イスラーム国(ダーイシュ)がヨルダン軍パイロットを火あぶりで殺害:ダーイシュのビデオの構成・内容詳細(2015年2月3日)

ダーイシュ(イスラーム国)は、2014年12月に戦闘中に捕捉したヨルダン軍パイロット、マアーッズ・カサースィバ空軍中尉を生きたまま焼き殺す映像をインターネット上で公開した。

23分におよぶ映像は「胸の癒やし」と題され、フルカーン広報制作機構のロゴが添付されており、ヨルダン政府による有志連合への参加、イスラエルとの関係などを批判する映像とナレーション、カサースィバ中尉自身による軍事作戦に関する証言、そして処刑シーンから構成されている。

具体的な構成・内容は以下の通り:

1. ダーイシュに対する有志連合への参加を表明するヨルダンのアブドゥッラー2世国王のインタビュー映像

2. アブドゥッラー2世国王とバラク・オバマ米大統領の会談の映像とともに、ヨルダンを「十字軍」に忠誠を誓ってきた、ユダヤ国家を支援してきたなどとするナレーション。

3. イラク戦争などの戦闘シーンと、アフガニスタンやイラクに対する欧米諸国の空爆・侵攻に荷担してきたなどとする映像。

4. グラフィック動画による「胸の癒やし」というタイトルコール。

5. ダーイシュがヨルダン軍戦闘機を撃墜した、とする2014年12月末のアラブ諸国、欧米諸国メディアのニュース。

6. 12月24日の作戦に関するカサースィバ中尉の証言映像。骨子は以下の通り:①12月24日早朝、F16戦闘機に搭乗し、イラク経由でシリアのラッカに向けて出撃、②自身の任務は作戦に参加したサウジアラビア空軍、UAE空軍、モロッコ空軍戦闘機に対するダーイシュ側からの地対空ミサイル攻撃の監視、③任務遂行中に熱誘導ミサイルをエンジン部分に被弾し脱出、④「ムジャーヒディーン」によって捕捉。

7. 有志連合に関するカサースィバ中尉の証言。骨子は以下の通り:①英米仏、カナダ、オーストラリアといった「十字軍」がイラク、シリアにおける空爆に参加、②加えてヨルダン、UAE、サウジアラビア、クウェート、カタール、オマーン、バーレーンも空爆に参加、③ヨルダン、UAE、モロッコ、バーレーンはF16を、サウジアラビアはF15を、クウェートは輸送機を参加させ、カタール、オマーンは基地を提供、④ヨルダン、クウェート、サウジアラビア、バーレーン、トルコ、イラクの空軍基地が戦闘機の発着地、緊急着陸地、⑤有志連合は、無人偵察機、人工衛星、スパイなどを通じて標的に関する情報を収集。

8. カサースィバ中尉によるヨルダン政府批判「ヨルダン国民にメッセージを伝えたい。あなたがたの政府がシオニストの手先だということを知って欲しい…。もし正しくあるのなら、我々はイスラームを防衛したい。なのになぜ、戦闘機を、数百万というイスラーム教徒を殺戮するヌサイリー軍(シリア軍)、そしてユダヤ人に対して向けないのか?」

9. 有志連合戦闘機による空爆シーン、負傷する一般人の映像。

10. カサースィバ中尉の処刑シーン。①廃墟のなかを処刑場に向かって歩くカサースィバ中尉(合成と思われる)、②横一列に並ぶ覆面をした戦闘員の前で牢獄に閉じ込められたカサースィバ中尉に火がかけられる・・・。③ブルドーザで牢獄ごと遺体を遺棄。

11. 有志連合によるダーイシュ拠点空爆に参加したとされるヨルダン軍パイロットらに対する殺害予告、顔写真、個人情報(出身地など)

なおRaqqa-sl.com(2月3日付)によると、ダーイシュが拘束中の人質を焼き殺すのはこれが初めてで、カサースィバ氏処刑については1月8日に、ダーイシュ支持者らのツイッター・アカウントなどで情報が出回っていた。

一方、ヨルダン軍報道官は、カサースィバ中尉が1月3日に殺害されていたとの見方を示した。

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AFP, February 3, 2015、AP, February 3, 2015、ARA News, February 3, 2015、Champress, February 3, 2015、al-Hayat, February 4, 2015、Iraqi News, February 3, 2015、Kull-na Shuraka’, February 3, 2015、al-Mada Press, February 3, 2015、Naharnet, February 3, 2015、NNA, February 3, 2015、Raqqa-sl.com, February 3, 2015、Reuters, February 3, 2015、SANA, February 3, 2015、UPI, February 3, 2015などをもとに作成。

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