アサド大統領は日本のテレビ局(JNN)のインタビューに応じる「日本の対シリア政策は日本人の価値観、道徳、国際法に基づいていない!」(2017年1月20日)

アサド政権はJNNの単独インタビューに応じた。

アサド大統領が日本のテレビ局のインタビューに応じるのは2011年に「アラブの春」が同国に波及して以降初めて。

インタビューはTBSの「News 23」の星浩キャスターが英語で行い、その一部は19日午後11時の「News 23」(https://www.youtube.com/watch?v=OlW5Ku34O5M)で、全編は20日午後3時(日本時間)にCS放送の「TBSニュースバード」で放映された。

TBS News, January 19, 2017

TBS News, January 19, 2017

また、シリア大統領府も「TBSニュースバード」放送直後に、Youtubeを通じて全編(https://www.youtube.com/watch?v=At_KF5DjXSY)を公開、またSANAが英語全文(http://sana.sy/en/?p=98592)、アラビア語全訳(http://www.sana.sy/?p=497742)を公開した。

SANA, January 20, 2017

SANA, January 20, 2017

インタビューにおけるアサド大統領の主な発言は以下の通り:

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「(1月23日にカザフスタンの首都アスタナで開催予定のシリア政府と反体制武装集団の和平協議(アスタナ会議)に関して)我々は期待していない。アスタナがさまざまなシリアの当時者があらゆることについて話し合う場になればと希望している。だが、最初に焦点を当てるべきだと思うのは…生命を守り、人道支援がシリア各地に届くようにするための…停戦だ。この会議が政治的な対話になるのかがまだ明確ではない。なぜなら、だれが参加するのかが明確ではないからだ。今のところ、政府とテロ組織が停戦し、テロ組織が武器を棄て、政府の恩赦を受け、和解に参加できるようにするために対話すること…これが唯一期待できることだろう」。

「議論されるすべては憲法に基づくべきだ。なぜなら、それは政府と反体制派、ないしは政府とテロ組織の問題ではないからだ。それはシリアの未来を決定する権利を持つシリアの市民の問題だ。我々の憲法には、移行政府などというものはない…。もし政府、すなわち挙国一致政府に参加したい者がいるのであれば、シリア国内外のすべての当時者が参加できる」。

「彼(ドナルド・トランプ氏)は、これまでに政治に関わったことのない数少ない米国大統領だ…。米国のメディアを含む様々なメディアは、彼(の当選)が予想外だと見ている。なぜなら、彼のヴィジョンについてほとんど知らないからだ。我々が判断に際して依拠できる唯一の材料は、大統領選挙期間中の彼のレトリックだけで、こうしたレトリックのなかで良いものだと言えるのは、「テロとの戦いが今日、我々の優先課題だ」と言ったことだ。トランプ(次期)大統領は、自身の優先課題がダーイシュ(イスラーム国)との戦いだ、と言った。もちろん、ダーイシュはテロの一側面、一テロ組織に過ぎない。ダーイシュについて言及するとき、ヌスラ(シャーム・ファトフ戦線)について言及しなければならない。シリアには現在、多くのアル=カーイダ系組織がいる。しかし、ダーイシュという言葉で、彼はテロを言い表そうとしていたのだと思う。彼が示したこの優先課題は非常に重要だと思う。だから、私は次期政権が、テロに関するこのレトリックを本当に実行し、シリア以外の国の助けになることを期待している。なぜなら、テロは今日、シリアに限られた問題ではなく、中東の、そしてグローバルな問題だからだ。だから、私たちは現実的な真の同盟が作られ、地域におけるテロとの戦いを本当に行うことを希望している。もちろんそうした同盟には、何よりもまずシリアが含まれるものとなろう」。

「我々が目にしているのは、米国が直接、ないしはプロキシ、さまざまな企業、ロビー、メディアを通じて間接に戦争を行ってきたということだ…。それらが、テロとの戦いや他国の主権尊重であれ、ロシア、中国などといった大国との善隣関係を通じた世界の緊張緩和であれ、新大統領(トランプ氏)の政策を妨害しようとしていることは極めて明らかだ」。

「率直に言うと、ダーイシュは、米国の監督のもとに作り出された…。それ(2006年に結成されたイラク・イスラーム国)は当初はイラクにしかいなかった。その後、シリアで紛争が始まると、この組織はISIS(イラク・シャーム・イスラーム国)となり、トルコがこの「国家」を支援した。なぜなら、ダーイシュは、シリアの油田を利用して輸出を行い、資金を得て、戦闘員を勧誘してきたからだ。トルコは石油の密輸に直接関与してきた…。だから、我々は、トルコ、米国がダーイシュと本当に戦うことを期待できない…。例えば…、ダーイシュは今日、ダイル・ザウル市を攻撃しているが…、米国はダーイシュの動きを封じるために何もしていない。いわゆる有志連合が1年半以上も活動しているが、彼らは何も達成していない。なぜなら、真剣ではないからだ。トルコについて言うと、エルドアン(大統領)はムスリム同胞団で、生まれながらにして無意識に…ダーイシュやアル=カーイダに同情し、密接なつながりを持っている。なぜなら、彼らは同じイデオロギーを擁しており、彼はそこから逸脱などできないからだ。彼は自分がダーイシュやヌスラといったテロリストに対抗していると見せようと策略を試みてきた。だが、彼は日常的にこれらの組織を支援し、彼の組織がなければ、これらの組織は生き延びることができなくなっている」。

「ロシアとシリアの爆撃を非難しているのは…、米国、英国、フランス、トルコ、カタール、サウジアラビアといったテロリストを支援してきた国だ。これらの国は、メディア、実際の政策、武器・資金供与、兵站支援を通じてテロリストを直接支援しており、シリアの市民のために何かを求める権利などない。なぜなら、これらの国こそが、シリアの市民、無垢の人々が6年間にわたり殺されていることの理由だからだ。これが第1だ」。

「第2に、我々政府の役割は、憲法、法、道徳的義務…に基づき、テロリストからシリア国民やシリアの市民を解放することになる。人々を殺し、すべてを破壊し、憎むべきワッハーブ主義を実行するテロリストの支配地域を見ているだけの政府を誰が受け入れるというのか…? もちろん犠牲者について言及するのであれば、すべての戦争には犠牲はつきものだ。すべての戦争が悪い戦争だ。すべての戦争が流血と殺戮だ…。良い戦争について言及できないことは自明だ。しかし、テロと戦うための戦争に訴えれば、犠牲は生じてしまう…。犠牲者が出ないように最善を尽くしてきたが、市民のために要求をしてきたという連中は、シリア、ないしはロシアが市民を殺しているという証拠を少しでも示したことがあったか? 質問を言い換えると、政府が道徳的に自国民をどのようにして殺すことができるというのか? 我々が自国民、民間人を殺してきたのなら、なぜ我々は6年もの持ち堪えられたのか? 非論理的で、非現実的だ。我々は世論の支持を受けているのでここにいるのだ」。

「もっとも重要なのは、政府は道義的に自国民を決して殺すことはなく…、自国民に対して大量破壊兵器を使用することなどないということだ。そんなことは不可能だ…。さらに重要なのは、我々は2013年に、化学兵器禁止条約に調印し…、化学兵器を放棄したということだ。我々は化学兵器を保有していない…。テロリストこそが、こうした兵器を使用してきたのだ…。2013年春、我々は国連に調査団の派遣を要請したが、米国はこの試みを阻止した。なぜなら、米国は当時、もし監視団がシリアに派遣されれば、テロリストがサリン・ガスを我が軍に対して使用した具体的な証拠をつかむことを知っていたからだ」。

「難民について言うと、それは悲劇だ。とりわけ子供は…無垢で、この戦争とは無関係だ。子供には…政治的帰属はないにもかかわらず…社会の誰にも増して代償を払わされている…。それゆえ、我々は…この問題を作り出したテロリストを排除し、平和をもたらすために最善の努力をしなければならないと感じている。これはシリア人が大統領に求めるべき問題だ…。しかし問題はどのような感情を抱いているかではなく、何をこれからするかだ。いつテロリストを排除するかが問題だ…。また西側や世界の多くの人々が言及しないもっとも重要な点は、難民問題がテロリストとかかわりがあるだけでなく、その一部は西側およびその同盟国がシリア国民に科している制裁とかかわっているということだ。この制裁は政府に対して効果はないが、シリアのすべての市民に及んでいる…。だから、多くの難民が国を去ったのだ。テロの脅威が理由ではなく、生活必需品、生活の糧が得られず、正常な生活を送れないからだ」。

「大統領の進退は国民全体にかかわる問題だ。それはすべてのシリア人にかかわっている。なぜならシリアでは大統領は国民によって直接選ばれるからだ。つまりそれは政府の権限でも反体制派の権限でもない。それはシリア人の権利で、この点に関して唯一決定を下すことができるのは、投票箱だけだ…。だから(和平プロセスにおいて辞任を考えているかとの問いへの答えは)「いいえ」だ。この問題は我々が反体制派、あるいは他国と議論する問題ではない…。改めて言うが、私は問題の原因ではない。大統領として、私は危機にあるこの国を救わねばならず、逃げたり、「私は去って、人々が自力で暮らしていかねばならない」と言ってはならないのだ。こうしたことは解決策にはならない。危機のなかにあって、大統領は陣頭指揮をとって、危機に対処すべきだ。危機が収束したら、進退について意思表明しても良いだろうが、その際でもシリア国民が、大統領が残留するか否かについて意見を述べることになる」。

「日本からの客人に対して率直に言わせて欲しい。シリアが独立して以降、数十年前にシリアと日本が関係を結んで以降、日本は、インフラ支援などで、シリアを含む国々の開発において極めて重要な役割を果たしてきた。日本は中東のさまざまな問題に関してバイアスのない姿勢を常に撮ってきた。この危機が始まるまで国際法を常に尊重してきた。しかし、日本は「シリア大統領は去るべきだ」と主張することで、初めてこうした方針に背いた。こうした姿勢は日本国民の価値観や道徳に基づいているのか? もちろん違う。日本の市民がどれだけ道徳に基づいているかは皆が知っていることだ…。日本の姿勢は国際法に基づいているのか? 違う。我々は主権国家であり、独立国家だ。世界の誰一人として、誰がとどまるべきだとか、誰が去るべきだなどと言う権限はない。残念ながら、こうした方針は欧米諸国の政策と一致している…。日本は対シリア制裁に参加した。シリア国民を支援してきたのにだ。シリア国民への制裁は日本国民の国益、日本人の価値観、法律、憲法と何か関係があるのか? 私はあるとは思わない。大使館を閉鎖し、ここで起きていることを見ずして、日本はどのような役割を果たせるというのか? 政治的に日本は多くの西側諸国同様、盲目状態で、我が国およびその政府とは関係を持っていない。日本は何が起きているのか知らないがゆえに、何の役割も果たすことはできない。情報は西側諸国からもたらされているが、それらは我々にとっては馬鹿げたものだ…。制裁を科していては、シリア復興について言及することはできない。片方の手で食料を与えながら、もう片方の手でそれを取り上げることなどできない…。日本は、国際法に立ち返らねばならない…。我々は、世界のほとんどの国と日本とを区別してきた路線に日本が立ち返ることを期待している。そうすることで、日本は、流血を食い止め、シリア復興のために重要な役割を必ずや果たすことができる。難民のほとんどが、「ようこそドイツへ」とか「ようこそフランスへ」…などと声をかけてもらいたいとは思っていない。彼らは自分の国に帰りたいのだ。彼らは外国で助けてもらいたいのではなく、ここで助けてもらいたいと考えているのだ。日本には将来、そのような役割を果たしてもらいたいと考えている。我々は、日本が過去数十年にわたって行ってきた方針に回帰することを望んでいる」。

「(安田純平氏の安否に関して)今のところ分からない。我々は彼について何の情報も持っていない。このことについて残念だと感じており、我々シリア人は、彼の家族の感情を理解できる。なぜなら、我々にも多くの行方不明者がいるからだ…。何らかの情報を得ていたのなら、あなたに伝えていただろう…。情報格差を埋めることができるのはトルコだと思う。なぜなら、トルコは(安田氏を誘拐したとされる)ヌスラ(シャーム・ファトフ戦線)の監督者だからだ。トルコはヌスラが持っているすべての情報を持っているはずだ…。残念ながら…、この件に関して日本政府からシリア政府へのコンタクトは一度もない」。

SANA, January 20, 2017、TBS News, January 19, 2017などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

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