ロイター通信:OCHAは安保理宛「メモ」でシリア政府が越境(クロスボーダー)人道支援を許可する際に示した条件を「容認し得ない」と問題視(2023年7月14日)

国連のステファン・ドゥジャリク事務総長付報道官は記者会見で、7月10日に期限が終了したイドリブ県のバーブ・ハワー国境通行所を経由した越境(クロスボーダー)での人道支援の継続をシリア政府が認めたことに関して、バッサーム・サッバーグシリア国連代表が国連安保理に提出した書簡への対応を検討中だと述べた。

一方、ロイター通信(7月14日付)は、国連人道調整事務所(OCHA)がシリア政府が越境人道支援を許可するにあたって示した「二つの容認し得ない条件」を問題視していると伝えた。

同通信社が入手したとされるOCHAの安保理宛「メモ」によると、「シリア政府の許可は、同政府が指定した期間において、国連がバーブ・ハワー国境通行所を経由して越境人道活動を合法的に実施する根拠となり得る」としつつ、シリア政府が示した二つ条件については容認し得ないとの姿勢が示されているという。

OCHAによると、「シリア政府は第1に、国連がテロリストと指定された組織と連絡をとるべきではないと強調し」、「国連と実施パートナーは、運営上の必要に応じて、関連諸国や非国家当事者と関与し続けるべきである」との条件を示しているという。

OCHAは、これらの条件に関して、メモのなかで、こうした関与が「支援を必要とする民間人への安全かつ適切なアクセスを行ううえで不可欠で、国際人道法と合致している」と疑義を呈すとともに、赤十字国際委員会(ICRC)とシリア・アラブ赤新月社がシリア北西部における人道支援物資の配布を監督し、促進するよう求めるシリア政府の要求についても「国連の独立性とも矛盾しており、また、同地にはICRCもシリア・アラブ赤新月社が存在しないため、現実的だ」と主張しているという。

なお、このメモが誰によって作成されのか、OCHAの公式の立場を記したものなのかどうかは不明。

AFP, July 15, 2023、ANHA, July 15, 2023、al-Durar al-Shamiya, July 15, 2023、‘Inab Baladi, July 15, 2023、Reuters, July 15, 2023、SANA, July 15, 2023、SOHR, July 15, 2023などをもとに作成。

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