自由シリア軍南部戦線やシャーム自由人イスラーム運動がスワイダー県のサアラ軍事飛行場を制圧したと発表、シリア政府はこれを否定(2015年6月11日)

スワイダー県では、AFP(6月11日付)によると、自由シリア軍南部戦線やシャーム自由人イスラーム運動などからなるジハード主義武装集団が、サアラ航空基地に侵攻、同基地の大部分と基地近郊に位置するサカーカー村などを制圧した。

自由シリア軍南部戦線らは、ダルアー県フラーク市近郊の第52旅団基地制圧後、サアラ航空基地の制圧を目的とした「暴君放逐の戦い」の開始を宣言していた。

武装集団は飛行場に対して、数百発のロケット砲を打ち込み、反体制系のサイトなどによると、この攻撃でシリア軍戦車が破壊されたほか、スワイダー県西部のナジュラーン村近郊(ないしはダルアー県ブスル・ハリール市郊外)にシリア軍戦闘機(MiGと思われる戦闘機)墜落、その映像(http://all4syria.info/Archive/222604https://www.youtube.com/watch?v=evC7mRUppMk&feature=youtu.be)がネット上にアップされた。

しかし、SANA(6月11日付)は、「タクフィール主義テロ組織がサアラ航空基地を制圧したとの一部報道はまったく根拠がない」としたうえで、シリア軍が、サアラ航空基地に数度にわたって侵入を試みようとした「タクフィール主義テロ集団」を撃退、100人以上の「テロリスト」を殲滅、装甲車数十両を破壊した、と報じた。

またスワイダー県のアーティフ・ナッダーフ知事もシリア・アラブ・テレビ(6月11日付)に対して、「スワイダー県の生活は通常通り」と述べ、サアラ航空基地陥落を否定した。

なお、シリア軍戦闘機の墜落に関して、自由シリア軍南部戦線第1戦線広報局は、23mm機関砲で戦闘機を撃墜したと発表する一方、SANAは「南部で戦闘機が墜落した」と認めつつ、「墜落原因を特定するための調査」を行っていると伝えた。

他方、SANA(6月11日付)によると、「テロ組織」はサアラ航空基地一帯でシリア軍に同行取材していたシリア・アラブ・テレビの取材チームを迫撃砲で攻撃し、運転手が死亡、特派員とカメラマンが負傷した。

その後、自由シリア軍南部戦線に所属するフルカーン旅団は声明を出し、サアラ航空基地の解放が完了しておらず、依然としてシリア軍との戦闘が続いていると発表した。

**

ダルアー県では、SANA(6月11日付)によると、ウンム・ワラド村、東カラク村、ラフム村など、サアラ航空基地(スワイダー県)近郊の複数の村にあるシャームの民のヌスラ戦線の拠点などに対して、集中的な特殊作戦を敢行し、戦闘員22人を殲滅、数十人を負傷させた。

シリア軍はまた、ダルアー市南西部の第16ブロックでもヌスラ戦線の拠点に対して攻撃を加え、同地を制圧したほか、ダルアー市各所、東ムライハ町、西ムライハ村、シャイフ・フサイン高地、サカーカー高地、ブスル・ハリール市、ナーフタ町、アトマーン村、カフルシャムス町、カフル・ナースィジュ村で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、ヌスラ戦線、イスラーム・ムサンナー運動の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市ザフラー協会地区にある孤児院近くでシリア軍が、反体制武装集団が掘削した地下トンネルを爆破、また同地一帯でシリア軍、国防隊、バアス大隊、ヒズブッラー戦闘員が、アンサール・ディーン戦線、ムハージリーン・ワ・アンサール軍などジハード主義武装集団と交戦した。

一方、SANA(6月11日付)によると、ハーン・トゥーマーン村、カフルハムラ村、ドゥワイル・ザイトゥーン村、マンスール村、アレッポ市ライラムーン地区、フィルドゥース地区、サーリヒーン地区、バーブ・ハディード地区、ハナーヌー地区、カマーリー地区、サールーフ地区、タッル・ザラーズィール地区、旧市街、ラーシディーン地区、ザフラー協会地区で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、タマーニア町、アブー・ズフール航空基地などをシリア軍が空爆した。

一方、SANA(6月11日付)によると、ナージヤ村、ジスル・シュグール市、アリーハー市、ムハンバル市西部、マルイヤーン村、マジャース村、ハミーマート・ダーイル村、アブー・ズフール町をシリア軍が空爆し、ファトフ軍の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍がカストゥーン村にあるジハード主義武装集団の本部を「樽爆弾」で空爆、またサラミーヤ市南西部郊外のハムル高地、アイドゥーン村などで、シリア軍、国防隊がジハード主義武装集団と交戦した。

一方、SANA(6月11日付)によると、ルージュ平原のジャドラーヤー村、ジャニー・アルバーウィー村、ミンタール村、ウカイリバート町で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ヒムス県では、SANA(6月11日付)によると、タッルドゥー市で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ダマスカス郊外県では、SANA(6月11日付)によると、サアサア町、ザブディーン村郊外、ダイル・アサーフィール市、バハーリーヤ村郊外、ナシャービーヤ町、ドゥーマー市およびその一帯、ザバダーニー市で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、アジュナード・シャーム・イスラーム連合、ラフマーン軍団の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ダマスカス県では、SANA(6月11日付)によると、ジャウバル区で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ラタキア県では、SANA(6月11日付)によると、アラーフィート・アイドゥー村、タルティヤーフ村、サーキヤト・カルト村、キンサッバー町で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

AFP, June 11, 2015、AP, June 11, 2015、ARA News, June 11, 2015、Champress, June 11, 2015、al-Hayat, June 12, 2015、Iraqi News, June 11, 2015、Kull-na Shuraka’, June 11, 2015、al-Mada Press, June 11, 2015、Naharnet, June 11, 2015、NNA, June 11, 2015、Reuters, June 11, 2015、SANA, June 11, 2015、UPI, June 11, 2015などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.