イスラエル軍によるハマー県ミスヤーフ市一帯への攻撃による死傷者は55人、幹線道路、電力網、上下水道、通信網が甚大な損害を受ける(2024年9月9日)

ハサン・ガッバーシュ保健大臣は声明を出し、8日深夜から9日未明にかけてのイスラエル軍が実施した、ハマー県ミスヤーフ市一帯へのミサイルによる航空攻撃によって、18人が死亡し、37人が負傷したと発表した。

またハマー県のマーヒル・ユーヌス保健局によると、負傷者のうち重傷を負った6人はミスヤーフ国立病院に搬送され、治療が行われたことを明らかにしたうえで、現場で救助活動にあたっていた救急隊員1名、ミスヤーフ市ワッラーカ交差点で取材を行っていたSANAハマー支局カメラマンのアザーム・ウマル氏、損害を受けたインフラの復旧作業を視察していた県技術サービス局のフクム・サバーヒー局長も負傷したと発表した。

このうち、ウマル氏に関して、搬送先のミスヤーフ国立病院のファイサル・ハイダル院長は、9日夜間にミスヤーフ市の複数ヵ所を取材していた同氏が、イスラエル軍の攻撃に遭遇、胸に破片を受けて負傷したとしたうえで、破片の摘出は終了し、ウマル氏の容態は安定していると発表した。

一方、シリア人権監視団によると、死者は25人、うち民間人5人、シリア軍関係者4人、レバノンのヒズブッラーのメンバー2人、「イランの民兵」とともに活動するシリア人11人、身元不明の者3人で、負傷者は少なくとも32人に上ったという。

なお、シリア人権監視団によると、イスラエル軍が8日深夜と9日未明に4回にわたって行ったシリアへの攻撃は、9月に入って初めて(1~4回目)、今年に入って65(62~65)回目(うち48回が航空攻撃、17回が地上攻撃)、これにより140あまりの標的が破壊され、軍関係者207人が死亡、142人が負傷しているという。

同監視団によると、軍関係者の死者内訳は以下の通りである。

イラン人(イラン・イスラーム革命防衛隊):24人
ヒズブッラーのメンバー:40人
イラク人:18人
「イランの民兵」のシリア人メンバー(カーティルジー・グループ社も含む):59人
「イランの民兵」の外国人メンバー:17人
シリア軍将兵:46人
身元不明者:4人

また、民間人も25人(女性4人と子供1人を含む)が死亡、36人あまりが負傷している。

攻撃の県別内訳は以下の通りである。

ダマスカス県、ダマスカス郊外県:24回
ダルアー県:16回
ヒムス県:10回
クナイトラ県:6回
タルトゥース県:4回
ダイル・ザウル県:1回
アレッポ県:2回
ハマー県:4回

シリア人権監視団はその後(9月10日)に死者数が27人に増加したと発表した。

内訳は、民間人6人、シリア軍兵士4人、「イランの民兵」とともに活動するシリア人14人、レバノンのヒズブッラーに所属するシリア人メンバー5人、身元不明者3人。

負傷者は32人。

また、攻撃には有人戦闘機に加えて、多数の無人航空機によって行われ、いわゆる「ダブル・トラップ」により、負傷者の救出に駆け付けた民間の車輛多数が標的となり、そのことが死傷者数増につながった。

なお、シリア軍防空部隊はタルトゥース県バーニヤース市一帯で無人航空機1機を撃墜した。

**

道路運送公社ハマー支部のサファー・ナアーマ支部長によると、イスラエル軍の攻撃によって、ミスヤーフ市とワーディー・ウユーン村を結ぶ幹線道路に、深さ7メートル以上、長さ30メートル、幅5メートルの穴が生じるなどの損害を受け、通行不能となったほか、上下水道、電話回線といったインフラも損害を被った。

事態を受けて、道路運送公社ハマー支部の技術チームは、復旧作業を行った。

運輸省は声明を出し、ミスヤーフ市とワーディー・ウユーン村を結ぶ幹線道路の復旧が完了したと発表した。


**

水資源省は声明を出し、イスラエル軍の攻撃で、ミスヤーフ郡の水利プロジェクトが被害を受けと発表した。

声明によると、ミスヤーフ市の貯水施設とジャリーファート水源を結ぶ送水・配水ライン(315mm、180mm、160mm)が破壊されたほか、ハーン・ジュルミードゥーン水源とサルハブ市への電力供給が停止、復旧に向けた作業が行われているという。

また、水道公社ハマー支部のスーサン・ウラービー支部長によると、3本の送水・配水管が損害を受けた。

水資源省はその後声明を出し、ミスヤーフ市、ジャリーファート村、サルハブ市、ジュルミードゥーン村の水道網の復旧が完了したと発表した。

**

地方行政環境省は声明を出し、ハマー県と密接に連携し、道路、水道、電力網、通信ケーブルといったインフラへの被害の復旧に向けて、県全体、ミスヤーフ郡、そしてミスヤーフ市議会へのロジスティック、技術、工学面な支援を行っていると発表した。

**

電力公社ハマー支部のハビーブ・ハリール支部長によると、ミスヤーフ市とサルハブ市を結ぶ66kVの送電線、ミスヤーフ市のワッラーカ交差点地区からバイヤーダ村、ワーディー・ウユーン村に至る電力網、ミスヤーフ市電力局ビルと設備が甚大な被害を受けるとともに、サルハブ市の製粉所、穀物サイロ、砂糖工場、用水施設、ハーン・ジュルミードゥーン村の公共施設が電力供給が途絶えたことで操業を停止した。

また、ガッサーン・ザーミル電力大臣が現地を訪れ、被害状況を視察した。


ザーミル電力大臣によると、イスラエル軍の攻撃により、66/20kV変電所が機能停止し、66kVおよび20kVの中電圧線への電力供給が中断したほか、ハーン・ジュルミードゥーン村、アンブーラ村、マフルーサ村や、サルハブ市の製粉所、穀物サイロ、飲料水用井戸などへの電力が途絶えた。

さらに、ミスヤーフ市の南部地区にある中電圧・低電圧の電力網、市内の電力部門、作業車輛やクレーンなどにも物的被害が生じた。

**

ハマー県通信局のムニーブ・アスファル局長によると、ハマー市とミスヤーフ市を結ぶ光ファイバー・ケーブルが遮断され、ワーディー・ウユーン村、マルハ村、シーハ(シーハト・ミスヤーフ)村での通信が途絶えた。

また、バシャーウィー村、スィンディヤーナ村、マアイスラ村、アイン・カラム村、ナキール村、ワーディー・ウユーン区一帯の通信アクセス・ポイントも停止した。

SANA(9月9日付)が伝えた。

AFP, September 9, 2024、ANHA, September 9, 2024、‘Inab Baladi, September 9, 2024、Reuters, September 9, 2024、SANA, September 9, 2024、SOHR, September 9, 2024、September 10, 2024などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.