アサド大統領はパリでの同時多発テロの犠牲者に弔意を示すとともに、フランス政府に「テロとの戦いに真剣に取り組み、国民のために行動せよ」と忠告(2015年11月14日)

アサド大統領は、シリアを訪問中のフランス議員・有識者・記者の使節団(ティエリー・マリアーニー議員が代表)とダマスカスで会談し、シリア情勢などへの欧米諸国の対応などについて意見を交わした。

SANA(11月13日付)によると、会談冒頭、アサド大統領は、13日にパリで発生した同時多発テロの犠牲者に対して弔意を示した。

そのうえで、「この事件はレバノンの首都ベイルート南部郊外で12日に発生した連続自爆テロや、シリアをはじめとする中東諸国で過去5年間にわたって続いている一連の出来事と分けることはできず、テロが世界のなかで一体的な拡がりをもって生じており、テロ組織は国境を認めていない」との見方を示した。

アサド大統領はまた、「欧米諸国、とりわけフランスが我々の地域において起きていることに対してとってきた誤った政策、そしてフランスの同盟国の一部によるテロリスト支援を黙認してきたことが、テロ拡大をもたらしてしまった…。テロ支援を兵站面、そして政治面で食い止めるための新たな政策の採用と実質的な措置の実施が重要となっており、それによってテロを根絶しなければならない」と強調した。

これに対して、フランス使節団は、「テロとの戦い」に向け、国際社会、そして中東地域全体が一丸となって努力する必要があると応えるとともに、「テロとの戦い」におけるシリア国民の苦難に同情の意を示した。

SANA, November 14, 2015

SANA, November 14, 2015

**

フランス使節団との会談後、アサド大統領は記者団を前に、パリでの連続テロ事件の犠牲者の遺族に弔意を示したうえで、以下のように述べた(https://youtu.be/AS9paY8iGp8):

「昨日(13日)にフランスで起きた事件は、2日前にベイルートで起きた事件と不可分だ。なぜならテロそのものだからだ。我々はテロがどこで置きようと、それを注視せねばならない。シリア、イエメン、リビア、フランスのどこで置きようと、テロとは世界全体に拡がっているからだ」。

「我々は事件について何らの情報も持っていない。だが、問題は実行犯の名前や出身地とは関係ない。我々は3年前から欧州で事件が起きると警鐘を鳴らしてきた…。しかし西欧の高官らは我々が言うことに関心を示さず、我々は脅迫していると主張した。彼らはまた、今年初めのシャルリー・エブド事件からも何も学ばなかった。テロに反対しているという声明を出しても何の意味もない。彼らはテロと戦わねばならず、正しい政策を実施しなければならない」。

(フランスの治安当局がシリアの治安当局にテロとの戦いでの支援を求めてきたか、との問いに対して)「彼ら(フランス)は真剣に対処しさえすれば、我々には彼らとともにテロとの戦いを行う用意がある。我々は、テロとの戦いを真剣に行う者であれば誰とでも協力する用意がある。しかし、フランス政府は今のところ真剣だとは言えない」。

「(フランソワ・オランド大統領は)、自国民の利益のために行動すべきだ。すべてのフランス国民が今日彼に投げかけている質問とは次のようなものだ。過去5年間のフランスの政策はフランス国民に何か良い結果をもたらしたのか? 答えは「いいえ」だ。私が彼に何か頼むとしたら、それはフランス国民のために行動せよ、ということだ。彼がそれを望むのなら、政策を転換しなければならない」。

「(フランスとの)政治的協力関係が行われる前に、治安機関との協力について話すことはできない。フランス政府の政策がテロ支援という枠組みのなかで行われている限り、テロとの戦いに向けた治安機関との協力について話すことはできない」。

SANA, November 14, 2015

SANA, November 14, 2015

 

AFP, November 14, 2015、AP, November 14, 2015、ARA News, November 14, 2015、Champress, November 14, 2015、al-Hayat, November 15, 2015、Iraqi News, November 14, 2015、Kull-na Shuraka’, November 14, 2015、al-Mada Press, November 14, 2015、Naharnet, November 14, 2015、NNA, November 14, 2015、Reuters, November 14, 2015、SANA, November 14, 2015、UPI, November 14, 2015などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.