカザフスタンのカナト・トゥミシュ外務副大臣は、ロシア、トルコ、イランを保証国として開催されてきたアスタナ会議を今次ラウンド(アスタナ20会議)をもって最終ラウンドとすることを提案したと述べた。

トゥミシュ外務副大臣は、共同声明に先立つアスタナ20会議の全体会合で以下のように述べた。

我々は第20ラウンドがシリアにかかるアスタナ会議の最終ラウンドであると正式に宣言することを提案する。我々はこの決定が共同声明に盛り込まれるよう求める。

共同声明においては、シリアの主権と領土統一の維持に基づいてのみ中東地域の安全と安定が達成し得ること、「テロとの戦い」のための共同行動の継続、分離主義的アジェンダの拒否、シリア領内に対して繰り返されるイスラエルの攻撃の拒否を確認した。

カザフスタンのムフタル・トレウベルディ副首相兼外務大臣によって読み上げられた共同声明の骨子は以下の通り:

  • アスタナ会議の保証国(ロシア、イラン、トルコ)の代表は、最近の国際情勢および地域情勢の進展について議論し、シリア主権、統一、独立および領土一体性、国連憲章の目標と原則をを遵守することを確認、国際社会がこれらの原則を尊重する必要を強調した。
  • 保証国は、前日(20日)のロシア、イラン、シリア、トルコの外務副大臣級会合を留意し、トルコとシリアの関係回復に向けたロードマップの準備における進展について議論し、5月10日の四ヵ国外務大臣と4月25日の四ヵ国国防大臣会合における合意をフォローアップするため、継続的で実効的な取り組みを行うことの重要性を強調した。
  • 保証国は、「テロと戦い」、シリア人の安全かつ自発的な帰還のための適切な条件を作り出すために、善意と善隣関係に基づいて本プロセスを進めることの重要性を強調した。
  • 保証国は、民間インフラや国内避難民(IDP)キャンプへの攻撃など、シリア各地でさまざまな装いで活動するあらゆる形態・現象のテロと戦うための共同行動を継続し、シリアの主権、領土の一体性を損なうことを目的とした分離主義的アジェンダに立ち向かう決意を表明した。
  • 保証国は、イドリブ県の「緊張緩和地帯」の現状の詳細について報告、安定実現に向けたさらなる取り組みを行うことで合意した。
  • 保証国は、シリア北東部の情勢について議論し、シリアの主権と領土の一体性を維持することによってのみ、この地域の安全と安定が達成されることで合意した。また、「テロとの戦い」を口実として、違法な自治政体を樹立しようとするイニシアチブなど、この地域に新たな現状を作り出そうとするあらゆる試みを拒否、分離主義的アジェンダに立ち向かうことを確認した。
  • 保証国は、シリアの石油の違法な接収、輸送に反対する意思を確認した。
  • 保証国は、ユーフラテス川東岸地域での平和的デモの弾圧、徴兵、教育分野での人種差別政策など、分離主義グループによる市民への抑圧に深い懸念を表明した。
  • 保証国は、シリア領に対して繰り返されるイスラエルの攻撃を非難、イスラエルによるゴラン高原の占領を非難する国連などでの決議を遵守する必要を強調した。
  • 保証国は、制憲委員会第9ラウンドの延滞なき開催を呼びかけた。
  • 保証国は、トルコ・シリア大地震によるシリアの人道状況の悪化に多大な懸念を表明、国際法、国際人道法、国連憲章に反する一部諸外国による一方的な制裁措置を非難した。
  • 保証国は、UNHCRの決定に基づいたさらなる人道支援の重要性を確認、シリア政府がすべての被災地への人道支援を促していることに歓迎の意を表明した。
  • 保証国は、シリアの人道状況の改善と政治的関係正常化を支援するため、国際社会、国連に対してシリアへのさらなる支援を呼びかけた。
  • 保証国は、シリア難民の安全かつ尊厳のある帰還を促すため、国際社会に対して、必要な支援を行うよう呼びかけた。
  • 保証国は、ヨルダン、イラク、レバノン、国連、赤十字国際委員会の使節団のオブザーバー参加に歓迎の意を表した。

声明はまた、次回ラウンドとなるアスタナ21会議を今年下半期に開催することで合意したと付言した。





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SANA(6月21日付)、RIAノーヴォスチ通信(6月21日付)などが伝えた。

AFP, June 21, 2023、ANHA, June 21, 2023、al-Durar al-Shamiya, June 21, 2023、Reuters, June 21, 2023、RIA Novosti, June 21, 2023、SANA, June 21, 2023、SOHR, June 21, 2023などをもとに作成。

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