シャルア暫定大統領はフランスを訪れ、マクロン大統領と会談:「シリアに留まった外国人戦闘員はいかなる近隣諸国に対する脅威とはならない。出身国にも危害を与えない」(2025年5月7日)

SANAによると、アフマド・シャルア暫定大統領は、アスアド・ハサン・シャイバーニー外務在外居住者大臣とともに初の欧州訪問先となるフランスの首都パリを訪れ、シャルルドゴール国際空港でエマニュエル・マクロン大統領の出迎えを受けた。

シャルア暫定大統領は、マクロン大統領との首脳会談に先だって、「シーザー」として知られるファリード・マズハーン氏と会談した。

「シーザー」は、シリア国内の刑務所、拘置所、軍関連の病院で拷問などを受けて死亡した犠牲者の写真約25,000点を持ち出した元諜報機関関係者で、写真は2014年1月に公開され、また2020年6月に発効した米国の対シリア制裁法の「シーザー・シリア市民保護法」の名前の由来となった。

シャルア暫定大統領は続いて、エリゼ宮殿を訪れ、エマニュエル・マクロン大統領と会談した。

会談後の共同記者会見が開かれた。

そのなかで、マクロン大統領は以下の通り述べた。

アサド体制の崩壊は、すべての人々に安堵をもたらした。今日、シリア国民は平和と安定の実現に向けて団結すべきである。
シリアの領土の一体性の維持と、すべての国民構成要素における権利の平等を確保する必要性を強調する。
シリアは大きな困難に直面しており、国際社会は協力し、支援することでこれらの困難を乗り越える手助けをすべきである。
シャルア大統領によるシリア民主軍との合意および社会的平和の確保に向けた取り組みを称賛する。
フランスは、ダーイシュ(イスラーム国)との戦いにおいてシリアと協力する用意があり、これは両国の利益となる。
フランスは、シリアに対する欧州の制裁を段階的に解除していく方針である。
経済制裁の解除は、シリアの復興、難民帰還の促進に資するものであり、米政権は解除に向けて取り組むべきだ。
イスラエルによるシリア領土への攻撃は、悪質な行為であり、シリアの主権と領土一体性への侵害である。
流血の戦争を経たシリアにおいて、私は今、然るべき場所に然るべき指導者がいるのを目にしている。









これに対して、シャルア暫定大統領は以下の通り述べた。

フランス国民が過去数年間にわたりシリア難民を受け入れてくれたこと、そして本日の私自身の受け入れてくれたことに対して、マクロン大統領とフランス国民に深く感謝する。
2011年にシリア国民がアサド体制に対して立ち上がったとき、革命が複数の段階を経て極度の暴力にさらされるとは予想していなかったが、国民は独裁に屈することを拒んだ。
フランスはシリア国民の友人であり、革命の年月を通じて常に寄り添ってきた。
本日はマクロン大統領と、共通の関心事項における進展の方策、復興、そして地域全体の安定を意味するシリアの安定について協議した。我々は、革命後の時期が困難であることを認識しており、54年間にわたってシリア社会に宗派主義と恐怖を武器として君臨してきた独裁支配の終焉を社会全体で受け止めようとしている。最近、悲劇的な事件が発生したが、我々は迅速に対応し、旧体制に属する武装勢力が沿岸部で引き起こした事件について調査委員会を設置した。国連の人権理事会はこの委員会の設置を歓迎した。
我々は破壊されたインフラを受け継いだ。住宅が破壊され、電気もない都市が多い。復興は最優先課題であり、基礎的なサービスの提供と市民の尊厳ある生活の確保に努めている。
宗派間の分断工作を許さず、外国勢力によるシリアの主権侵害も認めない。
今日、シリアは地図の片隅にある存在ではなく、その経済は世界経済とつながっている。旧体制の行為によって課された制裁は、もはや国民への制裁となっており、継続の正当性はない。制裁は解除されるべきである。
本日の会談が、シリア国民にとって希望の兆しとなることを願う。
シリアの未来は、閉ざされた部屋で決められるものではなく、遠い首都で決定されるものでもない。
沿岸部で発生した事件は、旧体制の残党によって引き起こされたものであり、多くの犠牲者を出す惨事となった。我々は、社会的平和を確保するための委員会と、事実調査を担う委員会の二つを設置し、犯罪の加害者およびその責任者を厳正に追及していく所存である。
シリアは、旧体制によるテロの最大の被害者であり、世界中のテロ被害者に連帯の意を表する。我々は、シリア国外におけるいかなる犯罪行為とも無関係である。
我々は、祖国シリアの解放のために、誠実かつ名誉をもって戦闘行動を遂行し、シリア国民と地域全体を覆っていたテロの脅威から救った。
シリアに留まった外国人戦闘員はいかなる近隣諸国に対する脅威とはならない。出身国にも危害を与えない。
(外国人戦闘員への国籍付与について)新憲法が制定された、どの外国人戦闘員、そしてその家族が国籍を得るに相応しいかが決定される。














**

マクロン大統領との会談を終えたシャルア暫定大統領は、シャイバーニー外務在外居住者大臣とともに、フランス外務省でモハメド・スワイルヒ・フランス語圏担当国務大臣およびフランス政府高官と会談した。

**

シャルア暫定大統領はまた、シャイバーニー外務在外居住者大臣、ラーイド・サーリフ緊急事態災害大臣とともに、カトリック系支援団体のルーヴル・ドリヨン(L’Œuvre d’Orient)のパスカル・ジュルニシュ代表と会談した。

**

シャルア暫定大統領は、フランス在住のシリア人学術関係者、文化人、実業者、市民社会団体の代表者らと会談した。

**

すべての日程を終えたシャルア暫定大統領とシャイバーニー外務在外居住者大臣はマクロン大統領が見送るなか、シャルルドゴール国際空港を後にした。

**

帰国後(8日)、大統領府は声明を出し、フランス政府に対して謝意を示した。

(C)青山弘之 All rights reserved.