人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の政治部門であるシリア民主評議会はシリア危機解決行程表を採択:シリア民主軍のアブディー司令官は反体制派を非難(2023年12月20日)

人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の政治部門であるシリア民主評議会は、ラッカ県ラッカ市のアルド・サイーダ・レストランで開催されている第4回大会で、シリア危機解決行程表案を若干の修正のうえ全会一致で承認した。

大会は「シリア人の統一は政治的解決の基礎をなし、分権的で民主的なシリアの実現を保証する」とのスローガンのもと、非公開で開催されている。

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ANHA(12月20日付)が出席者から入手したシリア危機解決行程表案は、以下の項目を漸進的に実現し、政治的解決に向けた信頼醸成を行うことを不可欠だとしている。

1. 国際的監督したでの包括的な停戦と外国軍による攻撃の停止の宣言、テロとの戦いの継続。
2. 逮捕者・拉致者の釈放・解放、失踪者の行方究明
3. 外国人戦闘員の退去
4. 制裁解除、救援物資搬入許可
5. 復興支援国会議の開催
6. 人口動態的改編を違法とみなし、対処
7. 難民・避難民帰還の準備開始
8. すべての当事者による拡大会合の継続
9. 占領の終了と外国軍の撤退

そのうえで、平和的な危機解決に向けて以下のステップを提唱している。

1. 国際社会の保護・保証のもとでのシリア人どうしの対話による解決
2. 軍事的解決の拒否、国連安保理決議第2254号に基づいた民主的政治的対話の重視
3. シリア国民大会の開催に向けた取り組み
4. 移行期内閣の発足
5. 現行憲法の停止、新憲法草案委員会の発足
6. 移行期の工程の策定
7. 例外的、人種差別的法律の廃止
8. 正義和解国民平和委員会の設置と移行期正義の実現
9. 武装勢力統合に向けた軍事評議会の設置
10. 経済評議会の設置
11. 政治プロセスへの女性の参加
12. 民主的変革への若者の参加
13. 専制、中央集権の廃止、分権主義、多元主義に基づく体制の構築を目標に設定

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また、採択された修正案は以下17項目からなる。

1. シリア国民の政治的一体性の確認
2. 領土の一体性の保全、主権尊重
3. 善隣外交
4. シリア社会の多様性の承認、憲法におけるクルド人、アッシリア人、トルコマン人、アルメニア人の民族的権利の保障
5. 専制、狂信的イデオロギー、中央集権から多元的・分権的民主体制への移行
6. すべてのシリア人の参加、合意に基づく憲法の起草
7. タクフィール主義、過激主義の拒否
8. 女性の権利保障
9. 男女平等
10. エコロジー、社会正義、社会的公正、持続的開発に基づいた経済政策
11. 母語教育
12. シリア軍の政治への不干渉
13. 若者の参加
14. 要支援者の権利保障
15. 児童の権利保護
16. 戦死者遺族の保護
17. 専制、抑圧を回避するための社会のエンパワーメント

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シリア民主軍のマズルーム・アブディー司令官はビデオでメッセージを送り、反体制派を批判した。

アブディー司令官は、「外国のアジェンダと結びついた反体制派には何の計画もなく、方程式の外に出ている」としたうえで、「シリア危機の解決策を導き出すことに失敗した」と非難、「真の反体制派」が登場する必要があると述べた。

AFP, December 20, 2023、ANHA, December 20, 2023、‘Inab Baladi, December 20, 2023、December 21, 2023、Reuters, December 20, 2023、SANA, December 20, 2023、SOHR, December 20, 2023などをもとに作成。

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