『ハヤート』(9月12日付、イブラーヒーム・ハミーディー記者)は、レバノンの首都ベイルートに本部を置く国連ESCWA(西アジア経済社会委員会)で、「シリアの未来のための国民アジェンダ」計画検討大会が開かれ、紛争下のシリアにおける平和構築、復興事業について意見が交わされた。
「シリアの未来のための国民アジェンダ」(http://www.escwa.un.org/sites/ESAR/project.asp?ProjectTitle=The%20National%20Agenda%20for%20the%20Future%20of%20Syria)プログラムは、シリア人専門家ら約300人が参加して進められている紛争和解・復興に向けたプロジェクトで、2014年9月にも「The Conflict in the Syrian Arab Republic: The Impact at the Macroeconomic Level and the Obstacles on the Way to the Millennium Development Goals」と銘打たれた報告会が行われていた。
シリアの元副首相のアブドゥッラー・ダルダリー氏を事務次長とするESCWAが主催したこの大会では、以下のような議題をめぐってさまざまな議論が交わされたという。
政治的移行を確実なものとし、紛争後の移行プロセスを確固たるものとすること。
治安部門の改革についての関心を高め、政治的な党派主義を廃した共和制に基づく治安態勢の原則を構築すること。
紛争の平和的解決、司法の独立、司法における決定を尊重し、復讐を抑止すること。
3年後の「平和実現」(peacemaking)の達成と、その後7年での「平和構築」(peacebuilding)。
こうした議題が議論されるなかで、以下のような諸提案が参加者から行われたという。
ダマスカス郊外県グータ地方、とりわけイスラーム軍の拠点であるドゥーマー市一帯での政府によるアンズ生産農業再生計画の策定と実施。
製糸業育成プロジェクト
収監者の社会復帰と、生産プロジェクトへの参与を促す教練を施すことで「自分たちが人間だ」と感じ取れるような意識の醸成。
羊など家畜の保護
畜産業、農業の伝統の維持、農地改革の実行、砂漠化対策
女性が主体となる手工業、裁縫、編み物などの育成・支援
大会ではまた、治安と安全が保障されなければ、開発・復興事業は開始できないとの認識のもと、治安と安全を確保したうえで、平和構築を開始すべきだとの点が強調された。
また、避難民約500万人が、国外であれ、国外であれ、シリア政府の支配地域外にとどまり続けているという現実を踏まえ、シリア人の帰還権の保障する必要があるとしつつ、この権利を義務として科すことにも慎重であるべきとの提言もされた。
一方、治安機関の改革をめぐっては、法律違反者が処罰されない法・制度の廃止、法律のもとで治安機関を祖国防衛と国家の大改革に従事させるべきとの提案がなされた。
また、「移行期統治機関」や、憲政上の真空をもたらさないような政治的移行プロセスのシナリオについての意見が交わされるとともに、「移行期政府」と「移行期統治機関」の違いが、国内の法的仕組み、国際社会における義務などを踏まえて、議論された。
一方、紛争解決プロセスに中東地域を統合していくための方途や、国際関係についても意見が交わされ、そこでは、アラブ諸国だけでなく、シリアにより大きな影響力を行使し得るトルコやイランといった中東諸国との関係を考慮し、シリアの未来を構築することを考慮するべきだとの意見があった。
また、諸外国との関係を考慮する以前に、「シリア人の見解、国益がまず、シリアの未来のアジェンダには反映されるべき」との意見も聞かれた。
統治の正統性や諸外国との関係については、これまでシリア政府がイラン、ロシアとの間で締結した諸合意が、どの程度遵守されるべきかなどが議論された。
これに関して、出席者のなかからは、国家の正統性は、政府から政府に継承されるものではなく、シリア・アラブ共和国そのものが、国際社会において国家として承認された政体で、主権と統治が保障されているとの意見が示された。
また、シリア革命反体制勢力国民連立やその傘下の暫定内閣については、国際社会における承認を得ておらず、また領土を支配していないため、法的な承認を得ていないとの見解も示された。
AFP, September 12, 2015、AP, September 12, 2015、ARA News, September 12, 2015、Champress, September 12, 2015、al-Hayat, September 13, 2015、Iraqi News, September 12, 2015、Kull-na Shuraka’, September 12, 2015、al-Mada Press, September 12, 2015、Naharnet, September 12, 2015、NNA, September 12, 2015、Reuters, September 12, 2015、SANA, September 12, 2015、UPI, September 12, 2015などをもとに作成。
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