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クルド民族主義勢力の動き
ロイター通信(7月26日付)は、複数のクルド消息筋の話として、民主統一党のサーリフ・ムスリム共同党首がトルコのイスタンブールに入ったと報じた。
『ハヤート』(7月27日付)によると、ムスリム共同党首はアフメト・ダウトオール外務大臣、国家情報機構(MIT)のハカン・フィダン長官らと会談し、ハサカ県、ラッカ県での戦闘激化への対応などについて協議した。
同紙によると、ムスリム共同党首の訪問は、イラク・クルディスタン地域政府の仲介によって実現したものと思われるという。
トルコ日刊紙『タラフ』(7月26日付)によると、ムスリム共同党首による「非公式会合」の申し出を受けて訪問が実現し、トルコの複数の消息筋によると、トルコ政府は、西クルディスタン自治政府を発足しないよう民主統一党に求めた。
『ザマン』(6月26日付)によると、トルコのレジェップ・タイプ・エルドアン首相は、トルコの治安機関高官らが、トルコを訪問中の民主統一党サーリフ・ムスリム共同党首に対して「トルコ国境に近いシリア北部にクルド人の独立した政体を樹立しないよう警告した」と述べた。
一方、トルコ日刊紙『ラディカル』(7月26日付)は、ダウトオール外務大臣がムスリム共同党首との会談で、アサド政権への非協力、宗派・人種に基づく「既成事実」(自治政府)を作らないこと、人道支援の促進、対トルコ国境を脅かさないこと、シリア革命反体制勢力国民連立へのクルド人の参加などを要求したと報じた。
なおこの訪問に合わせるかたちで、トルコ当局はシャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国と民主統一党人民防衛隊の戦闘を逃れてトルコへの入国を求めていたシリア人(クルド人)避難民を受け入れたという。
反体制勢力の動き
シリア革命反体制勢力国民連立の代表団は、国連安保理15カ国の代表と非公式会合を行った。
会合後、代表団を率いたアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長は、安保理各国に対して「全権を有する完全な(移行期)政府」樹立に向けた支援を求めたことを明らかにした。
また「アラブ湾岸諸国、国際社会に高性能兵器の供与」を求めるとの姿勢を強調、サウジアラビア、トルコ、フランス、米国などへの歴訪を通じて「アラブ同胞と友人らから近く自由シリア軍に武器が供与されるだろう」と述べた。
『ハヤート』(7月28日付)によると、会合で、シリア革命反体制勢力国民連立の代表団は、ジュネーブ2会議の開催の必要を強調した。
これに対して、フランスのジェラール・オロ国連代表大使は「安保理のメッセージは単純で、軍事的解決はないというものだ」と述べ、安保理各国がシリア革命反体制勢力国民連立に対して、政治的解決に向けて積極的に取り組むよう求めたことを明らかにした。
またオロ国連代表大使は、4月の代表メンバー拡大によりシリア革命反体制勢力国民連立が「シリア国民すべての合法的な代表」になることができたと主張する一方、ロシアの姿勢を「あらゆる多様性をも分裂とみなす全体主義的思考」と非難した。
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シリア人権監視団は、アレッポ県ハーン・アサル村で22日から23日にかけて150人以上の軍兵士が反体制武装集団に殺害され、うち士官30人を含む51人が戦場で処刑されたと発表した。
国内の暴力
ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(7月26日付)によると、シャームの民のヌスラ戦線とイラク・シャーム・イスラーム国がイフタール直前の7時15分頃、ラアス・アイン市住宅地などに向けて無差別砲撃を加え、パンを買いに外に出ていた子供1人が負傷した。
またこの攻撃により、ラアス・アイン市に隣接するトルコ領内のジェイランプナル市の民家に戦車の砲弾が着弾し、一家5人が負傷した。
攻撃を受け、ジェイランプナル市のクルド系住民数百人がトルコ政府にテロリストに対処するよう求めてデモを行ったという。
なおジェイランプナル市には、7月半ば以降、たびたび迫撃砲弾が着弾している、という。
一方、SANA(7月26日付)によると、マクバラ村で反体制武装集団が7人の村人を虐殺した。
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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カーブーン区を軍が砲撃した。
『ハヤート』(7月27日付)は、パレスチナ国民闘争戦線のハーリド・アブドゥルマジード代表の話として、シリア軍の後方支援を受けたPFLP-GC主導のパレスチナ人の人民諸委員会が、ヤルムーク・パレスチナ難民キャンプの約3分の1を制圧したと報じた。
一方、SANA(7月26日付)によると、バルザ区、カーブーン区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備、地下トンネルを破壊した。
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ダマスカス郊外県では、SANA(7月26日付)によると、アルバイン市、シャイフーニーヤ村、ムライハ市郊外、バービッラー市、フサイニーヤ町、ヤブルード市郊外で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム旅団の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
またジャルマーナー市では、ジャナーイン地区に迫撃砲弾が着弾し、市民1人が死亡、3人が負傷した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、アクラバー村とジャアフィーフ市を結ぶ街道で、軍と反体制武装集団が交戦した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、バサーミス市、カフルラーター市などに軍が空爆を行い、バサーミス市で子供2人を含む10人が死亡した。
一方、SANA(7月26日付)によると、シャイフ・シンディヤーン市、サルマーニーヤ村、ダーウド・アクラード市、フルール市、キークーン市、バシュラームーン村、ダイル・サンバル村、イフスィム町、カフルルーマー村、マアッラト・ヌウマーン市、タフタナーズ市、サラーキブ市、タッラト・ヌサイビーン市、アブー・ズフール航空基地周辺、マジャース村、ジダール・ブカフルーン市で、軍が反体制武装集団と交戦し、外国人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ヒムス県では、SANA(7月26日付)によると、ヒムス市のハーリディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またタドムル市西部のウルヤーニーヤ地区のダマスカス・バグダード街道、ヒムス・バグダード街道で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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アレッポ県では、SANA(7月26日付)によると、ハイヤーン町郊外、アレッポ中央刑務所周辺、ハーン・アサル村、シャイフ・ナッジャール市で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
アレッポ市では、ラーシディーン地区、ハーリディーヤ地区、サラーフッディーン地区、アーミリーヤ地区、ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(7月26日付)によると、ダイル・ザウル市のハウィーカ地区、ジュバイラ地区、ラシュディーヤ地区、旧空港地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ラタキア県では、SANA(7月26日付)によると、ハーン・ジャウズ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
諸外国の動き
AFP(7月26日付)によると、チュニジアのルトフィー・ベン・ジッドゥー内務大臣は記者会見で、治安当局が2013年3月以降、「ジハード」のため、トルコ経由でシリアに入国し、反体制武装集団に合流しようとしたチュニジア人4,500人の渡航を阻止したと発表した。
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UNHCR報道官はジュネーブで記者団に対し、エジプト国内でシリア人の恣意的逮捕が増加していると述べ、懸念を表明した。
エジプトの複数のメディアなどによると、シリア人数百人がムハンマド・ムルスィー前大統領支持を表明するデモに参加し、同報道官によるとこれまでに85人のシリア人が逮捕されたとの報告を受けているという。
AFP, July 26, 2013、al-Hayat, July 27, 2013、Kull-na Shuraka’, July 26, 2013、Kurdonline, July 26, 2013、Naharnet,
July 26, 2013、Reuters, July 26, 2013、SANA, July 26, 2013、UPI, July 26,
2013などをもとに作成。
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