アサド大統領はインドのテレビ局のインタビューに応じる「米国がダーイシュを支援しなければ、数ヶ月で殲滅できる」(2017年6月3日)

アサド大統領はインドのWION(World Is One News)テレビのインタビューに応じた。

インタビューは英語で行われ、SANAが英語全文(http://sana.sy/en/?p=107447)、アラビア語全訳(http://www.sana.sy/?p=566371)、そして映像(https://youtu.be/RyzRAijWLEY)を公開した。

インタビューでのアサド大統領の主な発言は以下の通り:

SANA, June 3, 2017


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「状況は劇的に改善している。なぜなら、ダーイシュ(イスラーム国)、シャームの民のヌスラ戦線(現シャーム解放機構)、そしてそれに類するワッハーブ主義過激派などのテロ集団が撤退し、彼らの支配地域が縮小しているからだ。だから、軍事的な観点において、状況は以前よりも良くなっている。しかしこれが全体像ではない。こうした状況は軍事紛争だけに限ったものではなく、彼らが我々の地域に拡散使用としてきたイデオロギーなどさまざまなことについても言える…。また、トルコ、カタール、サウジアラビアといった地域諸国、そして米国、フランス、英国といった西欧諸国からテロ集団が得てきた支援についても言える。それは…あらゆるテロを政治的アジェンダのために利用できるという新たな時代を特徴づけるものだ。これは我々近代世界が直面している危険のなかでもっとも深刻なものだ」。

「客観的であろうとするなら、我々は常に…社会や国の欠陥、そして外的要員を極小化したいと言ってきた…。だから、我々の過ち、あるいは我々の欠陥がつまるところ(現下のシリアの危機の)原因であると常に言ってきた。しかし、我々がテロリストを連れてきたではないし、テロリストを支援してもいないし、そうしたイデオロギーも支援してはいなかった。この紛争は当初は、フランスや英国といった西側諸国の監督のもとにカタールが始めたものだ。ただ、フランスや英国と言うとき、米国の許可を得ていなかったということではない。我々はみな、真の助言者が米国だということを知っている…。だから、テロリストを支援し、シリアに流血をもたらした者を非難したいのなら、それは西側、カタール、そしてサウジアラビア…、さらにはもちろんだがトルコだ」。

「現在までのところ、何か成果をもたらすような真の政治的イニシアチブは発揮されてはいない。もちろんアスタナ(会議)は成果をなしているが、それは部分的な成果だ。シリアで最近設置された緊張緩和地帯は前向きなものだが…、これを現時点で政治的解決と呼ぶことはできない」。

「米国の問題は(ドナルド・トランプ米大統領)個人ではなく、政治システム全体によるものだ…。トランプ氏の選挙は改めて、米大統領がパフォーマーに過ぎないことを立証した。大統領は決定者ではない。彼はさまざまなロビーの一部で、国家、ないしは体制の深層部が…大統領がすべきことを指図し、実行している…。その証拠に、大統領になったトランプは…選挙期間中の約束や発言のほとんどを飲み込んでしまった」。

「(4月6日のイドリブ県ハーン・シャイフーン市での化学兵器使用疑惑事件に関して)どんな政治家でも道義的、ないしはそれ以外の理由で「いや、我々はしていない」と言うだろう。だが、私はこうしてありきたりの方法でやっていないと言っているのではない…。化学兵器を使用することに論理的な理由があるか、と問いたいのだ。もし我々にそうした理由があるとしても、我々は化学兵器は使用しない。またあなた方にそうした理由がある場合、使用したいと思うだろうか?」

「化学兵器禁止機関(OPCW)は数年前に、シリアには化学兵器はないと発表した。ジョン・ケリー米国務長官(当時)もシリアには化学兵器はないと発言した。確認せずにそのようなことを言うことはないだろう。我々は(化学兵器を)保有していない」。

「我々はインドの姿勢を尊敬している。なぜなら、何よりもまず、国際法、国連憲章、世界に道徳、人類文明の道徳、そしてインド文明に基づいているからだ」。

「サウジ家がこの王国(サウジアラビア)を作り出したとき、彼らはワッハーブ主義機関とともにこれを作り出した。だからサウジ王家とワッハーブ主義機関は一体だ。ワッハーブ主義機関、すなわちサウジアラビアの過激派あるいは過激主義者は、サウジアラビアという国家を擁護する。なぜなら、それが彼ら自身の国だからだ…。テロとサウジ王家を別物として語ることなどできない。そう率直に言わざるを得ない…。彼らはテロや過激主義、ないしはワッハーブ主義イデオロギーを世界中に輸出してきた。アジア、欧州のすべての「マドラサ」、モスクは、書籍などあらゆる手段を通じて、財政面そしてイデオロギー面でワッハーブ主義機関の支援を受けてしまっている。だから、サウジアラビアは自国への非難をかわしたなどとは言いたくない。彼らは輸出しているのだ」。

「復興について言うと…インドがシリアの復興において経済的な役割を果たすことを歓迎したい」。

「ダーイシュは強力ではなく、(その殲滅には)数ヶ月しかかからないだろう。ヌスラ戦線も合わせてだ。ダーイシュが米国の支援を受けてきたということが目下の問題なのだ。米国はダーイシュと戦っている我が軍を過去6ヶ月の間に3度にわたって攻撃してきた。米国が我が軍を攻撃したとき、ダーイシュも常に我が軍を同時に攻撃し、支配地域を獲得した。だから、(ダーイシュがいつ根絶されるかという問いへの)現実的な答えは、「ダーイシュがどの程度国際社会の支援を受けるかによる」というものだ」。

「(ハーフィズ・アサド前大統領だったら、現下の事態にどう対処したかと考えたことはあるか、との問いに対して)そのようなことはない。なぜなら、我々がこうしたテロに直面するのはこれが初めてだからだ…。1950年代にムスリム同胞団がシリアにやって来た時も、シリアでの紛争は同じように始まったが、スケールが違っていた。紛争の原理は同じだ。テロはテロ、過激派は過激派だ…。だからハーフィズ・アサド前大統領は1970年代と1980年代にこうしたテロリストと戦ったのだ。我々も今日彼らと戦わねばならない」。

AFP, June 3, 2017、AP, June 3, 2017、ARA News, June 3, 2017、Champress, June 3, 2017、al-Hayat, June 4, 2017、Kull-na Shuraka’, June 3, 2017、al-Mada Press, June 3, 2017、Naharnet, June 3, 2017、NNA, June 3, 2017、Reuters, June 3, 2017、SANA, June 3, 2017、UPI, June 3, 2017などをもとに作成。

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