2014年2月26日のシリア情勢:反体制勢力の動き

イスラーム戦線のザフラーン・アッルーシュ司令官は、フッラー・チャンネル(2月26日付)のインタビュー(http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=XnNpKvt6feo)に応じ、シリア国内の反体制武装集団どうしの戦闘は、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)とそれ以外の組織の間で行われているだけで、ダーイシュ以外の武装集団間での衝突は存在しないと断じた。

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アッルーシュ司令官は、ダーイシュがほかの組織に自らの支配を押しつけ、忠誠を誓わせようとしていると非難したうえで、その事実上の司令官が「イランのパスポートを所持したハッジー・バクルを名乗る人物(大佐)」で、アレッポ県ジャラーブルス市のアミールがシリアの共和国護衛隊の中尉だと主張した。

一方、ダーイシュによる市民や反体制武装集団への背教宣告については、シリア北部に密入国したジョン・マケイン米上院議員と面会した北の嵐旅団に代表されるすべての組織、人物に背教宣告を下したと言った例を示した。

さらに、ダーイシュの外国人戦闘員(ムハージリーン)については、ダーイシュを離反するよう呼びかけ、見ず知らずの人物に従ってはならないと警鐘を鳴らした。

最後に、アッルーシュ司令官は、ジャズィーラの討論番組「イッティジャーフ・ムアーキス」の名物司会者でシリア人のファイサル・カースィム氏をまねるかのように、「ダーイシュはなぜ虐殺を犯すのか…? 政府軍はなぜダーイシュの拠点への砲撃を停止しているのか…? ダーイシュの司令官はなぜ無名のイラク人なのか?」といった自問を繰り返した。

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イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)指導者のアブー・バクル・バグダーディー氏は声明を出し、ラッカ州(ウィラーヤト・ラッカ)の「キリスト教徒の生命、財産、教会などの安全を約束する」と発表した。

声明によると、「修道院、教会…を建設せず…、十字架を見せず…、ミサに際して拡声器を使用せず…、イスラーム国家にいかなる敵対行為を行わないこと」が条件になるという。

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イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)司令官の一人アブー・アブドゥッラー・アフガーニー氏はSNSを通じて声明を出し、戦闘停止の最後通告を出したシャームの民のヌスラ戦線指導者のアブー・ムハンマド・ジャウラーニー氏の声明に対し「死によって悟らないよう、悟るべきだ。すべてのイスラーム教徒が建設を望むイスラーム国家の夢を試すな…。ジャウラーニー師よ、あなたはイラクでのジハードを裏切るためにジハードの道を進み始めたのか?」と述べ、撤回を求めた。

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民主統一党人民防衛隊総司令部は声明を出し、西クルディスタン移行期民政局における「軍事掃討作戦」を終了し、「合法的な自衛権に則った自衛活動」に活動を限定すると発表した。

ARA News, February 26, 2014

ARA News, February 26, 2014

人民防衛隊は声明で「民主的自治機関の高官とジャズィーラ地方の防衛委員会(国防省)顧問の指示に従い、人民防衛隊(YPG)は三地域(ジャズィーラー、コバネ、アフリーン)、およびクルド人が暮らすアレッポ、ラッカ各地で、軍事掃討作戦を停止し、合法的な自衛権に則った自衛活動を行うことを遵守する」と発表した。

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シリア人権監視団は、1月3日に本格化したイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)とそれ以外の反体制武装集団と戦闘による死者数が、2月25日深夜の段階で約3,300人に達していると発表した。

同監視団によると、アレッポ県、イドリブ県、ラッカ県、ハマー県、ダイル・ザウル県、ヒムス県、ハサカ県での両者の戦闘により、ダーイシュの戦闘員924人(うち自爆は34人、処刑されたのは54人)、それ以外のジハード主義武装集団戦闘員1,380人(うち処刑されたのは128人)、民間人259人が死亡しているという。

AFP, February 26, 2014、Alhurra, February 26, 2014、AP, February 26, 2014、ARA News, February 26, 2014、Champress, February 26, 2014、al-Hayat, February 27, 2014、Iraqinews.com, February 26, 2014、Kull-na Shuraka’, February 26, 2014、Naharnet, February 26, 2014、NNA, February 26, 2014、Reuters, February 26, 2014、SANA, February 26, 2014、UPI, February 26, 2014などをもとに作成。

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