ロシアのラヴロフ外相「米国はあらゆる手を尽くしてアル=カーイダやダーイシュに次ぐ新たな野獣を作り出そうとしている」(2016年12月14日)

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、スイスのジュネーブで行われていたアレッポ市東部での停戦に向けた米国・ロシアの交渉に関して、「米国はあらゆる手を尽くして、ヌスラ戦線(シャーム・ファトフ戦線)の戦闘員を攻撃させないようにし、そうすることでアル=カーイダやダーイシュ(イスラーム国)に次ぐ新たな野獣を作り出し、世界全体にテロの脅威をもたらそうとしている」と批判した。

ラブロフ外務大臣は「米国は、停戦を発効し、武装集団の戦力を強化しようとしなければ、人道回廊の設置でとっくに合意できていたはずだ。実際に我々はこの間、アレッポ市東部から武装集団を退去させることができていたからだ」と述べた。

そのうえで「イラク、リビア、そしてイエメンでさえ、交渉のテーブルに着く前に、戦闘停止を求める者はいないのに…、シリアでは米国はそれを要求する。モスル解放作戦が突如と停止し、我々はタドムルで先日起こったことを目の当たりにさせられた…。米国はダーイシュが武器をもって出て行くための回廊を放置しており、彼らはこの回廊を経て、タドムルに向かったのだ」と付言した。

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一方、ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、トルコの仲介のもとに成立したロシア軍と反体制武装集団の停戦合意にもかかわらず、戦闘員や住民のアレッポ市南東部からの退去が予定通り(14日午前5時)に行われなかったことに関して、「シリア軍側が前向きなダイナミズムが示されており、テロリストからアレッポ市を解放する作戦はまもなく終わるだろう」としたうえで、ヴラジミール・プーチン大統領とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が電話会談で合意履行に向けて協議したことを明らかにした。

ロシア国防省は、シリア軍が完全包囲するアレッポ市南東部の反体制武装集団支配地域が2.5平方キロに満たないとしたうえで、停戦合意が履行されなかったことの責任が反体制武装集団側による攻撃再開にある、と非難した。

ロシア国防省はまた、過去24時間でアレッポ市南東部の反体制武装集団支配地域から子供2,210人を含む5,992人がシリア政府支配地域に脱出、戦闘員366人が投降したと発表した。


AFP, December 14, 2016、AP, December 14, 2016、ARA News, December 14, 2016、Champress, December 14, 2016、al-Hayat, December 15, 2016、Iraqi News, December 14, 2016、Kull-na Shuraka’, December 14, 2016、al-Mada Press, December 14, 2016、Naharnet, December 14, 2016、NNA, December 14, 2016、Reuters, December 14, 2016、SANA, December 14, 2016、UPI, December 14, 2016などをもとに作成。

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