シリアのワリード・ムアッリム外務在外居住大臣(兼副首相)、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣、イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣はモスクワで参加国外相会合を開き、イドリブ県ハーン・シャイフーン市での化学兵器攻撃疑惑、米国によるシリアへのミサイル攻撃への対応について協議した。
SANA(4月14日付)によると、会談で三者は、ミサイル攻撃を国際法や国連憲章の違反と非難するとともに、化学兵器攻撃疑惑に関しては、透明性のある独立調査の実施を呼びかけた。
会談後の共同記者会見では、ムアッリム外務在外居住大臣は、三カ国が米国およびその同盟諸国に対して、ミサイル攻撃に類するいかなる措置もとらないよう警告すると述べた。
そのうえで「シリア政府は、ロシアおよびイランの支援のもと、シリアからテロを浄化するための行動を継続することを決意している」と述べた。
化学兵器攻撃疑惑に関しては、シリア政府・軍が化学兵器を保有していないと改めて強調、トルコ国内での調査が中立性を欠くと非難、「一部の諸外国がシリア南部でシリア軍に対する新たな戦端を開こうとしている」と警鐘を鳴らした。
ラブロフ外務大臣は「シリアで体制打倒を再び試みても成功しないだろう…。こうした敵対行為は国連安保理決議が定める和平協議を頓挫させようとするもの」と述べた。
また、ロシア、シリア両国政府がアレッポ市での化学兵器使用に関してロシア政府、シリア政府が提出した情報について化学兵器禁止機関が検証を行っていないと不快感を露わにした。
一方、和平協議については、アスタナ・プロセス再開に向けて準備を行うと表明した。
「一部の諸外国がシリア南部で戦端を開くための準備をしている」とのムアッリム外務在外居住者大臣の発言に関しては、米国からシリアとイラクを結ぶダーイシュ(イスラーム国)の兵站路を遮断するため、米国が反体制武装集団への武器・装備を供与しているとの連絡を非公式に受けているとしつつ、「この問題をフォローしている。なぜなら、シリア領内での武力行使は「テロとの戦い」以外に利用されてはならないから」と付言、アサド政権に対する反体制武装闘争再活性化に警戒感を示した。
ザリーフ外務大臣は、ロシア、シリアとともに化学兵器拡散阻止に向けて協力を継続すると述べるとともに、独立した調査の実施の必要性を強調した。
米国のミサイル攻撃については、「一方的な振る舞い」としたうえで「こうした行為がダーイシュ、ヌスラ戦線(シャーム解放機構)を作り出した」と批判した。
AFP, April 14, 2017、AP, April 14, 2017、ARA News, April 14, 2017、Champress, April 14, 2017、al-Hayat, April 15, 2017、Iraqi News, April 14, 2017、Kull-na Shuraka’, April 14, 2017、al-Mada Press, April 14, 2017、Naharnet, April 14, 2017、NNA, April 14, 2017、Reuters, April 14, 2017、SANA, April 14, 2017、UPI, April 14, 2017などをもとに作成。
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