2012年12月28日のシリア情勢

国内の暴力

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ワーディー・ダイフ軍事基地周辺で軍と反体制武装勢力が交戦、また軍が空爆を行い、多数の反体制武装勢力戦闘員が死亡、軍の一大拠点だというハーミディーヤ軍事基地周辺から退却した。

同監視団は、軍事基地攻略がダマスカス・アレッポ街道再開を不能とし、アレッポへの軍の兵站路と政府の人道支援物資ルートを絶つことを目的としていると述べた。

現地の反体制活動家によると、攻略はシャームの民のヌスラ戦線が主導している、という。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ国際空港近くで、シャームの民のヌスラ戦線をはじめとする武装集団が軍と交戦し、「空港防衛の任務にあたっている軍の拠点周辺に進軍した」。

同監視団によると、アレッポ国際空港は、アレッポへのシリア政府による人道支援物資や兵站の搬入を絶つ作戦の一環だという。

一方、SANA(12月28日付)によると、サフィーラ市、ウワイジャ地区、カフルナーヤー市、フライターン市、ズィルバ村、ナッカーリーン村、アレッポ市バニー・ザイド地区、ブスターン・カスル地区などで、軍が反体制武装勢力に対する特殊作戦を行い、多数の戦闘員を殺傷した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アッサール・ワルド町を軍が空爆し、民間人1人が死亡、数十人が負傷した。

またダーライヤー市、ヤルダー市、ドゥーマー市、アルバイン市、ハラスター市などで砲撃が再開された。

一方、SANA(12月28日付)によると、ドゥーマー市、ハラスター市、ダーライヤー市、フジャイラ村、ズィヤービーヤ町、ナバク市、ヤブルード市、フサイニーヤ町などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷した。

またバイト・スィヒム市では電力省管轄の送電機構の職員1人が反体制武装勢力によって殺害され、複数が負傷した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カーブーン区、カダム区で軍と反体制武装勢力が交戦し、迫撃砲が着弾した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(12月28日付)によると、ダイル・ザウル市、マヤーディーン市などで軍が反体制武装勢力の追撃を行い、ファルカーン旅団、イブン・タイミーヤ旅団のメンバーなど多数の戦闘員を殺傷した。

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ヒムス県では、SANA(12月28日付)によると、ヒムス市ダイル・バアルバ地区で軍が反体制武装勢力を追撃、戦闘員が武器密輸などに使用していた地下トンネルを発見した。

またアフワーシュ・ディーワーニーヤ地方、ガントゥー市、タルビーサ市および同市郊外などで、軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

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反体制活動家がフェイスブックなどで「血のパンの金曜日」と銘打って反体制デモを行うよう呼びかけた。

『ハヤート』(12月29日付)によると、ヒムス県ワアル地区などで発生したデモでは、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表のシリア訪問への反対の意が示された。

反体制武装勢力の動き

マナーラ・バイダー広報制作機構なる組織はユーチューブ(12月28日付)を通じたシャームの民のヌスラ戦線の指導者を名乗るアブー・ムハンマド・ジャウラーニーの声明を発表した。

同声明で、ヌスラ戦線は「この体制(アサド政権)を延命させようと米国、国際社会が支援し、猶予を与え、(国連)監視団を派遣し、休戦をめざそうとしている」と非難した。

また「米国はヌスラ戦線をテロ組織に指定するいことで地域におけるその役割が失敗したことを表明し…、イスラーム世界の人民の怒りを買った」と付言した。

そのうえで、アサド政権打倒後に、「ムジャーヒドゥーン」による支配がなされるだろうと述べた。

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クッルナー・シュラカー(12月28日付)は、シャームの民のヌスラ戦線がユーチューブで声明を出し、スワイダー県で「ドゥルーズ派」が拘束した「スンナ派」住民(ダルアー県住民)を48時間以内に釈放するよう要求、釈放されない場合は、自らが拉致している20人の市民(ドゥルーズ派)を殺害すると脅迫した。

同報道によると、事の発端は、約1週間前にスワイダー県ムジャイミル村の検問所を襲撃した反体制武装勢力多数が殺害、2人が捕捉されたことを、ヌスラ戦線が「シャッビーハの犯行」と断じ、村人多数を誘拐したことにあるという。

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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長は、スカイニューズ・アラビック(12月28日付)に対して、ロシアのミハエル・ボクダノフ外務副大臣による会談の呼びかけに対して、ロシアに訪問する意思はないとしたうえで、ロシアとアラブ諸国の会議を提案、またセルゲイ・ラヴロフ外務大臣に対してアサド政権を支援したことをシリア国民に謝罪するよう求めた。

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シリア革命反体制勢力国民連立のワリード・ブンニー報道官は、アサド政権との対話を求めるロシアの呼びかけに関して、「連合はあらゆる者と政治的対話を行う準備がある。しかしアサド政権との対話や交渉を行わないということが基礎となる…。すべてはアサド政権が去ってから生じる」と述べ、慎重な姿勢を示した。

またロシアによるアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長のモスクワ訪問の呼びかけについては、「モスクワの意図が不明瞭だ」と述べ、是非を明言しなかった。

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シリア革命反体制勢力国民連立は、ナジーブ・ガドバーンを在米代表に、アディーブ・シーシャクリーを在GCC代表に、ワリード・ブンニーを在ハンガリー代表に任命した。

シリア国民評議会のシリア広報通信センターが伝えた。

なおこれに先立ち、連立はムンズィル・マーフースを在フランス代表に、ワリード・サフールを在英代表に任命している。

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ザマーン・ワスル(12月28日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立がエジプト外務省から施設を賃借りし、本部開設の準備を進めている、と報じた。

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シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー事務局長はトルコの野党、共和人民党の議員2人と会談し、シリア情勢について意見を協議した。アナトリア通信(12月28日付)が伝えた。

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アフバール・シャルク(12月28日付)はトルコ外交筋の話として、シリア空軍の少将2人が兵士数十人とともに離反し、トルコのハタイ県に避難したと報じた。

一方、アクス・サイル(12月28日付)は、アレッポ士官学校を離反した准将、大尉がトルコに避難したと報じた。

クルド民族主義勢力の動き

クルディーヤ・ニューズ(12月28日付)は、シリア・クルド民主政治連合の議長にシリア・クルド国民評議会議長でシリア・クルド民主党(アル・パールティ)書記長のアブドゥルハキーム・バッシャールが就任したと報じた。

レバノンの動き

UNHCRはレバノン国内のシリア人避難民が170,637人に達したと発表した。このうち126,724人が難民登録を済ませているという。

パレスチナ人の動き

シリア人権監視団は、『ハヤート』(12月28日付)に対して、パレスチナのハマースの軍事部門であるイッズッディーン・カッサーム旅団の戦闘員、ムハンマド・アフマド・クナイタ(35歳)がイドリブ県マアッラト・ヌウマーン市での戦闘で死亡したと発表した。

同監視団によると、クナイタはシャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人大隊などともに戦闘に参加していた。

これに関して、フェイスブックのページ「ロシアと中国を嫌う数百間人」は、クナイタが12月25日に死亡したと伝えた。

同ページによると、クナイタは「鷹」の名で知られ、イッズッディーン・カッサーム旅団の元戦闘員だという。

諸外国の動き

ロシアのミハエル・ボクダノフ外務副大臣は、ロシアが、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長に対して、モスクワ、ジュネーブ、ないしはカイロでの会談を呼びかけていると述べた。

RIAノーヴォスチ通信(12月28日付)によると、「我々はすでに招聘状を送り、それはアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長に届いた」という。

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ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外務大臣は、エジプトのムハンマド・カーミル・アムル外務大臣との会談後の記者会見で、アサド政権が反体制武装勢力との対話の意思を示したとしたうえで、「シリアの指導部とのこれまでの会談で、対話の準備に関するこれまでの言葉を具体的な行動に移す必要を確認した」と述べた。

またラヴロフ外務大臣は反体制武装勢力に対して、「いかなる対話をも行わずして体制打倒に力点を置くのではなく、対話への方途を検討」するよう呼びかけ、この点に関して米国などと協議していると述べた。

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ロシアの外交筋は『ハヤート』(12月29日付)に対して、ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣との2日にわたる協議で、シリア政府が近くファールーク・シャルア副大統領のもとで、国内での暴力停止後の暫定内閣発足や選挙の仕組みを確定するための国民対話を呼びかけを行う意思を示した、と述べた。

同外交筋によると、セルゲイ・ラヴロフ外務大臣との27日の会談で、ミクダード副大臣は、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表の提案に対して「態度を保留する」としたうえで、近くシリア政府が公式の立場を表明すると述べたという。

AFP, December 28, 2012、Akhbār al-Sharq, December 28, 2012、‘Aks al-Sayr, December 28, 2012、Facebook, December 28, 2012、al-Ḥayāt, December 28, 2012, December 29, 2012、Kull-nā Shurakā’, December 28, 2012、al-Kurdīya
News, December 28, 2012、Naharnet, December 28, 2012、Reuters, December 28,
2012、SANA, December 28, 2012、Zamān al-Waṣl, December 28, 2012などをもとに作成。

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