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国内の暴力
イドリブ県では、シリア人権監視団によると、反体制武装勢力がタフタナーズ空軍基地を制圧したが、その数時間後に、軍が基地の破壊を目的に、報復の空爆を行った。
同監視団によると、タフタナーズ空軍基地は、シャーム自由人大隊、イスラーム前衛隊、シャームの民のヌスラ戦線によって制圧され、空軍基地を防衛していたシリア軍の車輌はイドリブ市に向けて退却し、多くの兵士・士官が基地から逃亡したという。
一方、SANA(1月11日付)によると、マアッラト・ヌウマーン市などで、軍が反体制武装勢力と交戦、殲滅した。
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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ヤルムーク区で反体制武装勢力と軍が交戦した。
またタダームン区が軍の砲撃を受けた。
一方、ヴィクトリア橋近くのサウラ通りで爆弾が仕掛けられた車が爆発した、という。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ミスラーバー市、シャブアー町およびその周辺、ザマルカー町、ザバダーニー市、ヤルダー市、ムウダミーヤト・シャーム市、ダーライヤー市、バービッラー市、ハジャル・アスワド市を軍が砲撃、またダーライヤー市で軍と反体制武装勢力が交戦した。
一方、SANA(1月11日付)によると、ムライハ市、ハラスター市、ダーライヤー市、フサイニーヤ町などで軍が反体制武装勢力の拠点を破壊し、戦闘員を殺傷、武器弾薬を押収した。
またジャルマーナー市では、反体制武装勢力が緊急電力供給施設・変電所を砲撃し、1人が死亡、3人が負傷した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市ジャズマーティー地区に迫撃砲が着弾し、子供2人を含む市民4人が死亡した。
またマンナグ航空基地周辺で、軍と反体制武装勢力が交戦した。
一方、SANA(1月11日付)によると、マーイル町、マアーッラ・アルティーク市、アターリブ市、アレッポ市ハイダリーヤ地区、フィルドゥース地区、旧市街、カッラーサ地区などで軍が反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷した。
他方、AFP(1月10日付)は、シリア軍消息筋の話として、「シリア国防省はアレッポ県治安委員会の要請に基づき、県民を同県の共和国護衛隊に徴用することに同意した」と報じた。
この合意には、徴兵猶予、新規徴兵対象者も含み、県内の都市の防衛にあたることを目的としているという。
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タルトゥース県では、シリア人権監視団によると、バーニヤース市バトラーヤー地区の軍の検問所を何者かが襲撃し、治安要員1人が死亡、1人が負傷した。
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ハマー県では、SANA(1月11日付)によると、タイバト・イマーム市で軍が反体制武装勢力と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、武器弾薬を押収した。
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フェイスブックなどでは反体制活動家が「死の(避難民)キャンプの金曜日」と銘打って反体制デモを呼びかけた。
ユーチューブなどでは、ハマー県カフルヌブーダ町、ラターミナ町、ダマスカス県アサーリー地区、アレッポ県バーブ市、ダマスカス郊外県ダーライヤー市、ドゥーマー市などで行われたとされる反体制デモの映像がアップされ、映像のなかで参加者はアサド大統領の演説に拒否の姿勢を示し、その退陣を強く求めた。
反体制勢力の動き
シリア国民評議会は、イスタンブールで記者会見を開き、シリア革命反体制勢力国民連立のロンドンでの非公式国際会合を受けるかたちで、アサド政権打倒後の移行期間に関する計画を発表した。
同計画の骨子は以下の通り:
1. シリア革命反体制勢力国民連立が暫定政府を指名、国際社会による同政府の承認と活動支援。
2. バッシャール・アサドおよび政権の象徴的人物の解任。
3. シリア革命反体制勢力国民連立による立法権、行政権の掌握。現政権解任と、人民議会、治安機関の解散。軍最高司令部、第4師団、共和国護衛隊の解散。すべての政治犯の釈放。
4. シリア革命反体制勢力国民連立による行政権の暫定政府への移転を定めた政令の発令。
5. シリア革命反体制勢力国民連立による現行憲法の廃止。
6. 暫定政府の監視のもとでの、自由シリア軍参謀委員会・司令官と、弾圧に与しなかったシリア軍士官の停戦合意、軍の撤退、革命家の軍・治安部隊への参加、市民平和の実現。
7. 体制打倒1ヶ月以内のシリア革命反体制勢力国民連立による国民大会の召集とすべての政治・革命勢力の参加。
8. 国民大会開催後のシリア革命反体制勢力国民連立の解体と移行期政府の樹立。
9. 国民大会での真実公正実現国民和解委員会設置を通じた、前政権時代の犯罪に対する制裁の開始。
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シリア国民変革潮流は声明を出し、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表による仲介努力に関して、「いかなる相互理解、合意、問題解決に至ることも不可能」と非難し、共同特別代表を退任するよう求めた。
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クッルナー・シュラカー(1月11日付)などによると、内務省総合情報部外務課(al-far’)内の第30班(al-qism)のジュムア・フィラージュ・ジャースィム次長がビデオ声明を発表し、離反を宣言した。
第30班は外国籍を持つシリア人在外居住者の監視などを担当する部局だという。
クルド民族主義勢力の動き
イラクのエルビルで10日に開催されたシリア・クルド国民評議会の大会が2日間の審議を終え閉幕した。
クッルナー・シュラカー(1月11日付)によると、シリア革命反体制勢力国民連立への加盟の是非、ハサカ県ラアス・アイン市への自由シリア軍・ジハード主義者の侵入への対応などに関して集中的に議論がなされたが、いずれも結論を得ずに大会は開会した。
諸外国の動き
アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表はジュネーブで、ロシアのミハイル・ボグダノフ外務副大臣、ウィリアム・バーンズ米国務副長官と会談し、シリア情勢への対応について協議した。
会談後の記者会見では、ブラーヒーミー共同特別代表は、「我々は、この紛争において軍事的解決はないとの見解を改めて強調し、ジュネーブ合意に基づき政治的解決を実現する必要があることを確認した」と述べた。
また「シリア政府の声明(外務在外居住者省による抗議声明)は見た。彼らは自分の見解を表明したが、同時に私との協力の継続の準備があるとも言っている」と述べ、自身がシリアの政治的解決においてシリア政府の現高官の居場所はないと発言したことはない、と付言した。
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フランスのフランソワ・オランド大統領は、シリアの反体制勢力に対して、「テロが活動の余地を見出せないよう、またあらゆるテロ活動が排除されることを条件に必要なあらゆる支援を提供する」と述べた。
またシリアでの体制転換が実現するよう努力しているとしたうえで、「フランスはシリア革命反体制勢力国民調整委員会を最初にシリア国民の正統且つ唯一の代表として承認した国だ…。この連立は日々、組織され、強化されている」と付言した。
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UNHCR報道官は、ジュネーブでの記者会見で、シリア人避難民の数が612,000人に達したと発表した。
避難民の国別内訳は、レバノンが194,000人、ヨルダンが176,000人、トルコが153,000人、イラクが69,000人。
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ロイター通信(1月11日付)は、欧米およびイスラエルの専門家の話として、シリア政府が数十トンの非濃縮ウランを保管している可能性がある、と報じた。
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『ハヤート』(1月11日付)などは、ニューヨークの複数の外交筋の話として、スイスは、シリアでのすべての犯罪・侵害を国際刑事裁判所に起訴することを求める請願書を安保理に提出する準備を進めており、チュニジア、リビアなど50カ国がこの請願書にすでに署名済みだと報じた。
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AFP(1月11日付)は、オーストリア、デンマーク、アイルランド、スロヴェニアの外務大臣が、シリアの紛争の国際刑事裁判所での審理を国連安保理に求める合同書簡を提出したと報じた。
AFP, January 11, 2013、Akhbar al-Sharq, January 11, 2013、al-Hayat, January 12, 2013、Kull-na Shuraka’, January 11, 2013、al-Kurdiya News, January 11, 2013、Naharnet, January 11, 2013、Reuters, January 11, 2013、SANA, January 11, 2013などをもとに作成。
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