シリア軍がダーイシュ(イスラーム国)の支配下にあるタドムル市(パルミラ遺跡)への進軍を開始(2015年7月9日)

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、シリア軍がダーイシュ(イスラーム国)の支配下にあるタドムル市およびその周辺地域を空爆、国防隊、バアス大隊、部族民兵とともにダーイシュと交戦した。

これに関して、シリア・アラブ・テレビ(7月9日付)は、「ダーイシュのテロリストを追撃し、タドムル市を浄化する」ための地上・航空軍事作戦が開始され、タドムル市方面の複数カ所を軍が制圧したと伝えた。

一方、シリア人権監視団は、シリア軍がタドムル市から約5キロの地点にまで迫り、ダーイシュと激しく交戦、「タドムル市にいつでも突入可能で、シリア軍と同市を隔てるのは砂漠地帯だけ」だと発表した。

他方、SANA(7月9日付)によると、シリア軍がタドムル市郊外の自動車教習学校一帯でダーイシュ(イスラーム国)と交戦、同地を制圧した。

またこれに先立ち、シリア軍戦闘機が、タドムル市内および同市郊外のダーイシュ拠点を空爆し、複数の戦闘員を殺傷した。

タドムル市一帯以外でも、シリア軍は、シャーイル・ガス採掘所一帯、タドムリーヤ村、ウンム・タバービール村、ジバーブ・ハマド村、ヒブラ村、ウンム・リーシュ村を空爆、柑橘農園郊外のSyriatel、農業改革機構支部一帯でダーイシュを追撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊が、有志連合の空爆による援護を受け、アイン・イーサー市に潜入しようとしたダーイシュ(イスラーム国)を撃退した。

また、クッルナー・シュラカー(7月9日付)によると、イスラーム国はハサカ市南部のパノラマ交差点のシリア軍検問所を爆弾を積んだ車による自爆攻撃などで襲撃し、シリア軍、国防隊と交戦、同交差点や運輸局を制圧した。

一方、ハサカ県では、SANA(7月9日付)によると、ハサカ市南部のファンダキーヤ学校周辺、パノラマ交差点一帯、運輸局一帯をシリア軍が空爆し、ダーイシュ(イスラーム国)の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またハサカ市南東部のマジュバル・ザフティー村で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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シリア人権監視団は、スイスの国営テレビSRFが死亡したと報じた元キック・ボクシングの世界王者でアルバニア系ドイツ人のヴァルデト・ガシ氏(29歳)の消息に関して、6月末にダーイシュ(イスラーム国)支配地域から逃走を試みたが、ダーイシュに拘束され、アレッポ県マンビジュ市の刑務所に拘置されたと発表した。

ガシ氏は家族とともにシリアに入り、ジハード主義武装集団に参加していたとされる。

ロイター通信(7月7日付)などが伝えた。

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シャーム自由人イスラーム運動は声明を出し、サルミーン市近郊のナイラブ村でダーイシュ(イスラーム国)の細胞を摘発した、と発表した。

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米中央軍(CENTCOM)は、7月9日にシリア、イラク領内のダーイシュ(イスラーム国)拠点などに対して31回の空爆を行ったと発表した。

このうちシリア領内での空爆は15回におよび、ハサカ市近郊(7回)、アレッポ市近郊(1回)、ラッカ市近郊(2回)、アイン・イーサー市(ラッカ県)近郊(1回)、アイン・アラブ市近郊(1回)、タッル・アブヤド市近郊(3回)のダーイシュに対して攻撃が行われたという。

AFP, July 9, 2015、AP, July 9, 2015、ARA News, July 9, 2015、Champress, July 9, 2015、al-Hayat, July 10, 2015、Iraqi News, July 9, 2015、Kull-na Shuraka’, July 9, 2015、July 10, 2015、al-Mada Press, July 9, 2015、Naharnet, July 9, 2015、NNA, July 9, 2015、Reuters, July 9, 2015、SANA, July 9, 2015、UPI, July 9, 2015などをもとに作成。

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